これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

持つべきものは蕎麦屋の友人

2021年11月28日 22時11分00秒 | エッセイ
 3月まで一緒に働いていた上野先生が、先月、荷物を取りに職場に戻ってきた。
「笹木先生、お久しぶりです。お元気ですか」
「ええ、おかげさまで。コロナも落ち着いてきたし」
「それはよかった」
 彼は目尻に笑いジワを寄せると、リュックから紙袋を取り出した。
「ちょっと早いけど、お誕生日おめでとうございます」
「まああ、ありがとうございます!」
 中身は焼き菓子の詰め合わせ。上野先生の新しい職場は、オシャレなお菓子屋さんに囲まれているのだとか。フィナンシェ、マドレーヌ、サブレ、パウンドケーキ、どれも正統派で絶品だった。私は写真も撮らずに、あっという間に平らげ、胃のあたりをさすった。
 上野先生の誕生日は、ちょうど私のひと月後あたりだ。食い逃げというわけにもいかず、お返しを考えた。
「うーん、うーん、何にしよう……」
 お菓子はダメだ。あれ以上、美味しい店を知らない。
 そもそも、顔を合わせる機会がないのだから、封筒に入るものなどにするべきか。
 何とかして、スマートに渡す方法はないものかと思案した。
「難しいな。何が好きなんだっけ」
 彼の行動パターンを思い出してみる。食べ歩きが趣味だと言っていた。神保町で評判の天ぷら屋に入ったら、たまたま知り合いがいてビックリ、なんて話も聞いたっけ。
 そこで閃いた。
 たしか、蕎麦も好物だったはずだと。
 私には、富山で蕎麦屋を開いている友人がいる。何度か食べているが、味は保証付きだ。コシがあって、深い味わいが楽しめる。発送もできるので、ピッタリではないか。
 上野先生にいつなら受け取れるかを尋ねたら、今日がいいと返ってきた。
「富山は水の美味しいところだから、蕎麦もイケるでしょうね。楽しみです!」
 職場の仲間だった方が、友人とつながるというのも面白い。コロナ禍で、売り上げが落ちているかもしれない友人に、多少なりとも貢献したい気持ちもある。最適解を出せたのではとうれしくなった。
「柿も入っていました。お蕎麦は風味豊かでとても美味しかったです。ごちそうさまでした」
 上野先生は大満足だったようだ。
 喜んでくれて、私もホッとした。同時に、無性に蕎麦が食べたくなってきて、友人に注文をする。
「来週は、うちにも送って欲しいな~」


(写真はイメージです)


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コメント (6)
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