皆様、向かって右手をごらん下さいませ。ぬふふ、ななみちゃんを貼り付けてしまいました。年末限定、紅白歌合戦バージョン。日頃NHKには何の親近感もなく、いちばんお付き合いが薄いチャンネルかもしれませんが、BSキャラクターななみちゃんにだけは目尻が下がってしまう月河です。あのシッポがいいんですよね。大福食べて幸せになると桜色に染まってふっくらユラユラし、ケンカしたり叱られたりするとシュルーッと縮むシッポって。わかりやすく意味深過ぎ。
暮れのいろんな追い込みの時期に、ブログで昼ドラの話ばっかり書いてるのも勤勉をもって鳴る日本国民としてどうなんだという気がしないでもないですが、天下国家の一大事があろうがなかろうが淡々と月~金同じペースで進むのが昼ドラのいさぎよさだという話を先日書いたばかりなので、ここは意地でも同じペースで。
01年10月期の『レッド』、天下国家と言えばこんな天下国家の一大事もそうはない9・11NYテロ事件の後遺症で、個人的にTV全般に嫌気が差していた時期でもあって、このドラマも最初は存在自体知らなかったのですが、翻訳ロマンスシリーズの中でもハードで過激と噂のミラブックス原作ということと、朝ドラでヒロインの女友達役だった遊井亮子さん、バレリーナばりのすらっとしたスタイルだけは印象的だったけど、あの、地味と言うか薄幸を絵に描いたような顔立ちで主役できるのか?成立するのか?という非常に失礼な角度からの興味本位で、二週めぐらいから覗いてみました。
ほとんど“(ドラマの人物とは言え)人の不幸をどれだけ娯楽として観賞できるか”という感性の図太さ実験みたいな拵えではありました。生まれつき髪が赤いことに起因するいじめ、父は酒乱で暴力、母は家出して行方不明、兄が悪友たちを手引きしてのレイプを経て、ヒロインは心の傷とファッションデザイナーへの夢を抱いて上京。同じデザイナー志望の青年と出会って惹かれ合うが、やがて有名ブランドの御曹司からも好意を持たれる。この二人の男性が、実は大御所デザイナーである同じ父を持つ腹違い兄弟…。
いじめ、貧乏、レイプ、華やかな職業、二人の男に板挟み、セレブな父と反抗する息子の葛藤、異母兄弟(姉妹)間の確執と、ここまでですでに昼ドラの定石てんこ盛り。続いてモデルや大物女優とデザイナー志望男を挟んでの軽い三角関係あり、御曹司と結婚後は夫のマザコン女性恐怖症判明で夜の生活無し→過食症、夫ホモに目覚め今度は男との三角関係…など、ぜんぶ定石中の定石。
懸念していたヒロインのヴィジュアル地味さは、挟む男二人が関口知宏さん、村井克行さんと非常に地味座標でバランスが取れていたためほとんど気になりませんでした。その代わりと言ってはなんですが、二人の男の父である大御所デザイナー役・寺田農さん、その元愛人役・朝加真由美さん、ヒロインの酒乱父役・佐藤仁哉さん、終盤に再会する母役・金沢碧さんなど“親世代”がなかなかの濃さで、ヒロインチームの華のなさを十分埋め合わせてお釣りを出してくれました(地味組の中でもホモに目覚める御曹司に扮した村井さんは、1年あまり後『仮面ライダー555(ファイズ)』で悪の大企業の若き総帥を堂々と演じ、潜在的には熱く濃い芸風の人だったことがわかります)。
この作品での最大の儲けものは、時代劇のイメージの強い三浦姉妹の妹・三浦リカさんが演じた、大御所デザイナーの邸宅に同居して主婦役をつとめる御曹司の叔母。ファッション業界が一方の舞台となる話に、一貫して和服で登場というだけでかなりの儲け役ですが、“伯母”でなく“叔母”との設定からすると寺田農さんの妹ということになるはずなのに、セリフは寺田さんにも、甥に当たる村井さんにもかなりつけつけものを言う役で、ヒロインが邸宅に転がり込んできたときには「どこの馬の骨ともわからない女を家に入れるなんて」「あの赤い髪、すぐに元に戻させなさい。…生まれつき?気味の悪いこと」反対を押し切って御曹司がヒロインと結婚すると「嫁になるには素姓がはっきりしていないと」「後継ぎを産むのが嫁の務め」などと、明らかな“意地悪姑”ポジションだったのが、ある日御曹司がヒロインに「叔母さんはこれに目がないんだよ」とアドバイスして某和菓子店の羊羹を買い帰らせると、ななみちゃんの大福ではありませんが「あらぁワタシの大好物を」と手放しで喜び、そこからじんわり態度が軟化。以降は、キツイことは言いつつもヒロインの立場も汲んで兄や甥に苦言を呈し、ときには家庭を守る主婦の先輩として助言らしきものも与え、妻に自殺されてやもめとなった兄に、独身のまま尽くしてきた女の淋しさもうっすらにじませたりなどもする、気がつけばこのドラマ中で最も奥行きのある役になっていました。“伯母”でなく“叔母”設定にしたのは、あえて大御所然と見せたかったからか白髪混じりで演じた寺田さんに比べ、三浦リカさんの容姿がどう見ても若々しくみずみずしく“姉”には無理があったからでしょう。
姑の嫁いじめ、小姑のイビリなどあまりにも定石過ぎて、ともすれば「あぁまた例によって」と流しがちですが、『レッド』での三浦さんのおかげで、「“擬似姑”ポジションの女性役はどう化けるか注目」という自分なりの羅針盤を手に入れることができました。
この羅針盤が今年、『偽りの花園』での鮎ゆうきさんに翻弄される歓びを味わわせてもくれ、やがて『美しい罠』での剣幸さんという大輪の洋花を探し当て、さらには『紅の紋章』での立原麻衣さんの淋しき“徒(あだ)花”にも突き当たっているわけです。