調剤薬局も兼ねているドラッグストアの店内有線で、噂の森山直太朗さん『生きてることが辛いなら』が、それこそ何事もなかったようにフルコーラス流れていましたよ。
別に、どうってことない曲のように思いましたけど。問題になった ♪ いっそ小さく死ねばいい のくだりにしても、どっちかというと単に7・5・5・5の音韻に合わせただけのような気もする。あれで自殺を助長するなんてのは考え過ぎで、しかも考え過ぎた結果大ハズレ。自殺傾向の人というのは、道端で「こんにちは」と微笑みかけられただけでも、花が咲いただけでも散っただけでも自殺の誘因になるものです。
森山さんの曲は、あまり数知らないけどFMで小耳に挟むたびに「何もそんなに殊更“重く”作らんでも」という気がするんですよね。軽佻浮薄なこと、くだらないことバカげたことならば、逆にずっしりねっちり、脳味噌が血を噴く勢いでとことん隅々までまじめに作らなければなりませんが、人生や生命の意味に触れるようなシリアスな、深刻なテーマほど、いっそふざけて、チャラチャラ洒落のめして表現すべきです。
森山さんの“ずっしり朗々”と響く声質のせいもあるかもしれませんね。ミスターチルドレンの曲なんかは、歌詞だけ起こして通読すると眉間にシワが立ってきかねない哲学的な内容だったりもするんですが、桜井和寿さんのひしゃげたような、潰して叩いてねじったような歌い方のおかげで「なーんかうねってシャウトしてうねって終了」で、歌詞に深入りしませんもんね。「~もんね」って強要しちゃいけないな。ミスチルを知ったのはたかが95年『奇跡の地球(ほし)』からの月河の所感ですから。
月河はやはり、意味あるんだかないんだかさっぱりわからないんだけど、口ずさんでいるとその都度それなりの気分になる、桑田佳祐さんのような詞曲のほうが好きですね。実在のディスコやクラブの店名ぶち込んで音韻数整えた挙句♪ それ行けニッポンのミナサマ~なんてふざけ倒す(『愛と欲望の日々』)、平成の“ええじゃないか踊り”みたいな、人間の儚さや社会なるものの虚無を託すならば、これくらいバカっぽさに徹してこそでしょう。
久しぶりに『爆笑オンエアバトル』(9月4日24:40~)行きましょうか。北京五輪やらの休止で、危うく番組の存在すら忘れるところでした。
前回のメールネタで、おもしろくなくはないけどギスギスした雰囲気のコンビだなぁと思ったどきどきキャンプが驚きの505kbでこの日の1位。“無名のミュージシャンと基準がわからんミーハー店員”って設定、いかにも認知度低い若手芸人が考えつきそうなネタだけどなかなかよかったですよ。もうひとひねりしてシンプルに書き下せばオー・ヘンリー流の滑稽ペーソスな短編小説にもなりそう。「発売記念にドリンクサービスでーす」など、演じ方がウニャウニャーッと雑なところが散見されるのが惜しかった。太めのインディーズロッカー役・岸がチョコレートパフェ注文しそびれてひそかに悔しがるアクションがキュートでしたね。
それにしても、意味不なファミレス店員・佐藤が「よく来るミュージシャン」として挙げるのがGLAYのTERUとL’arcのhydeって、10年ぐらい前で時間止まってませんか。“コント内で引き合いに出して皆に通じるメジャーなアーティスト”が、この10年ぐらい出てないってことなのかな。『オンバト』オーディエンスも知らないうちに結構、加齢しているということでもあるか。
普通のコントにしたハイキングウォーキングが429kbとだいぶ離された2位。冒頭コメントで松田が「今日(の挑戦者)はキャラ濃い人たちが多いので負けないように」とマジだったように、正月のオンバトSP『正月か!』で“ネタ覚えない、練習しない、現場で噛む、飛ばす、こんなポンコツいない”と嘆かれていたQちゃんも珍しく今日はしっかりコントしていて、もう20~30kb入ってもよかったように思いました。松田のほうが噛んでいたので、打ち上げでQちゃんに烏龍ハイぐらい奢るべきだね。「待てよ松田!」の止め方が足取り→肩ぶつけ→回して社交ダンス風→素通り見失いとだんだんアホらしく、あり得なくなっていく流れが良かった。
同じようにボケのキャラを薄めてオーソドックスなコント漫才にしたエンジョイワ→クスは4位389kbとオンエア圏平均としてもギリギリ。オチと都合2回出た「ミミズ臭い」といい銀杏拾って「臭っせー」×2といい、なぜこんなに“生理的不快感”押しにこだわるのかよくわからない。ツカみになるはずだった「お化けとお化けみたいになってる」→「DJときどき伊東四朗やるから」が完スベりだったわりには後半ボケを絶やさずよく持ち上げた。
この回いちばん期待していたノンスモーキンは3位425kbとまあまあでしたが、真直堅物と書いて“まじめだくにお”と読ませるツカみからちょっと浮揚力が足りなかったし、菊池がにらめっこの唄を歌いだした時点で“ジャンケン大王”路線行くな、と思ったらきれいに予想通り。ここまで来たら、♪ 隣近所のおっちゃんも~それアップする~の後に、♪ それっをあのコが見ていたら~ を付けたほうが皆喜んだのにね。中尾「園児の顔、誰ひとり笑ってないじゃないですか」で菊地「じゃ先生の負けですね、にらめっこですから」でオチになるかと思ったら、もう一フレーズ行ってから「じゃCO2削減について話し合いましょう」でオチということは、若干尺不足だったか。それにしても菊池は、どうでもいい節回しつけて歌うとめちゃくちゃうまいね。
同点4位389kbで3度めの正直初オンエアなったやさしい雨は、1位どきどきキャンプと同じ、1方向押しのコントでしたが、自分は不潔なくせに潔癖症の男が、ずぼらな友人の動いた後を神経質に掃除していく、とストーリーの流れも一本で展開がなさ過ぎた。友人が実は一箇所だけこだわる清潔ポイントがあったとか、潔癖男が途中で逆ギレして自分が汚し始めるとか、ターニングポイントがあったほうが良かった。
掃除に血眼で友人の話全然聞いてないのに「きったねーな、ってことですよね」」「煙てーんだよ、ってことっすか」「面倒くせーな、何なんだよコレ」とポイントポイントで話が合ってしまう構成はアンジャッシュの携帯電話ネタに相通じるものがありましたが、合ったことで生まれる可笑しさに集中した作りでもない。どきどきキャンプ以上に演じ方の雑さが目立ったし、ある意味ゆさゆさアフロの松崎が、無神経友人・吉本来訪前のひとりの部屋で「どうしてこんなに髪の毛がー」と頭をかきむしる時点でオチ完了しているので、その後の流れはもっとダイナミックにしなければ飽きられます。
久しぶりに見て改めて痛感したのは、やはりいまのお笑い界全般の“笑い取りのハードル”低下が如実にオンバトにも出てきているなということ。ボケがきちっとボケ切らず、ツッコミがきちっとツッコミ切れてない、ゴチャゴチャグチュグチュ言っても、キャラや雰囲気があればなんとなくみんな笑ってしまう。特にTV番組の場合、音響やPAハードの性能向上が逆に若手の演じ能力を低く抑えてしまっているのかもしれない。先輩ベテラン芸人からのダメ出しみたいになりますが、「もっと腹から声出して行かなあかんで」。