引退までカウントダウン中、閉店フェス中の安室奈美恵さん、大晦日のNHK紅白歌合戦出場は決まったのでしょうか。
NHK会長は是非ともと言っていたようだけれど、安室さんって、演歌系歌謡曲系の畑から出た歌手と違って「NHKさんのおかげで今日がある」的な意識は薄そうだし、安室さんのファンの皆さんも、通り一遍のいち出場者の扱いで何が何でも紅白で見たいとまでは思っているかどうか。
改めて会長みずから「出てほしい」と表明するくらい、安室さんって紅白と縁が薄いのかな?と、当方も紅白を、司会者発表だ初出場組のお披露目だの前振りニュース以外、“本編”を見なくなって久しいのでちょっと手元で調べてみたら、1995(平成7)年から2003(平成15)年まで9年連続出場して、その後は安室さん一度も出ていません。一度は常連の時期があって、それから14年間のインターバルがあるとお久しぶり感、引退興行中ということもあってスペシャル感もかなり期待されるのだろうと思います。
それにしても“アムロちゃん”、もう40歳ですか。茶髪に日サロガングロ、足くじきそうな厚底ブーツにタイトなマイクロミニのフォロアー=“アムラー”さんたちを量産していたのがもう二十年以上前です。安室さん本人が結婚や出産や離婚を経ても、忘れられるほどのブランクもなくバリ最前線に居続け、ボディや顔の輪郭もシュッとしたままで、これだけ邦楽シーンの変転が激しい中でも楽曲面でも進化し続けて過去の人感がまったくないので、もう引退を考えるようなトシかマジか?と不思議な気がします。
来年9月16日をもって引退、の報を伝えるTVで、テレビ朝日の宇賀なつみアナウンサーだったと思いますが、「物心ついてからずっと安室さんがいて、曲を聴いてきたので、安室さんが(芸能界、音楽シーンから)いなくなるとどうなるのか想像ができない」というような意味のことを言っていて、宇賀さんは1986(昭和61)年6月生まれ、安室さんがSUPER MONKEY'Sのセンターとしてデビューしたのが1992(平成4)年、グループと別名義でのソロデビューが95(平成7)年4月ですから、宇賀さんがTVを見て振り付けや歌を覚えて真似したいさかりの小学生女子になった頃からずっと、安室さんはスターダムにいたわけです。アムロちゃんがいない世界が想像できない・・と、大袈裟に言えばこんな所感を抱く宇賀さん世代も、もう若者でもギャルでもコギャルでもなく三十路に入っている。「ウチの娘がアムロちゃんアムロちゃんってもう夢中なのよ」と苦笑いしていたお母さんたち世代に至っては、五十代後半から還暦越えてるかもしれない。これだけ幅広い年代に認知されていて、引退と報じられれば「えーっ」と興味を喚起できる力のある歌手はいま、ほとんどいませんから、NHK紅白スタッフが前のめりになるのもちょっとは理解できます。このご時世、“歌”でTVの画面の前に客を引っ張ってくるのがどれだけ難しいか、いちばん身にしみているのが紅白スタッフでしょうから。
安室さんが紅白に定着していた1995~2003年の期間というと、個人的には、完全に年末の念頭から紅白の存在が消えてなくなっていた時期と一致するのですが、その間一度、あれは何年だったのかな?夕食時からレンタルの映画を見ていて、ビデオ入れ替える(まだビデオでしたよ)のにいったん止めたら、高齢家族が「氷川きよしの歌だけは聞きたいな、あのコの声はなかなかいいぞ」と言い出し、たまたま遊びに来ていた非高齢家族の知人が「私も浜ちゃん(ダウンタウン浜田雅功さん)たちの『明日があるさ』は見たい、振り付けちゃんとできてるかどうか」と同調したので(・・それで思い出しました。Re:Japanが出たんだから2001年でした)、当時はまだネット環境になかったのでNHKの、懇切丁寧に大体の歌手順放送時間が載ったウェブにアクセスなんてこともできず、新聞で曲順を調べて、「そろそろかな」「小林幸子が歌ってたら次だから」「絵ヅラ派手だからすぐわかるな」なんてやってるうちに、全然見たことのない人がポンと映って「誰このおばちゃん、知ってる?」