仕事の合い間に、お茶を飲もうとして流しに向かった。流しの前にはポットと窓があり、校庭が見える。
校庭には、3年の男子3人集まっていた。高校生にしては、やや小柄な3人である。何をしているのかと見ていたら、やおら肩車を始めた。上に乗った子は、手にモップを持っている。どうやら、遊んでいるわけではなさそうだ。そのまま、フラフラと背の高い木に近づき、モップで枝をつついていた。
モップのはるか上にはボールがある。高く上がったボールが、枝に引っかかってしまったのだろう。だが、うまい具合に挟まっており、突いた振動ではビクともしない。このままでは取れないと思ったのか、その男子は、やけくそ気味にモップを放り投げた。
ズボッ
とたんに、3人から悲鳴がもれる。
「あーあ、ダメだ」
「モップまで引っかかっちゃった」
苦しまぎれに放ったモップまで、枝がナイスキャッチしたのだ。たぶん、そうなるような気がしていた。
私は窓を開け、彼らに話しかけた。
「何してるの」
「あっ、先生。脚立借りられませんか」
「ここにはないから、用務さんにお願いしてごらん」
「はーい」
彼らは素直に移動し、5分後には脚立に上っていた。
私だったら、木に登って取りに行く。でも、今の子は、そういう発想がないようだ。子供のときに、木登り体験がないのかもしれない。へたに勧めてケガでもされたら、責任問題に発展するので、黙って見ていた。
難なく、ボールとモップは取れた。でも、3人は同じ場所に集まったままだ。
「もう終わったんじゃないの?」
「いえ、肝心のものが取れていないんです」
元々は、3人のうちの1人が、2階からジャージを落としてしまい、木のてっぺんに引っ掛ったのだという。それを取るため、ボールを投げたら落ちてこず、モップを放れば引っかかる。やることなすこと、すべて裏目に出たようだ。高さは5mくらいだろうか。脚立ではとても届かない。
これは、木に遊ばれている。おかしくて、私は笑いそうになった。
「そうだ、いいこと考えた」
それでも3人はめげない。元気に、グランドに放水するためのホースを持ってきた。
「これでジャージを濡らせば、きっと重みで落ちてきます!!」
「……まあ、勝手にしなさい」
彼らはバルブを開いて、ジャージに放水を始めたが、いつまでも見ているわけにはいかない。しばらく目を離していたら、いつの間にかいなくなっていた。作戦は成功し、無事、木からジャージを奪還したらしい。
勉強ギライの我が生徒でも、「三人寄れば文殊の知恵」となる。
あとで、水道代を請求してやろうか……。

クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
校庭には、3年の男子3人集まっていた。高校生にしては、やや小柄な3人である。何をしているのかと見ていたら、やおら肩車を始めた。上に乗った子は、手にモップを持っている。どうやら、遊んでいるわけではなさそうだ。そのまま、フラフラと背の高い木に近づき、モップで枝をつついていた。
モップのはるか上にはボールがある。高く上がったボールが、枝に引っかかってしまったのだろう。だが、うまい具合に挟まっており、突いた振動ではビクともしない。このままでは取れないと思ったのか、その男子は、やけくそ気味にモップを放り投げた。
ズボッ
とたんに、3人から悲鳴がもれる。
「あーあ、ダメだ」
「モップまで引っかかっちゃった」
苦しまぎれに放ったモップまで、枝がナイスキャッチしたのだ。たぶん、そうなるような気がしていた。
私は窓を開け、彼らに話しかけた。
「何してるの」
「あっ、先生。脚立借りられませんか」
「ここにはないから、用務さんにお願いしてごらん」
「はーい」
彼らは素直に移動し、5分後には脚立に上っていた。
私だったら、木に登って取りに行く。でも、今の子は、そういう発想がないようだ。子供のときに、木登り体験がないのかもしれない。へたに勧めてケガでもされたら、責任問題に発展するので、黙って見ていた。
難なく、ボールとモップは取れた。でも、3人は同じ場所に集まったままだ。
「もう終わったんじゃないの?」
「いえ、肝心のものが取れていないんです」
元々は、3人のうちの1人が、2階からジャージを落としてしまい、木のてっぺんに引っ掛ったのだという。それを取るため、ボールを投げたら落ちてこず、モップを放れば引っかかる。やることなすこと、すべて裏目に出たようだ。高さは5mくらいだろうか。脚立ではとても届かない。
これは、木に遊ばれている。おかしくて、私は笑いそうになった。
「そうだ、いいこと考えた」
それでも3人はめげない。元気に、グランドに放水するためのホースを持ってきた。
「これでジャージを濡らせば、きっと重みで落ちてきます!!」
「……まあ、勝手にしなさい」
彼らはバルブを開いて、ジャージに放水を始めたが、いつまでも見ているわけにはいかない。しばらく目を離していたら、いつの間にかいなくなっていた。作戦は成功し、無事、木からジャージを奪還したらしい。
勉強ギライの我が生徒でも、「三人寄れば文殊の知恵」となる。
あとで、水道代を請求してやろうか……。

クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)