『爆笑オンエアバトル』第11回チャンピオン大会ファイナル(3月19日)、遅くなりましたが1時間半、ひとネタずつが長い番組だし、1~2組ごとの細切れでなく、演順にそってぶっ通しで流れを見たいと思い、再生視聴の時間を作るのに手間取ってしまいました。
一応、こうなったらいいなという希望的予想は立てはしたものの、それでも予想をきれいに裏切る、伏兵的な組の大駆けなんかもひそかに期待していたんですが、結果は見事にトータルテンボス2連覇。1,034kbは圧勝と言っていいでしょう。
いやね、滑り出しはまずまずだったものの、前半「箪笥の引き出しをバンと閉めていただきましてウンヌン」のくだりでは、正直、連覇はないなと思った場面もありました。
しかし、もう、何と言うか“オンバト汁(じる)”の滲み込み方の差でしょうね。貫禄とさえ映りました。「思い至りませんでした」「至ろうぜ」のリフレインの配分→最後に「イタリアンだけに」に持って行く流れの作り方、合い間合い間に藤田の髪型いじり「ブロッコリー」「スキマスイッチ」を挟む、それこそスキのなさ加減、5分半余の持ち時間の使い方が実に手練れなんですね。
この組、チカラの入ったネタになるほど、大オチにつながる伏線を長く引っ張り過ぎて作為っぽくなり鼻につく、所謂アタマで考え過ぎ“策におぼれる”傾向があって、それが開花を遅らせていた気がするのですが、今回はテンポがまったくよどまなかったため、それすらいいほうに出た。大オチで“ネタの前のほうで言っていたこと”を思い出させて、つなげて笑わせるというのは、机上でネタ打ちしていると簡単に思え、キレイにまとまりそうに思いがちだけれど、いざナマ現場ではなかなか笑ってもらえないものです。2年前のM-1でも使ってラサール石井さんを「二度見ても笑えた」と唸らせた「ここらで漫才のほうも“チェックアウト”しようか」と同じくらい、今回決まっていたと思う。
民放の短ネタ番組乱立、“一発ギャグ”焼き畑消費の時代を経て、5分をもたせるネタで競う『オンバト』に、最もふさわしいチャンピオンと言っても過言ではない。とりわけ敗者コメントと勝者コメントの間で、「あなたたちです!」ポジションの大村と藤田がアイコンタクトするカットが良かったですね。“2人の関係性”だけでも笑いの下地が形成できる、タカアンドトシ級の円熟味のあるコンビによくぞ成長した。
新チャンプ誕生ならば最右翼かと期待した流れ星が734kb7位と不振だったのが残念。この組は勘違いされやすいのですが、ちゅうえいの顔芸やゲームキャラ芸、コミックオタク芸が芯なのではなく、どこまでも瀧上のツッコミ次第で笑いの量も質も決まっていくのに、今回、瀧上をあまり活かさないネタにしてしまったのが直接の敗因でしょう。まぁ、身もフタもなく言ってしまえば、トタテンにあれだけ演られてしまうと、他組が引っくり返すのはほぼ不可能だったとは思いますが。
期待したもう一組、パンクブーブーは806kb4位と、惜敗圏に踏み止まりました。“弟子入り志願”ネタの中でも“陶芸家”と絞ったなら、轆轤回しとか絵付けとか、窯を開けて失敗作を叩き割るなどの小ネタがいっぱい出てくるのかと思ったら、剣術でも柔道でも何でもよかったような筋立てで、思いのほか広がりがなかった。「さっきのタクシー代返せ」の大オチで噛んじゃったのをツッコミ黒瀬は気にしていたようですが、これが致命傷ではなかったと思う。
二度めの2位に甘んじたタイムマシーン3号は、しかし966kbとトタテンにだいぶ水をあけられてしまいましたね。その差70kb、うーん。今回は昨年とは逆に、ツッコミ山本に比べ、関があまりフィジカルの調子が良くなさそうに見えましたがどうだったんでしょう。ネタ的にはかなりチカラが入って自信もあったようだけど、“妹”を引っ張り過ぎて、好みの問題だけどなんだか粘着な、不健康なネタになってしまった。オチのキレも“ボールがお辞儀し出した”感じでもうひとつ。
