これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

お客様相談室

2008年05月18日 20時19分47秒 | エッセイ
 その日、私はいつものように、職場でお弁当を食べていた。
 おかずは温めるだけでOKのミートボール。今ではもう食べなくなったが、娘が保育園に通っていたときは、手抜き弁当が普通だった。
 ミートボールなのに、トマトではなくカレーソースを使っているところが珍しく、子供が好きそうな味だと思って咀嚼していたときだ。突然、ガキッという不吉な音とともに、異物の歯ごたえを感じた。ビックリして口から出してみると、ミカンの種くらいの、いびつな形をした金属片が現れた。
『万一、品質に不都合がございましたら、弊社あてに商品をお送りください』
 多分、ミートボールのパックには、こんな言葉が書かれていたはずだ。
 そういえば、子供のときも菓子から輪ゴムが出てきたことがあった。抜け目のない母が、菓子の外箱と輪ゴムをメーカーに送ると、お詫びの手紙に高級そうな菓子折りが添えられて返ってきた。
「やっぱり、言ってみるもんだねえ」
 まるで宝くじに当たったかのように、ほくそ笑む母を思い出す。たまたま輪ゴムだったからよかったものの、もし指やゴキブリだったら立ち直れそうもない。
 面倒だけど、私もこれを送ろうかな。
 そんなことを考えながらお弁当の残りを食べていると、何やら奥歯が痛む。虫歯かしらと不安になり、舌で歯をなぞってみると大きな穴が開いていた。
 さっきの異物は、虫歯の治療で詰めていた銀だったのだ!
 気づかずにクレームをつけたら、赤っ恥をかくところだった。危ない、危ない。
 それから間もなくゴム手袋を買った。3双パックと書いてあるのに、家で袋を開けたら右手用は3つあるけれども、左手用が2つしか入っていない。
 今度こそ、お客様相談室の出番だ!
 袋に印刷された電話番号を確認すると、「06-××……」と書いてある。
 うそっ、大阪!?
 さすがは大阪商人、フリーダイヤルではない。東京からの通話料はいくらかかることやら。状況を説明して、住所などを伝えるだけで、ゴム手袋より高くつきそうではないか。
どうせ、先に破れるのは右手用なんだよね……。
消耗の激しい右手用さえ3つ揃っていれば、長持ちする左手用は2つでも帳尻はあうだろう、と考えて無理やり妥協した。
 こんな気弱な対応では、「クレーマー」と呼ばれ、企業から恐れられる存在には到底なれそうもない。



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コメント (2)
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