イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

今夜はとっても冷やシンス

2008-06-14 16:29:48 | テレビ番組

健康診断でとりあえず慌てたのは、身長体重の微縮(?)もさることながら裸眼視力。左・右の差が、昔は0.4ぐらいだったのが、ダブルスコアどころか、トリプルを通り越して、えーと、なんだ、クアドルプル・スコアになっている(惑)。

検査の前に担当看護師さんに「この機械は0.1未満だと測定できませんが裸眼で大丈夫ですか」と訊かれ、また更衣室まで戻って眼鏡とってくるのは面倒くさいし、0.1なら楽勝だろうと思って検眼機覗いてみたのですが、中盤までは本当に楽勝。ひょっとして視力よくなってる?とヌカ喜びしていたところ、突然、輪っか(=ランドルト環)の大きいのから菊の花みたいに見え出し、上下左右どこが開いてるものやらさっぱりわからなってしまいました。視力のいいほうの右目をマスキングされたからそうなったらしいのね。さっきまで楽勝で見えていたのは、悪い左目をマスクし右目だけで見ていたから。

「右左だいぶ差がありますが、眼鏡で矯正されてるんですね、じゃそう書いときます」と看護師さん。おい!矯正されてるかされてないか、眼鏡着用でもう1回検査しなくていいのか?面倒くさいのでスルーしてしまいましたが、あとで同じ健診受けた人から聞いたところでは、あらかじめ書いて当日受付に提出する問診表「車の運転する・しない」の“する”に○つけると「じゃ普段お使いの眼鏡かけてもう一度」と言われるそうです。

別の知人はそれを知っていたので最初から「しない」に○して出したところ、「車は運転されないんですか?」「お仕事は営業職では?内勤ですか?」「通勤は?地下鉄ですか?」としつこく念を押されるので、なんだかヤバいような気がして「あ、書き間違えました、運転します」と“自供”したとか。職場結婚の奥さんも彼の前日同じセンターで、同じ“要領”で健診にのぞんだところ何も言われず裸眼のみの検眼で終了したので、女性にはチェックがゆるいのではないかということです。

それにしても健康診断の話になると、何の検査がどうだったという話題のいちいちに全員「面倒だから」「面倒くさいから」とマクラコトバが付くのが可笑しいやら微笑ましいやら。それだけ深刻な不安材料がなく健勝だということで結構な話ではあります。

昨夜は高齢家族のリクエストで『古畑任三郎ファイナルvs.イチロー “フェアな殺人者”』を録画、深夜CMカット編集。深夜の作業は音声オフでやるのですが、本編後に三谷幸喜さんと演出河野圭太さんの対談インタヴューがあった模様で、これは高齢組に見せてからも保存しておこう。

06年正月番組として放送されたとき、一応最後の古畑シリーズだしと思ってVTR録画して見た記憶はありますが、あまり惹き込まれなかったし印象にも残らなかったので保存しませんでした。

99年の『vs.SMAP』でもそうでしたが、“犯人役のキャラがリアルの一部を借用、重層”という作りがどうにもいただけない。“シアトルマリナーズで大活躍中の高年俸メジャーリーガー、子供たちの憧れ”とか“婦女子に熱狂的人気の歌って踊るスーパーアイドルグループ、辣腕ベテラン女性マネつき”なんていう表面的なポジションだけ横流し的に流用して、劇中で殺人犯として成立させるために生い立ちや家族関係・過去の経緯だけ設定として描き加えるというのは、書き手は愉快かもしれませんが、フィクションとして“ずるい”と思ってしまう。

