しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「可燃物」 米澤穂信 

2024年08月22日 | 読書
「可燃物」 米澤穂信  文藝春秋   

群馬県警捜査一課葛警部が主人公の短編集。

「崖の下」
スキー場にスノーボードに来ていた30代の5人の仲間が遭難する。
捜索隊が2人を転落したらしい崖の下に見つけた時、後東陵太は死亡して水野正は重傷だった。
後東は頸動脈を刺されたことによる、失血死だった。
犯人は一緒にいた水野だと思われたが、凶器が見つからなかった。
重症の水野はその場を離れることは出来ず、第三者が現場に来た痕跡もなかった。

「ねむけ」
傷害事件の被疑者、田熊が交通事故を起こす。
深夜の交差点で、2台がぶつかる。
聞き込みで、田熊の方が赤信号で突入したという目撃情報が複数出る。
下水工事の誘導員、コンビニの店員、帰宅途中の医師、ゲームで遊んでいた大学生だった。
まずはそれで逮捕して、と言う意見が出るが、情報が揃い過ぎている事に葛は違和感を持つ。

「命の恩」
湿地帯に5キロ程の木道を掛けた観光地〈きすげ回廊〉で、人間の右上腕が発見される。
近辺を捜査すると、バラバラにされたほぼ身体の全部分が見つかる。
そして歯が決めてになり、身元も分かる。野末晴義、58歳。
息子の勝から、10日前に行方不明者届けが出されていた。
やがて容疑者が浮かび、犯行を認める。
しかし、普通バラバラにするのは身元をわからなくする為なのに、歯がそのまま残っていた事や見つかりやすい観光地に捨てられたちぐはぐさがあった。

「可燃物」
連続放火がごみ収集所で起こる。
燃やされたのは可燃物の入ったごみ袋で、どれも大事には至らなかった。
そして、刑事が張り込みを始めると放火はぴたりと止む。
張り込みが気付かれたのか、それとも目的を達したのか。

「本物か」
ファミリーレストランで立てこもり事件が発生する。
犯人はその前に出されたパフェにナッツが入っていたと怒っていたと言う。
窓から顔を出した犯人は手に拳銃のような物を持っていた。
やがて、その人物は子どもと訪れていた事が分かる。
ファミリーレストランにいるのは、犯人とその息子、店長と女性アルバイトの4人。




事件よりも葛の捜査の仕方や考え方がまずある、葛の存在が大きい物語。
葛は上司にも部下にもあまり自分の考えは話さず、人と馴染まない。
それでも、独自の考え方を持ち、それを捜査に生かし事件を解決して行く。
そんな葛に共感出来るかと言えば、出来ない、苦手なタイプ。
ただ筋は通っていて公平さはあるので、頼りにはなるかも知れないが。
葛と対峙する部下がどんな返答をするのか、ドキドキしながら読んでいた。
事件そのものも意外な展開が多く、そんな考え方もあるのだと面白かった。
ただ、タイトルにもなった「可燃物」は、その動機はあるのだろうかと、あまり納得がいかない。
事件後の事が後書きのように淡々と書いてあり、それが世の中なのだろうと思いつつ、後味の悪くなるものもあった。
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