「知らない」「歌うまいね」・・って紅白に出るようなプロの歌手だからそりゃ歌はうまいの当たり前でしょうが、居合わせた老若5人ほどの誰も顔を知らず、曲順表をもう一度見て「小柳ゆきだって」「あぁ居た居た」なんてこともありました。前々年に『あなたのキスを数えましょう』という曲が大ヒット、大ブレイクした小柳さんは2001年にはまだ19歳ですから“おばさん”呼ばわりは失礼というより「眼科行け」ですが、メイクなどがえらく大人っぽく、というか“初々しさの対極”に見えた以上に、この時点で既に“旬を過ぎた”感が強かった。
この年の紅白の安室奈美恵さんは、氷川きよしさんより歌唱順が多分後だったはずで、見てないのでどんな曲をどんな感じで歌ったのかわかりませんが、色褪せずくたびれずに何年も前線に居続けるという事はたいへんなことだな、と思います。安室さんが出ずっぱりだった間に、ものすごい勢いで脚光を浴び高評価されては、倍の勢いで退いていったアーティストは、小柳さん以外にも数えきれないでしょう。
そして、紅白歌合戦についても、「贔屓の〇〇の出るところだけ見たい」「何時何分頃だ?」と検索されて摘み食いされる時点で、昔ながらの“歌合戦”はもう成立が無理だと認めたほうがいいと思う。1970年代でも、たとえば若い頃から洋裁をやっていた月河の実家母は「いしだあゆみの衣装が楽しみ」「順番来たら教えて」と言いながらおせち料理の小分け盛りなどやっていたものですが、いしださんが出ていないときでも、誰が出ているときでもあの頃の茶の間のTVは、紅白やってる時間は紅白がたらーーーっと流れているのが当たり前で、誰も無駄だとは思っていなかった。いまの平日の朝ドラと同じ、善男善女の環境ビデオの“ハレの日”版みたいなものだったのです。
こういう緩い、ある意味“逆贅沢”なTV番組の作り方は、さすがにもう無理でしょう。できなくなったことを嘆くのではなく、そういうやり方が“社会的使命を終えた”と思っていい。誰に、どんな人に見てもらうために、どんな出演者にオファーして何を歌わせるか、何をやらせるか、細かく狭く、囲って絞って研磨して打ち出さないと、3時間も4時間も「誰が見るんだ」な番組になってしまう。安室さんであれ誰であれ、或る一人or一組のアーティストに「是非出ていただきたい」とあからさまにヘコヘコするのは、制作側の“芸のなさ知恵のなさ”を露呈して恥ずかしいからやめたほうがいいと思います。
・・・ところで、来年、宣言通り引退されたら4日後に満41歳になる安室さん、芸能活動をやめたらどんな生活を計画しているのでしょうね。普通に就職したOLなんかだと、やおらこれから婚活だ妊活だとジタバタし出してもおかしくない若さで、悠々自適です。これだけの期間前線に居て、途切れずヒット曲を出し続けていたら、もう“一生遊んで暮らせる”を20回ぐらいやれる余裕があるはず・・ってイヤらしく自分の物でもない蓄財状況に想像を膨らませてもしょうがないですが、売れた芸能人がよくやらかす、株や新規事業に手を出したり、胡散臭い投資話に乗せられたり、人の保証人になって大火傷なんて噂も聞かないですし、一方ではローティーンの頃から芸能活動一本で、普通のギャルなら学園生活や旅行や合コンざかりの年頃をずっと働き詰めだったわけですから、あとは好きな事を何してもいいし何もしなくてもいいし・・と思ったら、もう結婚も出産も離婚も経験済みなんですね。なんという濃い人生。前倒しの人生。
じゃあ、あと、やってない事といったら、国政進出ぐらいか。選挙の話、もういろんな党から来ているんだろうな。沖縄出身、子育て、バツイチシングルマザーと、美味しい記号いっぱい持ってるもんなあ。お金に困らないで自由になれるって話はアカの他人でもなんか気分がいいけど、くれぐれも自由の使い道を誤らないでね。思いっきり老婆心でした。