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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

いまさら笑うな

2011-04-09 20:48:03 | 昼ドラマ

立ち上がり一週終わった『おひさま』、太陽の陽子(八木優希さん)の物語にしては親友ユキちゃん(荒川ちかさん)が奉公に出されてしまったり、最愛のお母さん(原田知世さん)が持病の心臓で亡くなってしまったりと涙の別れの話ばかりでしたが、現代に戻って若尾文子さんが「“太陽”もだいぶくたびれて、もう“夕方”ぐらいかしらねぇ」なんてうまいこと言ってくれると、物語のテンションは下がるんだけど、視聴感としてはホッとしますね。青春に戦争が挟まるヒロインだけれど、無事サバイバルして現代も安曇野にとどまり、現代の主婦斉藤由貴さんに「ステキです」と言われるような店を持って、当面ご家族関係なんかはまだ語られないものの、とりあえず自足して暮らしていると、冒頭からわかっている。安心安心。

今週は個人的には涙の別れより、陽子ちゃんが東京から越してきて以来目がハートマーク釘づけのタケオくん(勝隆一さん)に釘づけの一週間でした。何とかしてこっちを向いてほしい、声のひとつもかけたい気満々、5年生になってからはめでたく席も隣になってチャンスもありありなんだけど、一度も気づいてもらえない。しかも気づいてもらえないというそのこと自体、ドラマ上もまるっとスルーされているという。

今日(9日)なんか、お母さんの葬列で淋しそうだった陽子ちゃんに「元気出しなっ、これ、オラの宝物、なっ元気出しなっ」と自作の竹トンボを手に一生懸命ひとりリハーサルしながら近づいてきたのに、陽子ちゃんはすでにお父さん(寺脇康文さん)の似合わない寒いダジャレで爆笑中。せめてお兄ちゃんのどちらかでも、ご両親のどちらかでも「なんだタケオのヤツ」「陽子ちゃんに話しかけたいのか?」と見とがめてツッコみのひとつも入れてあげればまだ救われるのにね。

そうこうするうちにドラマ時制も昭和13年秋に進み、5年半の間に陽子ちゃんが井上真央さんになったのと歩調を合わせて、タケオくんも、特に眉のあたりがお父さん役・村松利史さんそっくりだった勝隆一さんから、お母さん役・角替和枝さんのほうに、当たり前にそっくりな柄本時生さんに成長。“タケオ”と役名がカタカナなのが、また大正生まれの農家のせがれっぽくてリアルなんですよね。年代が年代だけに兵隊にとられてしまいそうですが、ひと言ぐらい真情の言える場面があるといいな。柄本明さんファミリーからは『ゲゲゲの女房』のスガちゃん柄本佑さんに続く参戦。お兄さんは「夕顔畑に風が吹く」、今度は舞台が信州なので「蕎麦畑に風が吹く」ですね。

若尾さん陽子の述懐「“戦前”ねえ…私はあんまりその呼び方は好きじゃないの、私たちは“戦前”と思って生きてたわけじゃないから」にはまったく同感です。故・山本夏彦さんもエッセイでたびたび触れておられた。“戦前”と言う呼称も、“軍靴の音が高くなる一方の、非・民主的で不自由な暗愚の時代”という固定イメージも、所謂“戦後”しか知らない、“戦争”そのものも知らない時代の人間の、無知と傲慢が作った大きな誤りだと思います。

さて、陽子ちゃんパパのダジャレじゃないけど、『さくら心中』は無事(???)昨日8日をもって終了。劇中、1話につき2回のCMタイムが挟まることをうまく利用して話の焦点をちゃっちゃと切り替えながら、さくら(林丹丹さん)&陸雄(佐野和真さん)の頭でっかちマネごと心中ものの見事に玉砕の巻と、さくらを“寝取った”にっくき間男のはずの健(真山明大さん)とあっさりふじ川にて和解の一献、そこへリッキー“梓川賞”決定の電話に、豊香姉さん(小野真弓さん)は健の子を宿して芸者落籍(ひき)祝いと、子世代は一気のおめでたラッシュ、そして桜子(笛木優子さん)だけが独走のお涙モードで、花無き千年桜を残しこの世をあとにしました。

いやーよかった。いやホント。当初の桜子&比呂人(徳山秀典さん)純愛物語としても、桜子ひとりを見つめ続けた義兄・勝(松田賢二さん)の片思いストーリーとしても、まったくハッピーエンドとは真逆だったけれど、「ここまできたらこうでもなるよりほかしょうがないでしょう」というところへ、ラスト2話ほどでチカラワザ着地させました。さすがは腐っ………いやいやっ、お年を召されても脚本中島丈博さん。アノ伏線がココとココへ来て、これこれこうつながって、みたいな細けぇ整合性なんか、津波のように一切合財なぎ倒してゴールに持って来る潔さは余人の追従を許しません。この後はゆっくりお休みいただいて、忘れた頃の再会、いや忘れなくてもいいけど、とにかくまたお待ち申し上げております。

そしてさてさて、来週11日(月)からはこの枠新作『霧に棲む悪魔』が始まります。海外ミステリ(=ウィルキー・コリンズ『白衣の女』)翻案もの、風岡大Pに金谷祐子さん脚本、演出クレジットの一角には奥村正彦さんもしっかり加わっているとなれば、作風はある程度保証されているので、ヒロイン入山法子さん相手役姜暢雄さんらのキャスト組み合わせよりも、期待はこの枠初参戦、音楽の羽岡佳さんでしょう。

昼帯連続ドラマ、サスペンスもの、いずれも豊富なキャリアをお持ちですが、偶然にも2月にNHKの単発SPドラマ『風をあつめて』のクレジットで、“音と名前”が初めて一致した作曲家さんです。家族モノにして子育てモノ、しかも難病モノという、月河にとっては難行苦行以外の何ものでもない、むしろ積極的に“この世から抹殺したい”ジャンルのドラマだったにもかかわらず、不思議に呼吸や脈拍に沿うてくれるような、言わば“生物学的に心地よい”音楽のマジックに乗せられて、なんとなくチャンネルを据え置いてしまいました。

“この人の手になるオリジナル曲が、ドラマのあらゆる場面、心情と伴走で、3ヶ月、月~金聴ける”と思うと、放送前から心が躍る。そんな気持ちも久しぶりです。この枠は2009年『夏の秘密』以来、文芸原作ものとしては07年『金色の翼』以来の登板となる金谷さんの脚本も“中1年”で休養じゅうぶんと見ました。要注視。週5回の留守録設定、チェックに一分の気も抜けない季節の到来です。

コメント
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