しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「女彫刻家」 ミネット・ウォルターズ 

2008年10月09日 | 読書
「女彫刻家」 ミネット・ウォルターズ  東京創元社
 THE SCULPTRESS    成川裕子・訳

1988年ウィンチェスター刑事法院はオリーブ・マーチン23歳を、母親および妹殺害の罪で無期懲役(禁固最低25年)を言い渡す。
4年後、フリーライターのロザリンド(ロズ)・リーはオリーブの本を書くため刑務所を訪れ、オリーブに面会する。
オリーブがグロテスクに太っていて嫌悪感を覚えるが、話していてロズは好感を抱く。
そして、オリーブが母親と妹を殺害した理由を話していないことなのから、オリーブが誰かを庇っているのではないかと思い始める。




23歳の娘が母親と妹を殺し、首や手を切り離した後また並べるというショッキングな殺人から幕を開ける物語。
まずその事件が頭にあるので、不気味な雰囲気を感じ取ってしまう。
そのグロテスクさはまず物語に引き込むためで、あまりその後の展開には関係がない気がした。
しかし最後まで読んで考えると、このことが表面には出ないけれど、根底にある感情や雰囲気に大きく影響しているのだと気が付いた。
オリーブという人物をどう捕らえるかで、全体も変わる。

この物語がどう展開していくのか、予想が付かないのが面白い。
結局、ロズがオリーブの無実を信じて、今まで隠されていたことを探し出していく展開になるのだが。
目に見えたことがその通りのこととは限らない。
何を信じるのかは、結局自分で決めるしかないのだが、それが結構簡単ではない。
表面的に物語が終わった後も、本当のそれでよかったのだろうか、と思わせる余韻がある。
真実はどうだったのだろう。
はっきり知りたい、と思ってしまう。もやもやが残って何となく落ち着かない。
それがこの物語の持ち味のひとつなのだろうけれど。
怖い物語だ。

先に読んだ「氷の家」もそうだが、登場人物がみんなクセのある性格で、あまり感情移入して読む感じではない。
感情移入出来なくても、面白い。


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