意外な俳優さんが、意外な、でも「演らせてみると似合ってるよね」「アリだよね」という役どころに扮するのが魅力のシリーズだったのに。

2シリーズから「キミ名前は?」と古畑に訊かれ続け、どう考えてもコメディリリーフ用の“人間小道具”だった向島巡査が、結婚したり離婚したり復縁したり、その都度姓が変わったり旧姓に戻ったり、昼ドラの人物みたいに笑かしてくれた挙句“暴力団員とうっかり草野球仲間に”“それを知ったトップ屋にしつこく強請られる”“そのために警官を辞し警備員に”なんてシャレにならない設定がオンされる時点で、もうこれ、問題外でしょう。悪乗りし過ぎ。おまけに“腹違いの弟が大リーガー”までオン。気弱善良キャラのスタンスを崩さないまま、ご無体な後付け設定をきちんとセリフで説明し切った小林隆さんの演技力こそ褒めてあげるべきかもしれません。

SMAPなりイチローなりにもともと濃い関心がある人なら理屈抜きにおもしろいのかな。こういう“半分パラレルワールド”みたいのがいちばん理解しにくい年代の高齢組に、視聴させる前にどう設定を説明するかがいまから鬱陶しいのですが、掛け値なし本物の“子供たちの憧れ”であるイチロー選手の、人を殺めるところが映像で映る役を引き受けた度胸と心意気、“古畑ワールドへのシンパシー”、ひいては“アメリカの豪勢な自邸で古畑のDVDBGM代わりにリピートしているという、天才の孤独”に思いを致しつつ観るなら、それもまた一興。

でも、やはり『古畑』は96年放送の第2シーズンまでが本物で、それ以降は“デキにばらつきの大きい変奏曲、パスティーシュ”に過ぎなかったと思います。書いてる人、製作してる人が興がっているだろうことは画面からばんばん放射してくるのですが、観ているほうはどんどん冷めていった。

「この俳優さんがこんな職業の、こんな設定の役どころで、こんな動機でこんな手口で、こんな人を殺しちゃうの?」というサプライズが、第2まではもれなくあった。TVドラマとしての『古畑』の魅力の過半はここにあったと言ってもいい。今泉刑事・西園寺刑事らレギュラー脇キャラを含めたやりとり・小ネタはもちろん、いったん暗転した後の古畑の謎解きすら“付け合せ”のようなものです。

3シリーズ以降は、古畑よりゲスト犯人より、付け合せ部分がやたらに濃いしつこい味になった、と言うより脚本三谷さん筆頭に、演出河野さんら製作陣のほうが“主役”になってしまった感。「田村正和さん、また古畑演って」より「三谷さん、また古畑書いて」の声のほうが巷に優勢なのもここらへんの地合いをよく物語っています。

ま、個性的な異色1話完結ドラマが“作家性”のほうに重心を移すことで形骸化して行くプロセスの、絶好のいちサンプルとしてシリーズあたまから再鑑賞するのも、これまた一興です。『相棒』96シーズンの長持ち具合、と言うか延命具合と比べてみてもいいかもしれません。

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また一緒に楽しみましょう

2008-06-12 18:33:22 | ニュース

2年半以上ぶりの健康診断。前回は会社の自社ビル大会議室に、健保組合契約の診療所から医師・看護師・検査技師チームに出張して来てもらって、同じ会社の正社員さんたちと一堂に会してでしたからなんか照れちゃいましたけど、今回は個人で予約取って受診券を持って健診センターに行くので、顔見知りと顔を合わせずにすみちょっとリラックス。

別にワルいことしてるわけじゃないんだけど、あの検査パジャマ?作務衣?みたいのに着替えた姿を、日頃同じ職場でツノ突き合わせてる人に見られるの、妙に恥ずかしいんですよね。

…ツノって。いや、和気藹々とした、温かみあふれる職場ですけど。フォローフォロー。

計測で身長が1センチ縮んでました(嘆)。前回の結果は忘れたけど、20年このかた履歴書に書き続けてきた身長だったんで軽く膝カックンされたぐらいのショック。

体重は…現場でショック受けたくないので2日ぐらい前から入浴前に自宅でチェックしといたから、余裕でメーター乗ったら、余裕過ぎて、いつぶりか思い出せない30キロ台(軽倒)。

