48年ぶりに放送時間帯が変わって、15分繰り上げ8:00スタートになったNHK朝ドラ『ゲゲゲの女房』。結構、朝のこの15分って大きいですね。とりあえず29日、起きたときから第1話は見てみるつもりでいましたが、片手間視聴にせよ8:00からTVに注意を向けられる態勢になろうと思うと、かなり忙しいです。
ヒロイン・布美枝の7歳時代を演じる菊地和澄さんの何ともいえない、ふんわか加減がいいですね。古き良きアナログ日本の匂いのある少女。1話冒頭で、成人して水木しげるさん(向井理さん)とのお見合いを迎えた布美枝が松下奈緒さんで、“背が(女性としては)高いのを(自分より親が)気にしている”という描写とともに、美人なのに着物おめかしが板につかず物慣れない感じが1シーンでもよく出ていたので、なおさら和澄ちゃんの持ち味とうまくつながりました。
バカでも鈍感でもない、むしろ繊細で思いやりもあり勘もいいのだけれど、どうも周囲のにぎやかな流れと、自前の心模様が一致せず浮き上がってしまい、結果的に「引っ込み思案」「ハキハキせん子」「忙しいときに限って、もしょもしょ言い出す」と思われてしまうタイプ、よくいますよね。
でも、商売で忙しい両親に代わって、昔話が得意のかしこい登志お祖母ちゃん(野際陽子さん)、5里離れた隣町の輝子叔母ちゃん(有森也実さん)が、そんな布美枝ちゃんの個性をよくわかって受け入れてくれているので、ドラマの中がギスギスせず底が明るい。
次から次へと商売替えするもののなかなか成功しない、商才はなさげなお父さん(大杉漣さん)が卓袱台で読む新聞にはヨーロッパでの第二次大戦勃発が報じられ、「このご時勢(商売も)ひとつじゃやっていけない、いろいろ手を広げな」との言い訳に、お母さん(古手川祐子さん)は逆らいませんがあらかた呆れ気味。人はいいがせっかちで少々タンパラこきのお父さんを、地に足つけてシメるのはお祖母ちゃん。
お姉さんたち、兄弟たちも布美枝に無関心でも、辛く当たっているわけでもないのですが、布美枝がとにかく独特のペースなので、気がつくと「アレ?そういえば姿を見てない」となる一家のムードなど、いろんな情報がさりげなく詰まって語られている。この時代はきょうだいの数も多かったし、自家営業で商売も家事もひとつ屋根でてんてこ舞いの毎日ならこんなものだったでしょう。
野際さんの、さすがは元・NHKアナな語り口、ナレーションには品があるし、アバンで右下の妖怪大行進が、“連続テレビ小説”のロゴに変わる演出も気がきいている。OPにも水木漫画のキャラが続々顔を出すので、とりあえず鬼太郎シリーズに親しんだ世代はもれなく見るでしょうね。前作『ウェルかめ』のかめっ太くんもバンクーバー五輪のハイライトスタジオに応援登場など、健闘でしたが、ねずみ男や目玉オヤジに参戦されちゃ、キャラとしての歴史が段違いだけに、ちょっと反則に近いですな。
一昨年春季の『瞳』途中からなんとなく視聴復帰したNHK朝ドラ、ここのところ現代ものが続いていましたが、今作は昭和15年スタート。戦前から始まり、戦争を挟んで戦後に至る、この辺りの日本がいちばん朝ドラには向いていますね。どん底に落ち込んでも、その後上昇に転じるのが、いま視点“神の目”でわかっているから、ヒロインが少々苦労して暗くなっても安心して応援できる。
それに、どうも“現代”の日本で青春する若い女性の生活感覚や恋愛・結婚観、お仕事事情などを、特に原作なしオリジナルで活き活き描き、説得力を持たせるのは、受信料でお給料もらってるNHKスタッフにはもう無理なんじゃないかなという気がするのです。『瞳』のヒップホップも、『だんだん』の邦楽ヒットチャートやアマチュアボクシング界も、『ウェルかめ』のローカルミニコミ誌、旅館経営も、「当該業界の実態や、実際その世界を志して日々精進している若者たちの感覚を全然知らないで作ってるな」と思える場面や、展開や、台詞が続々出てきましたから。
いっそ『つばさ』ぐらい突き抜けてナンセンス風味のコメディ舞台劇みたいにしたほうが観やすかったのは皮肉。それでも近年の朝ドラにつきまとう“親世代が、ドラマ開始前時制で出来せしめた苦境で、ヒロイン世代が振り回されたり悩んだり”のしんどさからは逃れられませんでしたね。
『ゲゲゲ~』は放送時間を改革しましたが、中身は“戦争体験世代女性の夫婦善哉”という原点回帰。内容も実績も好結果が出てほしいですね。
それにしても、略称がいきなり「ゲゲゲ」じゃどんなもんかな。濁音の3乗って、結構発音にエネルギーが要りますよ。「今日のゲゲゲ見た?」「ゲゲゲどうなった?」とか、会話で言いにくいじゃないですか。
さりとて、1音省略して「ゲゲ」にすると、スマートブレイン社長(@仮面ライダー555)じゃないけど「下の下」を連想してイメージがよろしくない。
あれだな、“インターネットで検索する”ことを、Googleにちなんで「ぐぐる」と言うように、“『ゲゲゲの女房』を見る”ことを「ゲゲる」と言うのが流行語になったら、勝ちだな(何に)。
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