本日は八ッ場ダム住民訴訟に関連しておきた情報公開裁判の判決日だった。この間、世の中が少しでも良くなるよういろいろなことに期待して、自分なりにも頑張ってきたつもりであったが、ほぼ全て裏切られてきたので、「もう期待するのは止めよう、どーせ負けるんでしょ」と思いながら裁判の傍聴に出かけた。
定塚誠裁判長が判決文を読み上げる。
「・・・・関東地方整備局は、原告に対し、『利根川上流域の流出計算モデルについて』と題する行政文書のうち構想段階の洪水調整施設に係る情報を含む部分を開示する決定をせよ・・・」
何と判決は全面勝訴であった。思わず満員の傍聴席から拍手が起こっていた。私の手も勝手に動いて拍手していた。
この判決に関する時事通信の記事は以下のサイトから読める。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110802-00000107-jij-soci
この判決の歴史的意義に関して、若干の補足をしたい。これは単に八ッ場ダムの問題ではないのだ。
国がダムの費用対効果を過大に見積もることができるのは、洪水の想定が過大だからだ。その過大な洪水の想定を可能にしているのが、貯留関数法という物理学を無視した欠陥モデルによる洪水流量の計算である。貯留関数法による計算を国交省が独占し、その計算にかかわる情報を公開せず、したがって、国交省以外は誰も検証できないというブラックボックスがあるからだ。
このブラックボックスに守られている限り、ダムを造るためにどんなウソをついてもウソが発覚することはないという、官僚にとってまことにすばらしいシステムだったわけだ。
昨年の馬淵国交大臣時代、このブラックボックスが住民訴訟の原告や東京新聞や河野太郎議員らの活躍によってこじ開けられた。こじ開けられた途端、国交省は「計算資料が確認できない」と言い出した。ウソがバレたので、証拠隠滅を図ったというのが実態だろう。
今回、流出計算モデルの全情報の開示を裁判所が命令したということは、単に八ッ場ダム問題のみならず、全国のすべての河川計画に波及する。計算モデルの全情報が公開されれば、国交省以外の第三者の手によって、その計算が正しいか否か検証することが可能になるのである。
ここで、貯留関数法が物理学を冒涜したような欠陥計算モデルという点に関して補足。
裁判判決が出てから、参議院議員会館で「治水のあり方シフト研究会」主催の第4回セミナーがあった。メインスピーカーは嶋津暉之氏であった。嶋津氏は、貯留関数法のおかしさに関して次のように端的に語っていた。
「貯留関数法の基本式は S=KQ^p である。左辺のSは流域の雨水貯留量であり、次元は m3/秒×時間 である。右辺のKとpは定数。Qは河川の流量であるが、次元はm3/秒である。右辺と左辺の次元があっていない」
心ある物理学者がもしこのブログを見ていたら、この事実に怒ってほしい。そして声をあげてほしい。
次元が合わない物理量を等式で結びつけることは原理的に不可能である。次元が違うにも関わらず方程式が成り立つと主張すれば、高校入試でも大学入試でも×である。外国の物理学者がこの式を見たら、何かのカルトではないかと疑うだろう。だから外国では貯留関数法など見向きもされないし、誰も使わない。
日本の国交省のみが後生大事に使い続けるのである。その欠陥ゆえに洪水流量を過大算出しやすいからだ。
基本高水の再検証を行った「知の権威」のはずの日本学術会議には、貯留関数法を使わないよう国交省に勧告することを期待していた。実際、検証がスタートした当初には委員長自らが、貯留関数法を「50年前に考案された枯れた手法」と発言し、「その後学問は進歩している。最新の成果を踏まえ、アカデミアの責任を果たしたい」と威勢のよい発言をしていた。ところが検証が進むにつれトーンダウンし、最終的な結論は貯留関数法を認め、森林保水力の増加を否定し、さらに国交省のインチキ計算を追認してしまうという驚愕の結果だった・・・・。知の権威どころか「地に堕ちた権威」か。
本日の判決はささやかな勝利であるとはいえ、この国の闇は続き、果ては見えない。
定塚誠裁判長が判決文を読み上げる。
「・・・・関東地方整備局は、原告に対し、『利根川上流域の流出計算モデルについて』と題する行政文書のうち構想段階の洪水調整施設に係る情報を含む部分を開示する決定をせよ・・・」
何と判決は全面勝訴であった。思わず満員の傍聴席から拍手が起こっていた。私の手も勝手に動いて拍手していた。
この判決に関する時事通信の記事は以下のサイトから読める。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110802-00000107-jij-soci
この判決の歴史的意義に関して、若干の補足をしたい。これは単に八ッ場ダムの問題ではないのだ。
国がダムの費用対効果を過大に見積もることができるのは、洪水の想定が過大だからだ。その過大な洪水の想定を可能にしているのが、貯留関数法という物理学を無視した欠陥モデルによる洪水流量の計算である。貯留関数法による計算を国交省が独占し、その計算にかかわる情報を公開せず、したがって、国交省以外は誰も検証できないというブラックボックスがあるからだ。
