電車道 | |
磯崎 憲一郎 | |
新潮社 |
明治から大正・昭和・平成へ、変わりゆく日本の「風景」を百年にわたる群像劇で描く。
軸に据えられるのは、鉄道敷設と宅地開発。
だがそのテーマは直截的には主張されない。
文体も個性的だ。
章の区切りもなく、いつの間にか場面と時代と登場人物がシームレスに切り替わっていく。
その流れに身を任せているうちに、自然とテーマが浮かび上がってくる。
人々の生活(養蚕農家、丁稚奉公)、娯楽の在り方(リゾート地、映画)、そして震災と戦争、復興。
メインの舞台となる「高台のまち」は、成城学園がモデルなのかなとも思った(東宝の映画スタジオも近いし)が、学園創立者のプロフィールを考えるとある程度モデルにはしていたとしても、実話に基づいているわけではないのだろう。
表紙の装丁もとてもよい。
磯崎ワールドを堪能できる一冊。