まぁ大台割れっつってもいつも400グラム~600グラムぐらいの攻防(攻防って)なんですが、今回は小さく出ました(出ましたって)。数字が出たあと計測担当の看護師さんに「…全体的に縮んでるような気がしますけど」って言ったら、鼻で笑われました。看護師さんにしてみれば前回のデータもないので「本当に縮みましたね」とも言えないし、「これからまだ成長しますよ」とはクランケの年齢的にもっと言えないし、そりゃ笑うしかないわなぁ。

あと腹囲測られて、胸の音聴かれて、甲状腺触診されて、血圧と採血。最後に骨密度検査。触診担当は健診センター副主任のネームプレートつけたお医者さんでしたが、心強いことに女性で、しかもどう見ても月河より若いのな(落)。血圧は高からず低すぎずまったく問題ないそうですが、血液検査その他の結果は二週間後。ううむ。心拍数上昇。「アルコールは控えて」って言われませんように。

…肝臓つながりじゃありませんが(←すでに「危ないなら肝臓」と自覚)水野晴郎さん亡くなられましたね。76歳肝不全。有名人、特に文化人系のかたの訃報に接すると、“かなりご年配とは思っていたけど、まだ亡くなられるほどでは…”と思うことが最近多い。

『報道ステーション』の回顧映像で「僕ら子供の頃は戦後間もなく、芝居はやっていないし本も焼けてしまった中で、映画だけが先生だった。映画だけが輝いていて、こんなに自由で素晴らしい世界があるんだよということを教えてくれた」と語っておられましたが、やはり環境の違いかな。月河の実家の親も同世代ですが、両親ともに戦中戦後は田舎の中学生だったので、映画に接する機会は少なく、もちろんTVの時代も未だし、もっぱら少年・少女雑誌やお兄さんお姉さん下がりの文庫本が娯楽だったと聞きました。田舎では何も焼けなかった。

配給会社宣伝マン時代の水野さんが付けた邦題のあざやかさはつとに有名で、「それに比べると最近は原語タイトルをカタカナ表記しただけの、愛想もなければ想像力も刺戟しない、芸のない日本公開タイトルが多い」と嘆く人も多いのですが、、“The Longest Day ”を『史上最大の作戦』62年)、“The Thomas Crown Affair”を『華麗なる賭け』68年)といった一連のタイトリングお仕事を見ると、やはり「いい時代だった」と思わざるを得ません。阿久悠さんが作詞、沢田研二さんが歌った『カサブランカ・ダンディ』じゃありませんが、何と言うか、“クサさ”“気障さ”と言って語弊があれば、“臆面もない夢々しさ”が真正面から通用する時代だった。

昨年木村拓哉さん主演でドラマリメイクされて話題になった山崎豊子さんの小説『華麗なる一族』雑誌連載開始が70年、すでに“華麗なる○○”という修辞は揶揄とシニシズムの反語として成立し得たし、そういうものとして週刊誌読者、大衆も受け容れていたのです。小説のストーリーが佳境に入っても「ドロドロと騙し合い・狡猾比べで、全然“華麗”じゃないじゃないか、もっと夢のある話を期待したのに」との真っ正直なクレームが殺到したなんて話は聞きません。

水野さんの『金曜ロードショー』も見なくなって何年経っていたか、終了していたことも知りませんでした。月河がレンタルビデオを利用し始めたのが、たしか8788年頃。旧作の目ぼしいタイトルはほとんどレンタルで観られることがわかって、TV地上波の、CMカットが入る名作劇場はソフトとしてまったく魅力がなくなりました。

さらにはインターネット時代となってからは、解説も批評もTVを通さず自前でいくらでも収集可能になった。

最近の水野さんはご自身の、念願の監督作『シベリア超特急』シリーズの話題が採り上げられるときしか名前もお顔も見なくなっていました。TVの映画解説者”という専業職が、言わば社会的使命を終えたのだとしか言いようがありません。

