これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

初めての自主規制

2015年02月19日 20時16分05秒 | エッセイ
 初めて買い食いしたのは、小学校低学年のときだった。そもそも、通学路に煎餅屋があること自体が間違いなのだ。醤油の焦げるいい匂いがして、ショーケースにはこんがり焼けて膨らんだ煎餅が並んでいる。しかも、値段は1枚10円という安さ。
「ねえ、砂希ちゃん。お煎餅食べたくない?」
 その日は学校が終わると、友達のシズちゃんと遊び、一緒に帰るところだった。シズちゃんは煎餅屋をジッと見て、私の心を見透かすようにささやいた。
「うん、食べたいけど、お金がない」
 小学生は、通常現金を持ち歩かない。でも、一度家に帰ったシズちゃんは違った。
「アタシ持ってる。お母さんにもらったの」
 ならば話は早い。シズちゃんが、まあるい煎餅を2枚買う。うちの煎餅は半分湿気ているのに、焼き立てはパリパリしていて歯ごたえがいい。醤油も生きているような味わいだ。
 先生が買い食いしてはいけませんと言っていたから、誰かに見つかったら怒られる。ちょっと心配だったが、難なく食べきった。軽快で乾いた破壊音が耳に残った。
 中学生のときは、都内まで出かけた帰りに、地元の駅で揚げたてのメンチカツを食べた。ちょうどお腹の空く夕方に、揚げ物屋が待ち構えているのだから逃げようがない。こちらは百円だっただろうか。ひき肉がジューシーで、ソースなしでも十分イケる。2個でも3個でも食べられそうな味だった。
 母の手作りは、食べると必ず胸焼けする代物だったが、売られているものは比べ物にならない出来だ。衣のサクサク音をBGMに、プロはすごいと感心した。
 だが、好き勝手に食べ歩いてウン十年、40代ともなると、だいぶ状況が変わってくる。
 先日、健康診断の特定健康診査なるデータが送られてきた。心配するのは貧血くらいと予想していたら、ヘモグロビンAlcと呼ばれる血糖値が基準範囲の上限ギリギリだったのに仰天する。



 ひょえ~~!

 基準の上限は5.6だが、なんと、私の数値は5.5。調子に乗って、食べまくっている場合ではなかった。
 反省しつつも、やはり買い食いは楽しい。
 今日は、エッセイ教室の日であった。始まる前に、飲み物を買いにコンビニに入る。支払いのためにレジに並ぶと、中華まんが湯気の立ったケースで膨らんでいた。
 冬こそ、中華まんの季節である。これを見逃すわけにはいかない。私は飲み物と一緒に、カレーまんを買った。
 勤務校の至近距離だから、保護者の目があるかもしれない。スリルを楽しみながら、包み紙を開き、カレーまんにかぶりつく。ホカホカしていてやわらかく、春が来たような錯覚をした。
 さて、問題の血糖値は?
 夕飯を減らせば大丈夫でしょう、うん。
 自主規制をしながら血糖値を改善し、健康オタクに恥じぬ数値を目指します!


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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