Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

【日本の戯曲研修セミナー2019】秋浜悟史ワークショップ

2019-08-25 | Weblog

日本演出者協会戯曲部による【日本の戯曲研修セミナー2019】秋浜悟史ワークショップが、ここ数日、開催されている。

なかなか参加することが出来ず、一部の記録映像などを覗いていただけだが、最終日に、覗かせていただいた。一応私も戯曲部の委員ではあるので。

ファシリテーターの詩森ろばさんは、最近は映画『新聞記者』のシナリオを担当して話題の人だが、岩手で育っていて、だから近年、盛岡でのご当地的な仕事も増えている。彼女は、この企画で初めて、秋浜さんが南部弁で戯曲を書く人だと認識したのだという。意外なことだ。その貴重な出会いを大切に、誠実に、丁寧な過程を重ねた講座だったのだろうと思う。

 

私は、秋浜悟史作品は、『冬眠まんざい』を、七年前に演出している。

坂本長利さん、五大路子さんの出演(写真)。リーディングと言いながら、ずいぶん動いた。オリジナル音楽は、太田惠資さん。舞台監督は小川静夫さんで、もともと竹内銃一郎作品の舞台監督をされていた人だが、ずいぶん久しぶりにこの仕事をされたのだった。じつは私のご近所さんでもある。

 

さて、当時思ったことだが、映画『ニーチェの馬』と『冬眠まんざい』は、おそろしく共通項が多い。

吉本隆明氏の「共同幻想論」のことも思い出す。あの時代、社会の変革を考えるとき、日本の土着の共同体がどのようであったかを見直すという作業が必要だった。そういう一連の想像力が即在していた。農地改革や婦人参政権といった戦後の変革は、日本人を抜本的に変えることは、なかったのだ。

 

秋浜悟史さんのことは、私が上京した頃は、清水邦夫作品の演出家として、認識していた。

お目にかかるようになったのは私が関西公演をするようになって、大阪芸大で教鞭を執られていた秋浜さんが観に来てくださったからだ。なにしろ燐光群の中山マリは、秋浜さんとは「三十人会」の頃からのおつきあいがあるのだった。

日本演出者協会戯曲部は、もともと「近代劇」に限定した戯曲研究講座をしていたのだが、何年か前、「現在」に拡大するように働き掛けた。

こうして秋浜作品との「出会い直し」が実現し、このセクションがあることが貴重なことだと、あらためて、思った。若い世代も含めて、もっと多くの人たちと、先輩たちのことを共有したい。

 

引き続き、夜は、宮本研ワークショップが開催される。賑やかである。

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下関市の「鯨類研究室」、本年度末で閉鎖

2019-08-25 | Weblog

下関市の「鯨類研究室」が、本年度末で閉鎖されるという。

室長の石川創さんは、沖縄の小島曠太郎さん、江上幹幸さんと並んで、私をクジラ界に導いてくれる先達である。

南氷洋の調査捕鯨に14回参加し、団長まで務めた。クジラの座礁についても詳しい。いろいろなことを教わった。名護の食堂で、一緒にヒートゥー(イルカ)料理を食べたこともある。戯曲『くじらと見た夢』執筆に当たっては、石川さんの調査による克明な資料や写真を幾つも見せていただいた。劇中に登場する、フィクションと思われがちな「クジラの解体ショー」についても、石川さんの資料にお世話になった。

窪 美澄さんの小説『晴天の迷いクジラ』に登場する「クジラ博士」は、石川さんがモデルである。

山口新聞の報道によると、

下関市の公益財団法人下関海洋科学アカデミーが、クジラの学術研究や啓発を進める「鯨類研究室」を本年度末で閉鎖する方針を固めたことが分かった。唯一の室員の石川創室長(59)が定年を迎えることや市の財政難が理由。

研究室は、近代捕鯨発祥の地として「くじらの街」を掲げる市の業務委託を受け、2012年7月に同市田中町の市役所庁舎に開設した。開設当初から南極海や北西太平洋での鯨類調査で調査団長を務めたことがある石川さんが室長を務めている。

これまでに鯨の座礁・漂着の記録や船からの目視調査などから成果を報告書で公表。市民講座「鯨塾」を50回以上開いて鯨の生態や捕鯨などについて解説するなどの活動をしている。

同アカデミー理事長を兼務する三木潤一副市長は「定年の延長は市の財政的に厳しい。研究の成果をアカデミーで活用していきたい」と話した。石川室長は「残念だが判断を受け入れるしかない。3月までできるだけのことはしたい」と話した。

とのこと。

唯一の室員の石川創室長、という記事の言い方は、まあ、仕方ないが、事実である。私が訪問したのは一昨年か、もっと前だったか。クジラ研究のユートピアであり、クジラと私たちの接点を保持し、捕鯨の歴史を伝えていく、最後の砦のようにも思える場所だった。クジラそのものと、捕鯨史に関心のある方は、この地を訪ねてみることをお薦めする。

自由な立場になった暁には、いろいろな選択肢があるだろう。石川さんの今後の活躍にも、期待したい。

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