去年の今頃はパリに行っていた。
自分でも何をしに行ったのかわからない。
別に観光をしに行ったわけでもない。
まぁ、パリにいれば日本人としてはそれだけで観光になるのだろうが?
2人の人と会っただけである。
街歩きと言っても、寒くて寒くてとてもそれどころではない。
カフェのサルで暖かい飲み物を飲んで縮こまっていた。
あとは何の変哲もない安飯屋で安飯を食っただけである。
財布の中身を見ると、それだけで二週間の滞在には心もとないので、後の方は安飯屋にもいかずスーパーでパンやハムやビールやワインを買ってホテルで食った。
ホテルは2つ星の隙間風がヒューヒュー吹き込んでくる暖房の利かないホテルだった。
観光地はルーヴル美術館だけ行った。
ここも行き飽きた。
というかここは何十回通っても新しい発見があるので、これでいいという所がない。
そこでかえって飽きる。
雪に二回降り込められた。
帰りの飛行機は無事飛ぶのだろうかと心配したが、なんとか事なきを得て帰ってきた。
帰ってくると華のパリよりあばら家でも我が家が一番と言うことになる。
それでも、しばらくするとまた行きたくなる。
不思議なものだ。
ひとりにて寒烏賊炙り喰ひにけり 素閑
寒烏賊や猫もやがては十六歳 素閑
寒烏賊や無口な娘となりにけり 素閑
寒烏賊や火を男らで囲みけり 素閑
お好きでしょ寒烏賊ともに酌の手や 素閑
寒烏賊や浜の風射す漁師小屋 素閑
板張りの家並み続き寒の烏賊 素閑
寒烏賊や鈍く落ちたる北の空 素閑
寒烏賊のにほひの満ちた浜の村 素閑
棄てられて犬とたわむる寒烏賊や 素閑
寒烏賊や綿入りまとひ家の中 素閑