これら漫才上位陣に比べると、唯一の関西からの参戦ギャロップ622kb8位は、やはりパンチ不足だったか。序盤で振った「牛乳」を大オチ寸前までちょこちょこ小出しして引っ張る、まったりすっとぼけた持ち味はとても貴重だと思うのですが、2年前のNON STYLEのような「いざ東上」の調子ぶっこいた感じがない分、上位に食い込めなかった。この芸風のままではチャンピオンはやはり難しいかもしれませんが、個人的には“名大関”“名関脇”として味を出し続けて欲しい。
実は素でいちばん笑ったのが786kb5位のハマカーン。序盤ハンマー投げにこだわっていた段階ではどうかと思ったけど、ボケ浜谷が野球を説明し始めたところから抱腹絶倒になりました。ちょうど再生視聴した日にWBCもやっていたもんだからもう大笑い。「大のオトナが18人も広場に集まって…」。浜谷のニコニコ毒舌をさらにメインにしたネタでも今後押せそうですが、ならば神田のツッコミがもっとレベルアップしていかないと。
揃って低調に終わったコント勢は、力量的に漫才勢とさほどの差はなかったと思うのですが、コントである以上、出の時点での設定がすべてを左右するので分が悪い。ななめ45°の734kb7位はその中ではまず健闘でしたね。岡安が「釣りの雑誌かぁ、オレ、電車が好きなんだよ」で会場がドッと沸いたときには結構手ごたえがありました。鉄ネタと、それ封印のネタと、両方イケることを披露したのは今後のために良かった。
フラミンゴ526kb9位は、“カツゼツの悪いロックバンドヴォーカル”で、たぶん元ネタに桑田佳祐さんのイメージがあったのだろうな。そこは共通理解としてアリなんだけど、ウーロン太がボケとしてカツゼツ悪さを披露してから、やおら竹森が“同時通訳”を披露する、笑い取りにタイムラグがあったのが、セミファイナルでのトップリードに似てもったいなかった。全体に、ロバートみたいなふざけ風味のネタで、この組の持ち味である“きっちり計算作り込み”が活きていない。オチも普通すぎてオチてないし、やはり“コント”と“喜劇”は違うということを見せつけられた結果。
アームストロング510kb10位は、フラミンゴ同様“楽屋裏”と“本番”、二段構えのネタにしたことで盛り上がりが一服してしまい、だいぶ損しましたが、「これから本番の日やります」と栗山が顔を、安本が足をのぞかせる、確信犯的なB級ユルさが今回のメンバーでは異色の味があり悪くなかったと思う。ただチャンピオンをおびやかすネタ・芸風ではないなあ。
我が家は350kb11位という結果順位がすべてを物語っていますが、申し訳ないけどネタ後の袖での谷田部の自虐トークがいちばん笑えた。確かにエグいネタではあるけど、出来としてはそんなに酷くもなかったけどね。トタテンの後という演順でも若干割引になったかな。
いつものスタイルを貫いた超新塾814kb3位は、今回初めて「長い」「飽きる」と思ってしまった。5分半余の持ち時間の使い方、常連としてはもうひとひねりないと、漫才組を撃墜するのは難しいかもしれない。
好き嫌いはあるでしょうが、やはりファイナルラウンドまで来ると、全組見応えがあるし、「なんでこんなのがオンエアされるんだろう」というがっかり感もなく充実した出来だったと思います。来期4月から月一の放送になりますが、未オンエア組による『爆笑トライアウト』との二本立てになるとのこと、キャラ的インパクトに頼らず、長い持ち時間を活かした“ネタ作り力”を問う番組として、今後も存在感を発揮して欲しいものです。
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