稲村が崎
午後の海稲村ケ崎に潮満ちてうねりも低き波の満ち引き
この海につるぎ捧げて義貞は潮よ引けよと一心の祈り
むきだしの命をまとに奔る日々祈りの剣浪遠ざかれ
勝てば生き負ければ死すの定めの世覚悟を強いて時は過ぎ行く
昔日の稲村ケ崎の伝説は童のこころ騒がせ続け
知りそめし童の頃のざわめきを引きずり生きて六十路も半ば
夕まぐれ輝き強め日輪は相模の海を染めて移ろう
陽光は我が足跡も照らしおりたどりし道の真実あばき
落日を見入る幸せ知りもせず呆けたままにたたずみ見入る
責めもせず問うこともせず淡々と西に沈んで闇の訪れ