これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

虫刺されの味方

2022年07月24日 22時13分25秒 | エッセイ
 この夏も暑くてツラいが、悪いことばかりではない。
「蚊が少ないですね」
「そういえば」
 気温が高いと蚊は活動しないようで、今年はまだ刺されていない。たしか、2018年の夏もそうだった。露出している腕や足を刺されはしないかと気にすることなく、屋外を歩けるのはありがたい。

 7月21日から夏休みとなり、生徒は登校していないが、教員は中学生向けの学校見学などのため、土曜出勤がある。
「去年より予約が増えました」
「でも倍率に結びつくか、わからないんですよね」
 3月までいた学校は人気校だったこともあり、定員割れをしたことがないのに、4月からの学校は毎年のように二次募集をしている。去年から新しい取り組みを発信したところ、中学からは少しずつ注目されてきた。優秀な生徒を獲得するには、ある程度の倍率を維持する必要があるので、この夏は募集対策活動に注力したい。
「お疲れ様」
「失礼します」
 17時になると、中学生対応のため集まった教員たちが順次退勤していく。暑さと朝からの準備で、疲れ気味の職員が多い。
「カギは閉めておくから、先に帰ってください」
「ありがとうございます」
 こちらも仕事がたまっている。誰もいない職員室で、落ち着いて作業した方がはかどるので、全員先に帰ってもらった。
「さて、私も帰るか」
 もうすぐ18時になるところである。ガスの元栓を閉め、電気ポットのコンセントを抜き、職員室を閉めると、機械警備のアラームとともに「あなたが最終退出者です」のメッセージが表示される。あとは、靴を履き替えて、玄関の外でセキュリティカードをかざせば電気錠が閉まるはずだった。
 しかし「カチン」という音がしない。アラームはいつまでも鳴り響き、ちょっと様子が変だ。
「どういうこと?」
 玄関は開いたままだ。もう一度中に入り、退出作業をしてカード操作をする。やっぱり閉まらない。何度やってもらちが明かない。しびれを切らして警備会社に電話をすると、サムターンが回っていないという。何かに引っ掛かっているみたいだから、これから見に来てくれるそうだ。
「何分ぐらいかかりますか」
「15分ぐらいで到着します。今しばらくお待ちください」
 ちぇっと思ったが、施錠は確実に行わないといけない。15分ぐらいなら待てない時間ではないから、まあいいやと思った瞬間、足元に猛烈なかゆみが走った。
「ナニ? もしや!」
 案の定、黒い虫がふくらはぎの近くを飛んでいた。そういえば、だいぶ気温が下がっている。
 しまった、蚊がいたのか!
 カギを閉めることしか考えておらず、蚊のリスクをすっかり忘れていた。一カ所だけではない。くるぶしも、すねも、ふくらはぎも膝の裏もかゆい。なぜか右足ばかりを5か所ほど刺されたらしい。今までゼロだったのに、なんと悔しい。
「15分かかるって言ってたから、ムヒを塗る時間があるね!」
 急いで職員室に戻り、カギを開けてムヒを出す。



 たっぷり塗ると、すぐにかゆみが収まった。
 素晴らしい!
 世の中にはキンカン派やウナコーワ派もいるようだが、私はムヒでないとダメなのだ。ネチョッと厚塗りできる自由さに、融通の利く便宜性を感じる。世界中の人に教えてあげたい気分になった。
 ムヒを塗ったあとは、再度戸締りをする。職員玄関に戻ると、予想よりも早く警備会社が来ていた。
「うーん、これは、経年劣化によってすべりがわるくなったみたいですね」
「直りますか」
「えーと、反対側からやってみましょうか」
「まだアラームが鳴ってますよ」
「ダメですね。じゃあ、もう一度」
「あれっ、動きました」
「カード操作してみて下さい」
「おっ、できたみたいです」
「そうですね、かかっています」
「よかった、ありがとうございました」
 かくして、私は職場を出ることができたが、今度は左足がかゆい。警備会社とすったもんだをしているときに、新たに刺されたらしい。
「もういい。もう帰る」
 1時間後、我慢に我慢を重ねて、帰宅してから家にあるムヒを塗り、かゆみはどうにか収まった。
 夏の必須アイテムと呼ばせていただきます。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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