元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書) | |
吉田 たかよし | |
光文社 |
Kindle版にて読了。
大学受験で文系に行ってしまった自分だが、教科としての「化学」にはそんなに拒否感を抱いたことはない。
ただし、化学の何が面白いのかはまったくピンとこないままで終わった。
化学といえば、やっぱり化学実験の印象が強く、色が変わったり泡や煙が発生したりして、これはこういう化学反応なんですよ、と化学式で説明されると、それはそれで解るのだが、なんだか現象を元に理論を説明するという帰納的なアプローチが個人的にはしっくりこなくて。
まず体系的な理論があって、その理論によって、身近なものも含めて様々な現象を説明する、という演繹的なアプローチの方が全体感が見えて安心(感心)するのだが。
この本は「宇宙、地球、人体の成り立ち」まで「世界はすべて読み解ける」と銘打っているので、自分が求めているアプローチに応えてくれるのではとの期待をもって読んでみた。
が、結局は断片的な事例を元に遠大な世界を導こうとする帰納法に終始した印象で、ちょっと期待はずれ。
まあ新書版の入門書ということを考えれば、無理もないのだが。
著者(元NHKのアナウンサーで医師、タレント活動もしてるらしい。知らんけど)によれば、「周期表とは、量子化学の結論を、数式に頼らず表すもの」とのこと。
面白い、と思えるまで深く理解するには、量子化学についてある程度見識を持たなければいかんのだろう。
少なくとも、この本の【発展コラム】で解説されている「電子の軌道を決める4つの原則」くらいは腹に落とさないと。
あと、文中にも何度か出てくる「エネルギーが安定」とか「原子核が不安定」とかいう「安定」という概念がよくわからん。
ただ、興味深く読んだ部分もいくつもあって、たとえばナトリウムとカリウムは、いずれも周期表上で一番左の縦列(アルカリ金属)にある元素で性質が似ている。
人体はその類似性を活かして、筋肉や神経の働きにナトリウムとカリウムを利用している。
また、同じアルカリ金属に属するセシウムをカリウムと間違って体内に取り込み内部被曝を引き起こしやすい。
…なんて話を読むと、なるほどと思わされるし、興味も惹かれる。
こうやって理屈から入ってくれると化学の面白さもわかりそうな気がするのだが、難解でない説明で理屈の全体感を教えてくれるような本がどこかに無いだろうか。