私はパン党だ。今日は、仕事帰りに明朝のパンを買いに行った。
最寄り駅には、3つのパン屋があり、どこに行くかと悩む。改札を出てすぐのところの店は、値段が高いうえ、「本日中にお召し上がり下さい」という商品が多くて困る。北口の店は、夕方になると主婦に買い占められ、ちょっとしか残っていない。売れ残りのパンで我慢するしかないのだ。
よし、今日は南口に行こう!
あそこなら品数は豊富だし、良心的な価格が魅力的だ。寒さにもめげず、私は南口のパン屋を目指して歩きはじめた。
時間は5時を回っていたが、予想通り、何種類もの商品が並んでいる。
あった、あった。
これが、私のお気に入りのパンである。
ナポリタン、ハンバーグ、タマゴの3種類が載った、よくばりなパンなのだ。ちょっと、しょっぱい気もするけれど、美味しいから許す。
そして、もうひとつ、お気に入りがある。
それは、レジのトドロキさんというオジ様だ。どう見ても、40代から50代にしか見えないし、特にイケメンでもないのだが、レジ技術で右に出る人はいない。
「いらっしゃいませ」と笑顔を見せると、次の瞬間には両手を使ってレジのキーを叩き始める。これが、タイプライターかワープロを打つくらいの勢いなのだ。ダダダダダダダダと、リズミカルに連打する。同時に、「メロンパン135円、チョコスコーン120円……」と価格を読み上げる声も、早口言葉のようなスピードだ。よくマシンガントークというが、さらに上をいって、ミシンのような話し方である。
合計金額を告げたあとは、客がお金を用意するまでに、手早く袋詰めをする。サッとビニール袋を開け、パッと商品を入れ、シュッと袋の口をたたむのだ。1個あたりの所要時間が2秒なので、サッパッシュッの繰り返しで、それぞれのパンは袋詰めされ、大袋にまとめられる。ヘタすれば、こちらが小銭を出す前に、商品を手渡す準備が整っている。凄まじい速さだ。
職人芸としかいえない手際のよさに、初めて見たときは呆然とした。トドロキ、オドロキである。
こんなに手早いパン屋さんは、あとにも先にもこの人だけだ。
まあ、あっちのほうも早いのでは困るけれど……。
商品をトレイに載せ、レジに向かう。カウンターに目をやると、お目当てのトドロキさんがせわしなく両手を動かしていた。客は多いほうだと思うが、トドロキさんの活躍で、長い列はできない。すぐに私の番が来た。
「カレーパン160円、フロマージュ120円……」
いつもながら、早送りの映像のような動きが見どころである。やはり、人は、自分にできないことができる人間を尊敬するのだ。本当にトドロキさんはスゴい。
「607円です」
合計金額を手渡し、「ありがとうございました」と言われて店を出た。
いつか、「あなたの技術は素晴らしい!」と伝えてみたい。
でも、パン屋さんだから、パンをほめられたほうがうれしいのかな?
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
最寄り駅には、3つのパン屋があり、どこに行くかと悩む。改札を出てすぐのところの店は、値段が高いうえ、「本日中にお召し上がり下さい」という商品が多くて困る。北口の店は、夕方になると主婦に買い占められ、ちょっとしか残っていない。売れ残りのパンで我慢するしかないのだ。
よし、今日は南口に行こう!
あそこなら品数は豊富だし、良心的な価格が魅力的だ。寒さにもめげず、私は南口のパン屋を目指して歩きはじめた。
時間は5時を回っていたが、予想通り、何種類もの商品が並んでいる。
あった、あった。
これが、私のお気に入りのパンである。
ナポリタン、ハンバーグ、タマゴの3種類が載った、よくばりなパンなのだ。ちょっと、しょっぱい気もするけれど、美味しいから許す。
そして、もうひとつ、お気に入りがある。
それは、レジのトドロキさんというオジ様だ。どう見ても、40代から50代にしか見えないし、特にイケメンでもないのだが、レジ技術で右に出る人はいない。
「いらっしゃいませ」と笑顔を見せると、次の瞬間には両手を使ってレジのキーを叩き始める。これが、タイプライターかワープロを打つくらいの勢いなのだ。ダダダダダダダダと、リズミカルに連打する。同時に、「メロンパン135円、チョコスコーン120円……」と価格を読み上げる声も、早口言葉のようなスピードだ。よくマシンガントークというが、さらに上をいって、ミシンのような話し方である。
合計金額を告げたあとは、客がお金を用意するまでに、手早く袋詰めをする。サッとビニール袋を開け、パッと商品を入れ、シュッと袋の口をたたむのだ。1個あたりの所要時間が2秒なので、サッパッシュッの繰り返しで、それぞれのパンは袋詰めされ、大袋にまとめられる。ヘタすれば、こちらが小銭を出す前に、商品を手渡す準備が整っている。凄まじい速さだ。
職人芸としかいえない手際のよさに、初めて見たときは呆然とした。トドロキ、オドロキである。
こんなに手早いパン屋さんは、あとにも先にもこの人だけだ。
まあ、あっちのほうも早いのでは困るけれど……。
商品をトレイに載せ、レジに向かう。カウンターに目をやると、お目当てのトドロキさんがせわしなく両手を動かしていた。客は多いほうだと思うが、トドロキさんの活躍で、長い列はできない。すぐに私の番が来た。
「カレーパン160円、フロマージュ120円……」
いつもながら、早送りの映像のような動きが見どころである。やはり、人は、自分にできないことができる人間を尊敬するのだ。本当にトドロキさんはスゴい。
「607円です」
合計金額を手渡し、「ありがとうございました」と言われて店を出た。
いつか、「あなたの技術は素晴らしい!」と伝えてみたい。
でも、パン屋さんだから、パンをほめられたほうがうれしいのかな?
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)