私の勤務校では、生徒の個人情報や試験問題などをカギのかかるキャビネットに保管している。人目に触れる場所に出しっ放し、というわけにはいかないからだ。
「調査書の確認お願いします」
「転入学試験の問題ができました」
担当者は教務部に声をかけたあと、キャビネットに文書を入れて施錠する決まりになっている。

ところが、先日、このキャビネットがトラブった。
「あれ? カギが開かない」
「どれどれ。あ、空回りしていますね。まずいな」
メーカーに問い合わせ、修理に来てもらったところ、カギを開閉する支柱が折れているという。長期にわたって使っているから、劣化したのだろう。中の文書を出すには壊す以外にないらしく、困り顔の教務部主任が主事さんに相談をしていた。
「チェーンソーで上部を切ってもらえませんか」
「わかりました。火花が出るから、ここじゃまずいな」
「じゃあ、非常口から外に出しましょう」
「うわあ、結構重い。こりゃあ、4~5人必要ですね」
本校には男性の教員が多いので、すぐに必要な人数が集まり、「わっせ、わっせ」と運び出すことができた。
数分後、無事に調査書や試験問題を取り出し、一件落着となったが、この手のトラブルは怖い。
もし、転入試験の朝に起きていたら、えらいことだった。「受験生が来たのに、問題が取り出せないぞ!」となり、上を下への大騒ぎだったろう。何もない日でよかったと、ひたすら胸をなで下ろす。
連鎖反応というわけではないけれど、私のキャビネットも古くて、カギの開け閉めがスムーズではない。ここには、職員の健康診断書や入試のデータなどがしまってあるので、必要なときだけカギを開ける。
2カ月ぶりに開けようとしたのがいけなかったのだろうか。その日は途中までしかカギが動かず、開錠したときの「カチャン」という音が聞こえなかった。

「あれあれ? 機嫌悪いな、どうしたんだろう」
逆に回して、カギを元通りにし、再チャレンジ。でも、何度やっても無駄だった。
「もしや、私までチェーンソーのお世話に……。それとも、ガラスを割るとか」
最終的にはそうしないといけない。でも、ひょっとしたら天気のせいかもしれない。その日は久しぶりに雨が降っていたからだ。気温や湿度によって状況が変わる可能性もあろう。急ぎではないので、晴れて乾燥した日に、また挑戦するのがよさそうだ。
「おっ、今日はカラカラ感があるな。ではカギを」
2日後の晴天の日に、キャビネットを開けようと思い立つ。カギを差し込み、左側にグルッと回すと、先日と同じ場所で引っかかり、その先には動かない。しかし、力ではないのだ。おそらく位置の問題であろう。扉を少し持ち上げたり、左右にずらしたりして、変化をつけたとき、「カチャン」と軽快な音がして、カギが開いた。
「おっけ」
閉じ込められるリスクが怖くて、マル秘資料を別の棚に移動させた。
鍵穴にサラダ油を垂らしたら、スムーズに開くようになる、なんてことはないのかな。

↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
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ところが、先日、このキャビネットがトラブった。
「あれ? カギが開かない」
「どれどれ。あ、空回りしていますね。まずいな」
メーカーに問い合わせ、修理に来てもらったところ、カギを開閉する支柱が折れているという。長期にわたって使っているから、劣化したのだろう。中の文書を出すには壊す以外にないらしく、困り顔の教務部主任が主事さんに相談をしていた。
「チェーンソーで上部を切ってもらえませんか」
「わかりました。火花が出るから、ここじゃまずいな」
「じゃあ、非常口から外に出しましょう」
「うわあ、結構重い。こりゃあ、4~5人必要ですね」
本校には男性の教員が多いので、すぐに必要な人数が集まり、「わっせ、わっせ」と運び出すことができた。
数分後、無事に調査書や試験問題を取り出し、一件落着となったが、この手のトラブルは怖い。
もし、転入試験の朝に起きていたら、えらいことだった。「受験生が来たのに、問題が取り出せないぞ!」となり、上を下への大騒ぎだったろう。何もない日でよかったと、ひたすら胸をなで下ろす。
連鎖反応というわけではないけれど、私のキャビネットも古くて、カギの開け閉めがスムーズではない。ここには、職員の健康診断書や入試のデータなどがしまってあるので、必要なときだけカギを開ける。
2カ月ぶりに開けようとしたのがいけなかったのだろうか。その日は途中までしかカギが動かず、開錠したときの「カチャン」という音が聞こえなかった。

「あれあれ? 機嫌悪いな、どうしたんだろう」
逆に回して、カギを元通りにし、再チャレンジ。でも、何度やっても無駄だった。
「もしや、私までチェーンソーのお世話に……。それとも、ガラスを割るとか」
最終的にはそうしないといけない。でも、ひょっとしたら天気のせいかもしれない。その日は久しぶりに雨が降っていたからだ。気温や湿度によって状況が変わる可能性もあろう。急ぎではないので、晴れて乾燥した日に、また挑戦するのがよさそうだ。
「おっ、今日はカラカラ感があるな。ではカギを」
2日後の晴天の日に、キャビネットを開けようと思い立つ。カギを差し込み、左側にグルッと回すと、先日と同じ場所で引っかかり、その先には動かない。しかし、力ではないのだ。おそらく位置の問題であろう。扉を少し持ち上げたり、左右にずらしたりして、変化をつけたとき、「カチャン」と軽快な音がして、カギが開いた。
「おっけ」
閉じ込められるリスクが怖くて、マル秘資料を別の棚に移動させた。
鍵穴にサラダ油を垂らしたら、スムーズに開くようになる、なんてことはないのかな。

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