月河がいま、一篇エンドマークまで観たあと、水野さんの「いやー、映画って本当にいいもんですね」の名セリフが胸中に自然に浮かぶのは、CG・特撮特機縦横無尽の、特に21世紀に入ってからの超大型大作ではなく、まさに水野さんが宣伝マンとして、TV解説者として活躍されていた6080年代頃製作公開の作品に集中しているのが不思議だし皮肉でもあります。

でも、やっぱり映画ってホンットーにいいもんなんですよね。物故された大物映画人、“映画だけが輝いていて自由だった”頃のビッグネームたちと、彼岸でたくさんお話ができますように。現在進行形で斯界で活躍中の若い監督やプロデューサー、俳優さんたちも、それだけはむしろ羨ましがるかも。「あんたの時代は良かった」。

……ご冥福をお祈りします。

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どっから出てんだ!

2008-06-10 20:58:27 | アニメ・コミック・ゲーム

2週分ぐらい再生しそびれると、これっきり脱落かな?と何度も思うんだけど、万障繰り合わせて観るとやっぱり引き込まれてしまうのが『仮面ライダーキバ』です。

物語がどっち方向へ収斂して行こうとしているかなかなか見えない分、同じスーパーヒーロータイム前の枠の『炎神戦隊ゴーオンジャー』のような、1エピ見るとすぐ次のエピが待ち遠しくなったり、特定のキャラに肩入れしてモノマネしたくなったりするわかりやすい求心力はないのですが、相変わらずステンドグラス調でカラフルなファンガイアたちにキバ強化フォーム・強化武器と、目くるめくばかりの映像美(?)で30分を飽きさせません。

8日放送の20話終盤では、イクサに倒されたレディバグファンガイアのライフエナジーと、現れるにこと欠いて地中から現われたキャッスルドランの空中戦、ドランの上にあの、イクサの“四つ足土建屋ピッチングマシーン”みたいの…パワードイクサーっての?も乗っかって、“南アジアねぶた”“洋風有翼お神輿”の対決みたいになってた。

そしてこの番組、どうしてもリピートせずにいられないのは、入れ替わり立ち代わり登場する敵役・脇役陣が、非常に昼ドラ人脈なんですな。ファンガイア化生体として、謎のレストランオーナーに『愛の迷宮』咲輝さん、詐欺スカウトマンに『牡丹と薔薇』『新・風のロンド』神保悟志さん、絶対音感を持つバイオリン職人として『レッド』『永遠の君へ』村井克行さん、このあたりは特撮俳優チームとしてもすでにベテランの域です。

先々週は、元・バイオリン生徒のアーチェリー選手として『レッド』遊井亮子さんの顔も見えました。ともにバイオリンに縁のある役柄でしたが村井克行さんとは出演回が重なりませんでした。残念。

大ちゃんことルーク・高原知秀さんは、月河が昼ドラ定点観測者となるきっかけを作ってくれた01年『女優・杏子』の、杏子さんが役に燃えてるときに通うジムのボクササイズトレーナー。03『超星神グランセイザー』のセイザータウロン・松坂直人役の頃は、最強の格闘家という設定に合わせて一回り半ぐらいビルドアップされていた印象がありますが、今回はもう一度絞って、荒くれ系悪役らしくなっておられます。ワイルドの下にどこか浮き世離れしたピュアな目も健在。昼ドラにカムバック熱望。

20話では『美しい罠』の小谷教授・窪園純一さんがまんま医師役で白衣着て、何食わぬ顔で恵(柳沢ななさん)の足触診したりしてて爆笑でした。クレジット役名“医師”ってだけ。昨年『金色の翼』の時点では“港北医大”の教授だったはずなんだけど、民間にトバされたかな。

“仮面ライダー”の世界では、“ライダー能力は本来、人類に敵対する性質を秘める”のが通奏低音的お約束。よって、ライダーベルトが敵勢力に奪われたり、ライダーが敵のコントロール下におかれ敵の目的のために戦わされたりして、“ライダーの人格が一時的に悪に変わってしまう”エピもよく出てきます。

