先日、バレンタインデー特設会場に足を運んだ。
そこで気づいたことは、今年のチョコはパッとしないという事実であった。消費税増税の煽りなのか、単価が全体的に下がり、衝動買いしたくなるようなチョコレートがない。たとえるならば、人目を引く派手なイケメンが追い出され、記憶に残らないフツメンだけを集めた状態だ。
「うーん」
見た目で差がないなら、あとは中味。なるべく、もらう側が好きそうな味を選んでみたものの、喜んでもらえる自信がない。つき合ってみないことには、どんな人かわからないからである。
逆に、義理チョコは種類が増えた気がする。
職場の仲間には、こんなチョコレートを買ってみた。

「チョコエイド」
絆創膏型のチョコが、本物と同じように包装され、6枚入っているようだ。これなら、笑ってもらえるに違いない。
そうだ、あの子にも何か買ってあげないと。
売り場で、ある男子生徒の顔が浮かんできた。ちょっと変わった子なのか、アルバイトの給料で友達にやたらと奢ってしまうのだ。高校生なのだから、さほどゆとりはないはずなのだが。
ついこの間も、放課後の補習授業をしていたら、休憩時間になったとたん、彼が立ち上がった。
「これから自動販売機に行くけど、何か飲みたい人いる? おごっちゃうよ」
明るい問いかけに、遠慮しない子たちは、すぐに返事をする。
「ココア~」
「コーラ」
「ウーロン茶」
「オロナミンC」
男子生徒はメモに注文を書き、「あとは?」などと促している。
中には、「アタシはいらないから」と断る生徒もいるが、少数派だ。
「先生は何がいい?」
彼は私のところにまでやってきた。
「いやあ、別にいらないよ。無駄づかいしちゃダメでしょ」
「大丈夫、大丈夫。給料出たばっかだし」
「砂糖が入っている飲み物は飲まないんだよね。気持ちだけでいいよ」
「ふーん」
それで終わったと思ったのだが……。
「先生、無糖の紅茶があったから、買ってきたよ。あったかいの」
おりょりょ。
ショートサイズのペットボトルが、無造作に教卓に置かれた。
さて、どうしよう。生徒から、ものをもらうのは好ましくない。でも、頑なに断るのもどうかと思う。
「じゃあ、いただきます」
「飲んで飲んで~」
ここは好意に甘え、あとでお返しするのがいいだろう。バレンタインデーに義理チョコを用意して、「この前は紅茶をありがとうね」と渡せば、本人も喜ぶし、一番無難な気がした。
ただし、値の張るものはいけない。他の生徒から「ひいきしている」とか、特別な感情があると思われるからだ。あくまでも、飲み物のお返しにふさわしいレベルのチョコにしなくては。
お店で私が選んだのは、ロリポップチョコレートであった。

ハート形などもってのほか。ニカッと笑うチェシャ猫が、彼にピッタリに思えた。我ながら、いい買い物ができたと満足していたところだった。
だが、昨日、これを買った店に行ったら、レジの一角にまがまがしい貼り紙がしてあった。
「ロリポップチョコレート 不思議の国のアリス をお買い上げのお客様へ」
おや? チェシャ猫は、アリスに出てくるキャラクターだったのでは……。
不吉な予感がして、先を読む。
「金属片の異物混入が確認されたため、商品の自主回収を行っています」
ひいい~!
それは大変! あげる前でよかった。
さて、何か別の物を見つけなきゃ。

↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
そこで気づいたことは、今年のチョコはパッとしないという事実であった。消費税増税の煽りなのか、単価が全体的に下がり、衝動買いしたくなるようなチョコレートがない。たとえるならば、人目を引く派手なイケメンが追い出され、記憶に残らないフツメンだけを集めた状態だ。
「うーん」
見た目で差がないなら、あとは中味。なるべく、もらう側が好きそうな味を選んでみたものの、喜んでもらえる自信がない。つき合ってみないことには、どんな人かわからないからである。
逆に、義理チョコは種類が増えた気がする。
職場の仲間には、こんなチョコレートを買ってみた。

「チョコエイド」
絆創膏型のチョコが、本物と同じように包装され、6枚入っているようだ。これなら、笑ってもらえるに違いない。
そうだ、あの子にも何か買ってあげないと。
売り場で、ある男子生徒の顔が浮かんできた。ちょっと変わった子なのか、アルバイトの給料で友達にやたらと奢ってしまうのだ。高校生なのだから、さほどゆとりはないはずなのだが。
ついこの間も、放課後の補習授業をしていたら、休憩時間になったとたん、彼が立ち上がった。
「これから自動販売機に行くけど、何か飲みたい人いる? おごっちゃうよ」
明るい問いかけに、遠慮しない子たちは、すぐに返事をする。
「ココア~」
「コーラ」
「ウーロン茶」
「オロナミンC」
男子生徒はメモに注文を書き、「あとは?」などと促している。
中には、「アタシはいらないから」と断る生徒もいるが、少数派だ。
「先生は何がいい?」
彼は私のところにまでやってきた。
「いやあ、別にいらないよ。無駄づかいしちゃダメでしょ」
「大丈夫、大丈夫。給料出たばっかだし」
「砂糖が入っている飲み物は飲まないんだよね。気持ちだけでいいよ」
「ふーん」
それで終わったと思ったのだが……。
「先生、無糖の紅茶があったから、買ってきたよ。あったかいの」
おりょりょ。
ショートサイズのペットボトルが、無造作に教卓に置かれた。
さて、どうしよう。生徒から、ものをもらうのは好ましくない。でも、頑なに断るのもどうかと思う。
「じゃあ、いただきます」
「飲んで飲んで~」
ここは好意に甘え、あとでお返しするのがいいだろう。バレンタインデーに義理チョコを用意して、「この前は紅茶をありがとうね」と渡せば、本人も喜ぶし、一番無難な気がした。
ただし、値の張るものはいけない。他の生徒から「ひいきしている」とか、特別な感情があると思われるからだ。あくまでも、飲み物のお返しにふさわしいレベルのチョコにしなくては。
お店で私が選んだのは、ロリポップチョコレートであった。

ハート形などもってのほか。ニカッと笑うチェシャ猫が、彼にピッタリに思えた。我ながら、いい買い物ができたと満足していたところだった。
だが、昨日、これを買った店に行ったら、レジの一角にまがまがしい貼り紙がしてあった。
「ロリポップチョコレート 不思議の国のアリス をお買い上げのお客様へ」
おや? チェシャ猫は、アリスに出てくるキャラクターだったのでは……。
不吉な予感がして、先を読む。
「金属片の異物混入が確認されたため、商品の自主回収を行っています」
ひいい~!
それは大変! あげる前でよかった。
さて、何か別の物を見つけなきゃ。

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