日本演出者協会戯曲部による【日本の戯曲研修セミナー2019】秋浜悟史ワークショップが、ここ数日、開催されている。
なかなか参加することが出来ず、一部の記録映像などを覗いていただけだが、最終日に、覗かせていただいた。一応私も戯曲部の委員ではあるので。
ファシリテーターの詩森ろばさんは、最近は映画『新聞記者』のシナリオを担当して話題の人だが、岩手で育っていて、だから近年、盛岡でのご当地的な仕事も増えている。彼女は、この企画で初めて、秋浜さんが南部弁で戯曲を書く人だと認識したのだという。意外なことだ。その貴重な出会いを大切に、誠実に、丁寧な過程を重ねた講座だったのだろうと思う。
私は、秋浜悟史作品は、『冬眠まんざい』を、七年前に演出している。
坂本長利さん、五大路子さんの出演(写真)。リーディングと言いながら、ずいぶん動いた。オリジナル音楽は、太田惠資さん。舞台監督は小川静夫さんで、もともと竹内銃一郎作品の舞台監督をされていた人だが、ずいぶん久しぶりにこの仕事をされたのだった。じつは私のご近所さんでもある。
さて、当時思ったことだが、映画『ニーチェの馬』と『冬眠まんざい』は、おそろしく共通項が多い。
吉本隆明氏の「共同幻想論」のことも思い出す。あの時代、社会の変革を考えるとき、日本の土着の共同体がどのようであったかを見直すという作業が必要だった。そういう一連の想像力が即在していた。農地改革や婦人参政権といった戦後の変革は、日本人を抜本的に変えることは、なかったのだ。
秋浜悟史さんのことは、私が上京した頃は、清水邦夫作品の演出家として、認識していた。
お目にかかるようになったのは私が関西公演をするようになって、大阪芸大で教鞭を執られていた秋浜さんが観に来てくださったからだ。なにしろ燐光群の中山マリは、秋浜さんとは「三十人会」の頃からのおつきあいがあるのだった。
日本演出者協会戯曲部は、もともと「近代劇」に限定した戯曲研究講座をしていたのだが、何年か前、「現在」に拡大するように働き掛けた。
こうして秋浜作品との「出会い直し」が実現し、このセクションがあることが貴重なことだと、あらためて、思った。若い世代も含めて、もっと多くの人たちと、先輩たちのことを共有したい。
引き続き、夜は、宮本研ワークショップが開催される。賑やかである。