19話・20話はこの伝統にちょっと変奏を加えて、“渡(瀬戸康史さん)に86年時制の音也(武田航平さん)が憑依する”という見せ場が。瀬戸さんの音也チック気障キザ芝居、結構うまいじゃありませんか。時制が違うので、TVシリーズでは一度も同じ場面に渡&音也が顔を並べたことがないとは言え、撮影現場一緒ですもんね。「もっと手にシナつけて」「もっと反って、エラそうに」って武田さんが瀬戸さんに“演技指導”したりもしてたのかな。

いきなり22年後の08年に来ちゃった音也人格が「いんたぁねっとってヤツで揃えた」と恵に自慢する、どデカ肩パッドの青空球児・好児みたいなブルージャケ、ダボパンツも“バブル期でセンスが止まってる人のいかにも選びそうな、流行遅れ然”としていて良かった。衣装さんグッジョブ。なんとなく小泉内閣時代の、ヒナ段写真での猪口邦子大臣を思い出しました。あの人もドレス、ヘアメイク、どっかで止まってたし。

でもやっぱりあの暑苦し気障キャラは、もったりヴォリュームなバブルパーマの似合う武田さんが演ってこそですね。憑依が解ける一瞬の、半裸オーバーラップに思わずドキッ。555のオルフェノク人間体発話を思い出します。『キバ』終了後も武田さんは、他のドラマに出演されたら月河しばらく追いかけるかもしれない。バブルジャケにバブルヘア以外の武田さん見たいもんね。

ルークに続くチェックメイト4(フォー)メンバーのクイーン=真夜として、またまた昼ドラ人脈から小沢真珠さん登場…と思ったら、ぱっちり円らな瞳と小さな顔のわりに大ぶりなお耳が似ている加賀美早紀さんでした。03『共犯者』での引きこもり女子高生役から約5年ぶりに見ましたが、当時より細おもての大人顔になって、夜の女王風クールメイク&ダーク衣装がよくお似合い。当時は“かが・みさき”かと思っていたんですが、“かがみ・さき”さんだったんですね。“安良城紅”さんや、最近音楽番組で活躍を聞かないけど“八反安未果”さんみたいだなあ。

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締まっていこう

2008-06-09 16:56:04 | アニメ・コミック・ゲーム

「よく自殺しなかったなぁ」…不謹慎ですが夕方のニュースで知ったとき最初に頭に浮かんだ感想です。8日の秋葉原殺傷事件。警官による身柄確保直後の写真では、横顔で食い込み禿げ始まったコメカミ辺りが目についたせいか、30代前半かな?とも見えた容疑者、続報によると全然若い25歳。何に挫折し何に絶望したのか知らんがいくらでも、百万回でもやり直しがきく年だろうに。無関係な人たちの命を取り返しつかなくしてしまった。

銃社会のアメリカなら、サバイバルナイフでひとりずつ突いたり、抜いてまた刺したりなんて農耕民族的な手間かけませんね。当然銃乱射。撃ちながら360°回転。警官に狙撃される前に自分で銃口をクチにくわえて脳天に向けて最後の一発。昨日の事件の場合、10数人分の血糊で滑るナイフを握り直して、自分で自分の胸を一突きで死に切る握力、気力が残ってなかったのかもしれません。

心理学的には「どうしようもない自分を法の手で裁き処刑してほしい」という無意識の“叱られ・懲罰願望”もあるのかもしれないけれど、どこかで“自分が起こした騒ぎをなるべく長く見ていたい”“最後まで渦中の登場人物、できれば主役でいたい”という愉快犯的な心理も感じます。一気に自分を“無”にするには、25歳ロリアニメおたくでもあったらしい容疑者、まだいろんな生臭い欲も願望もあった感じ。

