これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2015 今年の義理チョコ

2015年02月08日 16時22分07秒 | エッセイ
 先日、バレンタインデー特設会場に足を運んだ。
 そこで気づいたことは、今年のチョコはパッとしないという事実であった。消費税増税の煽りなのか、単価が全体的に下がり、衝動買いしたくなるようなチョコレートがない。たとえるならば、人目を引く派手なイケメンが追い出され、記憶に残らないフツメンだけを集めた状態だ。
「うーん」
 見た目で差がないなら、あとは中味。なるべく、もらう側が好きそうな味を選んでみたものの、喜んでもらえる自信がない。つき合ってみないことには、どんな人かわからないからである。
 逆に、義理チョコは種類が増えた気がする。
 職場の仲間には、こんなチョコレートを買ってみた。



「チョコエイド」
 絆創膏型のチョコが、本物と同じように包装され、6枚入っているようだ。これなら、笑ってもらえるに違いない。

 そうだ、あの子にも何か買ってあげないと。

 売り場で、ある男子生徒の顔が浮かんできた。ちょっと変わった子なのか、アルバイトの給料で友達にやたらと奢ってしまうのだ。高校生なのだから、さほどゆとりはないはずなのだが。
ついこの間も、放課後の補習授業をしていたら、休憩時間になったとたん、彼が立ち上がった。
「これから自動販売機に行くけど、何か飲みたい人いる? おごっちゃうよ」
 明るい問いかけに、遠慮しない子たちは、すぐに返事をする。
「ココア~」
「コーラ」
「ウーロン茶」
「オロナミンC」
 男子生徒はメモに注文を書き、「あとは?」などと促している。
 中には、「アタシはいらないから」と断る生徒もいるが、少数派だ。
「先生は何がいい?」
 彼は私のところにまでやってきた。
「いやあ、別にいらないよ。無駄づかいしちゃダメでしょ」
「大丈夫、大丈夫。給料出たばっかだし」
「砂糖が入っている飲み物は飲まないんだよね。気持ちだけでいいよ」
「ふーん」
 それで終わったと思ったのだが……。
「先生、無糖の紅茶があったから、買ってきたよ。あったかいの」
 おりょりょ。
 ショートサイズのペットボトルが、無造作に教卓に置かれた。
 さて、どうしよう。生徒から、ものをもらうのは好ましくない。でも、頑なに断るのもどうかと思う。
「じゃあ、いただきます」
「飲んで飲んで~」
 ここは好意に甘え、あとでお返しするのがいいだろう。バレンタインデーに義理チョコを用意して、「この前は紅茶をありがとうね」と渡せば、本人も喜ぶし、一番無難な気がした。
 ただし、値の張るものはいけない。他の生徒から「ひいきしている」とか、特別な感情があると思われるからだ。あくまでも、飲み物のお返しにふさわしいレベルのチョコにしなくては。
 お店で私が選んだのは、ロリポップチョコレートであった。



 ハート形などもってのほか。ニカッと笑うチェシャ猫が、彼にピッタリに思えた。我ながら、いい買い物ができたと満足していたところだった。
 だが、昨日、これを買った店に行ったら、レジの一角にまがまがしい貼り紙がしてあった。
「ロリポップチョコレート 不思議の国のアリス をお買い上げのお客様へ」
 おや? チェシャ猫は、アリスに出てくるキャラクターだったのでは……。
 不吉な予感がして、先を読む。
「金属片の異物混入が確認されたため、商品の自主回収を行っています」
 ひいい~!
 それは大変! あげる前でよかった。
 さて、何か別の物を見つけなきゃ。


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コメント (12)
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