疾く奔り
たどりきて冬の立つ日に暦買う来るひととせが我が物になる
手の上の三百六十六日を温めてまだ来ぬ月日わずかに馴れる
見えぬもの暦のうちに現れて望みの渦は生まれて消えて
疾く奔り続く齢に夢見する小雪も近し小さき春に
旅の途次かの人小松なる邑を「しをらしき」まま幻の中
那谷寺の石のきざはし登り降りかいまはせをの気配を探す
石山の石より白くなけれども浪速の風は今おもしろし
義仲の眠る隣に添い寝する一期を終えて風おさまれり
作られし伝説生きる義経は安宅の関で死せず生かされ
関に来て義経見たか漆黒の闇は安宅の海と分かたず