これまた不謹慎だけど「もったいないなぁ」と思ってしまいます。かりにもっと年齢が行っていたとしても、“自滅するにしてもこれこれこんな手段で、こういう状況を出来(しゅったい)させて、こういうカタチで滅びたい”といろいろ“希望条件”がつくということは、逆にまだまだ生きる、それもできれば真っ当に生きる意欲も、無きにしもあらずだったんじゃないかと思う。当日早朝から、犯行を予告し「こういうふうにしてやるつもりだ」「いまどこどこまで来た」など途中経過まで丹念なネットへの書き込みもしていたらしい。

これだけ「俺を見てくれ」「俺を構ってくれ」「思ってることを聞いてくれ」サインを出しまくっている人間を、結局、最悪の大暴発まで誰ひとり見ないし気に留めないし構わないというのが、いまの時代本当に怖いし悲しい。

しかしなぁ。もう7人からの通りすがりの人命が失われてしまってから、後付けで容疑者の生まれ育ちとか生活状況とか、動機とか分析・想像まじえて調べ上げても「これで同じような事件は二度と起きない、防げる」には絶対に行き着かないだろうなと、あらかじめわかってしまうのが情けない話ではあります。

いまこうしている間にも、ネットで情報収集して着々と準備すすめてる“模倣犯予備軍”が全国にどれだけいることか。

被害に遭った人たちにしても、危ない時間帯に危ない場所に出入りしていたわけでもなく、日曜のお昼どき、白昼の目抜き十字街のど真ん中。買い物や外出を控えるというわけにもいかないいち市民としては、これからは出かける前にネット掲示板を隅から隅までチェック“誰かが犯行予告書き込んでる街は避ける”ってのも必修になるのかも。嫌な渡世だなぁ。

さて、容疑者が拘置取調べされているということで何度か画面に出てきた万世橋警察署。もう何十年前になるか忘れましたが、ここから神田川・山手線を挟んで“神田側”にあった交通博物館に、博物館実習でかよったことがあります。都下・近隣からの社会見学や、もうちょっと遠出の修学旅行の小学生のガキども…じゃなくて小さいお友達を捌くほうが忙しくて、どこの展示場所でどんな実習したんだか忘れちゃいましたが、いまで言うところの“鉄ちゃん・鉄子”の聖地でもありました。先年、閉館が報じられたときはぜひその前に再訪し、何を見学したんだか思い出したいと思っていたのですがかなわないまま終了。

月河にとっては、交博もさることながら、近くの甘味処『竹むら』に実習の間じゅう通い詰めた記憶のほうが鮮明だったりします。美味しかったなあ御前汁粉。粟ぜんざい。05『仮面ライダー響鬼』の後方支援基地・喫茶“たちばな”として全景が登場したときは懐かしかった。交博なき後も盛業中だといいがな。

 ……何の話だっけ?そうだ、惨たらしいとしか言い様のない事件だったということでした。こういう形で被害に遭われたかたには、“ご冥福をお祈り”なんて言葉もちょっと出ないですね。日曜の昼前「行ってくるよ」「行ってらっしゃい」と見送った人が、それきり帰らなくなってしまった。どれだけ衝撃を受けておられるかわからないご遺族やお友達など親しい方々が、非常に難しいでしょうけれど、いつか何らかの形で気持ちに整理がつくことのほうを切にお祈りしたい心境です。

 この事件がなかったらニュースのトップだったであろう北島康介選手200平泳ぎ世界新記録。とうとう“世界”まで行っちゃった。あーあ。“あーあ”つっちゃいけないか。

 なんとなくこのSPEEDO社製“レーザー・レーサー”の話題を聞くたびに、ギリシア神話の英雄ヘラクレスの最期の話を思い出すんです。数々の猛獣を仕留め宝物を奪取したヘラクレスが命を落としたのは、危険な冒険の途上ではありませんでした。

