これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

生まれ変わるとしたら

2012年01月26日 21時02分41秒 | エッセイ
 朝、職場に続く道を歩いていたら、反対側から男が現れた。きちんと整えられた髪や、板についたスーツ姿が、働き盛りのサラリーマンであることを物語っている。仕事が好調なのか、シャキッと背筋を伸ばし、こちらに向かって歩いてくる。
 しかし、彼が手にしているものは、ブリーフケースではない。犬や猫などを入れて運ぶ、ペットキャリーなのだ。

 朝っぱらから、何だってペットを??

 不可解な光景に、我が目を疑った。ペット同伴で出勤するのだろうか。いや、それはないだろう。きっと、途中にペットホテルがあって、そこに預けてから職場に行くのではないかと察した。
 キャリーの中には、犬か猫がいるようだが、狭いところに押し込められて気の毒だ。
 以前、電車の中でキャリーに入れられた子犬を見たが、おどおどして可哀想だった。電車が揺れるたびに、不安な顔で周りを見回し、神経をすり減らしている。人間の都合で、ストレスにさらされるのは真っ平だろうと同情した。
 サラリーマンとの距離が近くなった。キャリーの側面はメッシュになっているようで、中が透けて見える。私は、また不安そうな顔がのぞくのではないかと予想した。
 中にいたのは白い猫だ。結構な年齢のようで、毛並みは悪いし、非常に肥えている。太った体に、小さな頭が載っていると、まるで鏡餅だ。
 鏡餅の顔が見えた。不安のかけらは、まるでない。

 寝てるよ……。

 私は驚いた。振動が心地よいのか、どこででも寝られる猫なのかはわからないが、鏡餅は目を細めて爆睡している。気持ちよさそうな表情で、ぐうぐう眠っている。今なら、頭の上にミカンを置かれても気づかないだろう。
 猫は、1日の大半を寝て過ごすという。6時間しか睡眠時間のとれない私とは、雲泥の差だ。
 今度、生まれ変わるとしたら、猫がいい。
 鏡餅体型になっても構わないから、食っちゃ寝、食っちゃ寝して、のんびり暮らしたいものだ。
 私はキャリーを見送り、眠い目をこすりながら職場に向かった。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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