こんなにおもしろくてどうするんだ『海賊戦隊ゴーカイジャー』。全国統一地方選挙前半戦、主要都市の首長さんらが続々と当落決定し国政の将来も占われつつある深夜に、朝の子供番組の録画見て大受けしているオトナってのもどうなんだ自分、という気がしないでもありませんが、だっておもしろいんだもの。おもしろいということの勢いを止めるのは誰にもできない。石原慎太郎さんにもできない(言うまでもない)。
第8話のザンギャック行動隊長スニークブラザーズ、肉付きのいいオルフェノク(@『555』)みたいのの肩にできた超特大の人面瘡の様な弟ヤンガーと、弟にムギュッてして投げてもらわないとドコにも潜入できない、軟体のエヘン虫の様な(でも齧るとカタいらしい)兄エルダー、コレって逆・『鋼の錬金術師』的な、可笑しゅうてやがてシリアスなキャラか?と思わせたのは最序盤のみ。その前にすでに①開発技官インサーンと参謀長ダマラス、ゴーカイジャーの賞金首ビラを1人ずつ「キャプテン・マーベラス」「あなどれん奴だな」「ジョー・ギブケン」「なぜ裏切ったのか」「アイム・ド=ファミーユ」「まさか海賊の一味に加わっていたとは」「ルカ・ミルフィ」「札つきの女だ」…とチェックしていって最後に「ドン・ドッゴイヤー」(←ここで荘重なBGMストップ)「コイツはまあいいだろう」「ですね」ビラをポイッ!→ハカセ「捨てないでー!」。
…ザンギャック、メカ担当にして有能な料理長かつムードメーカーでもあるハカセのポテンシャルを軽視し過ぎ。「大根の葉っぱにも利用価値はあるんだから!」と、「野菜は皮や芯に栄養があるけんな」みたいなことを向井理さん似の清水一希さんが言うと格別におもしろい。俳優さんに「ダイコン」て台詞で言わせる時点でおもしろいし、しかもその葉っぱが真グリーンときた。
続いて②マーベラス(小澤亮太さん)とジョー(山田裕貴さん)の野球ゲームのトバッチリにハカセ「遊ぶなぁーーー!」絶叫でザンギャックのレーダーにも引っかからなかったゴーカイガレオンがスニブラにめっかる③無駄筋肉(しかもウロコ)ヤンガーの兄貴潜入させ作戦(=投げるだけ)連続ハズレでどんどんやる気なしポーズになるゴーミン兵団(最後は手のひらホウキ乗せとか2人一組で指圧とかしてた)④自分の投擲ヘタクソを棚に上げ「もうミスは許されないゼ」と気取る弟に「オマエが言うなーー」とキレる兄貴、体育座りでうなずきマーチのゴーミン兵団⑤潜入したらしたで「抜っきあっし差っしあっし忍びあし~」って転がるかぶつかって弾むしか移動手段のない兄貴⑥「こちら弟、兄貴、兄貴どうしたー!?」とつんのめるヤンガーを押さえると見せて放り出すゴーミン兵団⑦「絶好のポイントを発見した!」「どこだ!」「ここだ!」「だからどこだって!」「だからここだって!」「見つけてみろ!」「ふわぁーー…ってわかるわけねえだろ!」とヨタローのかけ合い化するスニブラ⑧ゴーカイジャーがナビィ捜索に夢中なのに、冷静に沈着にクールにハードにパーフェクトに単なるひとりかくれんぼを続ける兄貴⑨回想で狭いソファーで小ぢんまりとうたた寝するハカセ(しかも抱き枕代わりナビィ、しかもヨダレ)⑩ナビィが電池で動いてる、ヨダレで錆びると思ってたらしいゴーカイジャー⑪なぜか沖縄のパイナップル売りの様なファッションになってたナビィ。
まだまだあるぞ。⑫「ゴーカイジャー、気づくのが遅かったな!」と得意満面でビヨンビヨン出てきてあっさりジョーに場外ならぬ船外ホームランされる兄貴⑬チェンジマンモードでやられると弟の投げ武器にされる兄貴⑭続いてゴーグルファイブモードでやられるとやられてる間じゅう弟に握られてる兄貴⑭巨大化してもあっさり成層圏外ホームランされて昼間っから星になってる兄貴……と、かいつまんでもほぼ2分に一回の笑いどころ乱れ打ち。
思うに『ゴーカイジャー』のおもしろさって、笑いの豊富さや挟み込みのタイミングの良さもあるけどそれよりも何よりも“ゴーカイジャーが圧倒的に強い!”というベーシックががっちり堅固だということにある。敵と戦うこと、勝つこと、戦って勝ってさらに強くなること、すべてにまったく迷いがない。勝つことがお宝ゲットという快感・欲求充足に直結することにもまったく躊躇しないし、宇宙帝国への反逆はその結果というか「邪魔されるなら撃退するだけ」という手続きに過ぎず、“通常型”のスーパー戦隊の最大目的だった、宇宙の平和や正義、人命を守るといったたぐいにも、否定や軽蔑はしないが金科玉条と崇め奉ることもしない。しないというそのことにも迷いがなければ、チームで動く、チームで危険を乗り越え、いい結果が出ればチームで喜ぶという姿勢もまったく揺るぎがない。
今話のようにハカセが他メンバーのマイペースぶりに業を煮やしたり、他メンバーの悲しい過去や経験を慮ったメンバーが、(合流して浅いため)まだ知らない別のメンバーにさりげなく伝えたりというさざ波も立つは立つのですが、それをも含めて「お宝探しは楽しいね」「派手に行こうぜ」という気分、欲求を共有している。
頭でっかち、眉間にシワが寄るような重たい思想、使命感、抽象的な信念概念に拘泥するところがないから、とにかくさわやか。名前の通りの豪快そのもの。
ゴーカイジャー側がこんなふうにワンサイドで磐石だから、逆にザンギャックのあれこれジタバタ、悪の組織なりの創意工夫や強化ワクワク、期待はずれカッカ立腹、小癪なヤツらめ今度こそ!に安心して指さしてガハハと興じることができるのです。
まだ8話終了したばかりながら、エピソードごとの出来不出来が限りなく少なく、毎話前のめりで、確実に面白がらせてくれた戦隊って、いままでも何作もあったけれど、『ゴーカイジャー』には、ほとんど別次元と言っていい磐石さを感じます。
放送開始間もなくにメガ天災に襲われて、経済的社会システム的にも日本全体が国難という“負の節目”な年に当たってしまいましたが、この番組はそれごと撥ね返せる、とてつもなく大きな“正”のパワーを持っている。
楽しむこと、夢をかなえることに真っ直ぐ忠実。そのための戦いなら買って出る。挑んで勝つ。勝って勇気を鍛え、誇りを磨く。すべてがツラくない、苦しくない、「気持ちいい!」に直球でつながって行く。日曜の朝、親子で観て心躍らせ合うのに、こんなにふさわしい番組が未だかつてあったでしょうか。無かったとは言わないけれど。今年は特にある。
この気持ちよさの源泉、“レジェンド戦隊”という形で過去の34スーパー戦隊を物語の中に有形無形に取り込み「それぞれに魂入れて作ったシリーズ、ぜんぶフィーチャーしているんだから、面白くならないわけがない!」という製作スタッフ側の、それこそ磐石の自信からきているのだと思います。自分たちの作ってきたもの、いま作っているものに誇りと自信を持っている。当たり前のことですが、そういうTV番組が少ない時代だから、いや増しにワンサイドで『ゴーカイジャー』がおもしろく感じられるのかもしれません。