英雄色を好むの喩え通り、彼は生涯に3人の妻を娶っていますが、最後の妻はカリュドンの王女で美人の誉れ高かったデイアネイラ。彼女がヘラクレスとの間にもうけた息子を連れて川を渡るとき、渡し守の半人半馬ケンタウロスに陵辱されそうになります(←ギリシャ神話によく出てくる“下半身が馬”のこのキャラは、オスのセクシュアリティそのものの象徴を演じることが多い)。

遠くから見咎めた夫ヘラクレスが、妻に一大事と自慢の弓矢でケンタウロスを射抜きますが、倒れたケンタウロスはデイアネイラに出来心からの無謀を詫び「私の血は媚薬ですからお持ちなさい、夫君の愛がさめたと感じられたら、この血に彼の衣服を浸して着せれば愛がよみがえります」と囁いて息絶えます。その時点では疑り深くも嫉妬深くもなかったデイアネイラは、さしたる考えもなくケンタウロスの言う通りにその血を小瓶に入れ持ち帰ります。

実はこの言葉には、ケンタウロス(=男、オス)の陰湿さを象徴する策謀が秘められていました。

しばしの月日が過ぎ、英雄ヘラクレスは色好みの血を騒がせ、イカリアの若く美しい王女イオレに浮気心を起こし逢瀬に向かうように。気づいたデイアネイラはケンタウロスのいまわの言葉を思い出し、もう一度夫の心をこちらに向けさせたい一心から、彼の肌着をあの血に浸して「これをお召しくださいませ」と着せます。

ヘラクレスが身につけると、なんとその肌着は火の肌着となり、英雄の肌を生きながら焼き溶かしはじめました。英雄は熱さにのたうちながら必死に脱ぎ捨てようとしましたが、火の衣は皮膚に貼りついて剥がれず、剥がそうとすると肉も一緒に剥け落ちたと言われます。

数々の冒険を生き延びてきた英雄はすさまじい苦痛のうちに最期を悟り、かつてケンタウロスを射抜いたあの弓を、盟友で弓の名手であるピロクテテスに託し、彼の放つ矢でとどめを刺されることを望み、盟友はその通りにしてやりました。

軽いジェラシーが招いたまさかの顛末に、妻デイアネイラはみずから首をくくって夫のあとを追ったと言われます。

神話物語の語法として、オスの欲望を滾らせたケンタウロスの“血”は精液の象徴とも言われ、“肌着”は上半身でなく下半身を覆う、所謂ブリーフやフンドシを現し、“生きながら激痛とともに焼かれる”は去勢を暗示しているとの説もあります。

しかし月河がレーザー・レーサー水着の話題でこの物語を思い出したのは、性的な暗喩がらみではまったくありません。

“豪腕すぐれみずからを恃む者が、華々しく輝ける膂力のために恨みを買い、その怨念が肌にまとうものに化生して痛めつけられる”という展開のほう。

生きながら焼かれるまではまさかなくても、何かの応報が必ず待っているのではと思うのは、「I am the swimmer 泳ぐのは僕だ」と精一杯のアピールをした北島さんら選手の能力と努力ではなく、“水中を泳ぐという行為限定での人間の身体能力なんか、最新鋭科学技術力をもってすればいくらでもコントロールできる(のではないか)”という思い上がり、過信のほうです。

そのうちどこかの競合メーカーが、レザ・レ以上の記録促発力を持つ超絶スペックの水着を開発し、着ればタイムは出るけれども身体のイロんなところがギューギュームチムチ締まって締まって、ついにはゴール直後にのたうち回って脱ぐに脱げずに心停止…なんてことにならないとも限りませんよ。

月河も日本人ですから、北島さんたち日本代表には、もちろんルールの範囲内でいちばんご自身の納得行く装備を選んでもらって、納得行く結果を出してもらいたいですが、心の奥底でいちばん望んでいるのは、実は“昔ながらの素朴な水着を着た、(できれば)小国の無名新進選手が、レザ・レの有名どころ選手たちを尻目に新記録で完勝”という結末なんですよね。