このブラックボックスに守られている限り、ダムを造るためにどんなウソをついてもウソが発覚することはないという、官僚にとってまことにすばらしいシステムだったわけだ。
昨年の馬淵国交大臣時代、このブラックボックスが住民訴訟の原告や東京新聞や河野太郎議員らの活躍によってこじ開けられた。こじ開けられた途端、国交省は「計算資料が確認できない」と言い出した。ウソがバレたので、証拠隠滅を図ったというのが実態だろう。
今回、流出計算モデルの全情報の開示を裁判所が命令したということは、単に八ッ場ダム問題のみならず、全国のすべての河川計画に波及する。計算モデルの全情報が公開されれば、国交省以外の第三者の手によって、その計算が正しいか否か検証することが可能になるのである。
ここで、貯留関数法が物理学を冒涜したような欠陥計算モデルという点に関して補足。
裁判判決が出てから、参議院議員会館で「治水のあり方シフト研究会」主催の第4回セミナーがあった。メインスピーカーは嶋津暉之氏であった。嶋津氏は、貯留関数法のおかしさに関して次のように端的に語っていた。
「貯留関数法の基本式は S=KQ^p である。左辺のSは流域の雨水貯留量であり、次元は m3/秒×時間 である。右辺のKとpは定数。Qは河川の流量であるが、次元はm3/秒である。右辺と左辺の次元があっていない」
心ある物理学者がもしこのブログを見ていたら、この事実に怒ってほしい。そして声をあげてほしい。
次元が合わない物理量を等式で結びつけることは原理的に不可能である。次元が違うにも関わらず方程式が成り立つと主張すれば、高校入試でも大学入試でも×である。外国の物理学者がこの式を見たら、何かのカルトではないかと疑うだろう。だから外国では貯留関数法など見向きもされないし、誰も使わない。
日本の国交省のみが後生大事に使い続けるのである。その欠陥ゆえに洪水流量を過大算出しやすいからだ。
基本高水の再検証を行った「知の権威」のはずの日本学術会議には、貯留関数法を使わないよう国交省に勧告することを期待していた。実際、検証がスタートした当初には委員長自らが、貯留関数法を「50年前に考案された枯れた手法」と発言し、「その後学問は進歩している。最新の成果を踏まえ、アカデミアの責任を果たしたい」と威勢のよい発言をしていた。ところが検証が進むにつれトーンダウンし、最終的な結論は貯留関数法を認め、森林保水力の増加を否定し、さらに国交省のインチキ計算を追認してしまうという驚愕の結果だった・・・・。知の権威どころか「地に堕ちた権威」か。
本日の判決はささやかな勝利であるとはいえ、この国の闇は続き、果ては見えない。
定数の次元は?
(定数にも次元はあります.例えば万有引力定数)
また,Qのp乗になっています,と言うことは,
m3/秒×時間とm3/秒の比較の話ではなく,
定数Kの次元が何かを問うべきです.
しかし関数の形を表す際,物理的な意味付けなく関数を定義することは物理ではよくあります.
まずは数値が合えば良い・・・と言う立場で最小二乗法を用いるのです.
これは物理や工学をやっている人ならよくやることです.
と言うことで,おたくの書かれている上記意見については,
心ある物理学者ならば,「物理の手法を誤って解釈する人に引き合いに出されたくない」と答えます.
今回勝訴されましたが,「おかしいことを証明する」と言うバイアスのかかった
体制で検証出来るものなのでしょうか??
私は,今回の原告によって事実をゆがめられないことを切に願います.
定数Kとpは無次元の定数です。やはり左辺と右辺の次元は合いません。Kとpの定数の物理的意味を定義するのは不可能です。
貯留関数法は
S=KQ^p ……(1)
R-Q=dS/dt ……(2)
(Rは降雨量、Qは河川流量、Sは流域貯留量)
という二つの式から数値計算で河川流量を算出するモデルです。
(2)の式は貯留量を時間微分することにより左辺と右辺の次元があっていますので、(1)式はますますおかしいことになります。
>これは物理や工学をやっている人ならよくやることです.
工学者はやっても、物理学者はやらないでしょう。
>今回勝訴されましたが,「おかしいことを証明する」と言うバイアスのかかった体制で検証出来るものなのでしょうか??
計算根拠の情報を公開せず、第三者による検証を不可能にしたまま、「正確な計算ができる」と主張する人々が、バイアスを持たず、事実もゆがめていないと信じられますか?
実験や計算の前提となる情報を隠して、第三者による検証が不可能な結論を提示した論文は、学問的にはあってはならないことです。
また、その計算を根拠に数千億円も税金を使おうというのであれば、民主主義社会でやってはならないことです。
バイアスがかった原告による検証が信じられないというのであれば、ぜひあなた自信で検証計算をしてください。情報公開で材料が手に入ったら提供いたします。
計算がおかしいというのは、観測結果と一致しないからです。これはバイアスでもなんでもありません。
計算流量と実際に観測された流量が一致しないのに、国交省は観測値ではなく、計算値を上位に置くのです。
モデルに基づく理論値と観測値が乖離するのであれば、まずはモデルの方を疑うのが常識です。もちろん観測結果に誤差がある可能性もありますが、まず疑うべきはモデルの方でしょう。
あなたはその考えに不同意なのですか?