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書くのは私だ

2008-06-08 00:04:34 | スポーツ

競泳・ジャパンオープンでの北島康介選手、あのTシャツちょっとカッコよかったですね。

I am the swimmer  泳ぐのは俺だ 是在我遊泳

ちょっと和訳⇔英訳のニュアンスが違うような気もするけど。“オレが噂の泳ぎ手だよ”みたいに取られませんかね英文。北京五輪を想定して中国語訳も“併列”な辺り国際大会慣れしている北島選手らしく抜かりないですが、こちらは良い訳なんだかヘタな訳なんだか、さっぱりわからない。なんとなくデカルトっぽいですな。「我思う、故に我在り」コギト エルゴ スム…だいぶ違うか。

北島さんを初めとする日本、いや全世界の水泳選手が「競っているのは水着の性能ではなく、自分らの能力と鍛錬の成果なんだよ」「いちばん自分が競技しやすい水着はどれか厳選しようと真剣になっている、この妥協を許さぬ必死な姿勢も含めて競泳選手なんだよ、そこを見てくれ」と訴えたい。並み以下の選手じゃ説得力が薄いだろうと、北島選手は栄えある金メダリストの誇りをかけてアピールしたつもりなんでしょうね。

いいじゃないですか。英⇔和の微妙な表現力のワキ甘さ、かつて“飛ぶ”前の俳優・窪塚洋介さんを思い出させる、方法論面の香ばしさも含めて、ワールドクラス・アスリートの意気地を見る思いです。かなり勝負あったらしいSPEEDOのレーザー・レーサーでも、何でも着て、なんなら何も着ないで(無理か)、とにかく獲ってくれ金メダル。上ってくれ表彰台。掲げてくれ日の丸。

北島選手と言えばすっかり周知になりましたがご実家が西日暮里のお肉屋さん。当地でも百貨店の東京名店祭りなんかではメンチカツだかコロッケだかが買えます。アテネ五輪後の物産展では長蛇の列だった記憶が。たぶん秋頃、いせ辰の江戸千代紙カレンダー来年版が出品される頃の物産展にも来ると思うので、行って今度は買って、実食といくか。北京でも金メダルだとまた長蛇かな。

しかし、北島選手のTシャツアピールよりも、笑えてかつインパクトあったのはかつてのフジヤマのトビウオ古橋広之進・水連名誉会長のコメントでしたな。

昔はみんなフンドシをして泳いでいたんだよ。水着水着って騒ぎ過ぎじゃないか。水着ぐらいでそんなに(記録が)変わるかな」(7日付け日本経済新聞朝刊より)

…うはははは。そうだよ。野郎まで膝まですっぽり水着で覆って競泳なんて、軟弱だっつうの。肉なんか食うな。日本人なら米に煮干だよ。そうは言ってないか。いっそ日本人もアメリカ人もオーストラリア人もオランダ人も、国際競泳は全員フンドシ一丁ってルールにしちゃえばいいんだ。アシックス、デサント、SPEEDO社、各社競ってフンドシ。ナイキのスラッシュ入りとか。世界を席捲するね。楽しみだ。

先日は75歳でエベレスト登頂“世界最強の後期高齢者”三浦雄一郎さんが帰国されましたね。稀にだけどご近所にも居る、風邪ひとつひいたことがない“矍鑠(かくしゃく)お爺さん”ではなく、しっかり加齢によるトラブル、体力・運動能力の衰えも経験されて、二度にわたる心臓手術を克服、リハビリから鍛え直しての最高峰征服というところがすごい。北島選手とはちょっと違った意味で、“アスリートをもって任じ、そう呼ばれる者の誇り”を感じます。

低気圧低酸素の登攀に耐えるべく重装備のカートをみずから押しての成田到着に、小学校の先生がよく言っていた「家に帰るまでが遠足だ!」の言を思い出しました。帰国するまでが世界最高峰登頂だ。

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