しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「笑うハーレキン」  道尾秀介 

2014年10月11日 | 読書
「笑うハーレキン」  道尾秀介   中央公論新社 
   
東口太一は4歳の一人息子、笙太を事故で亡くし、妻と離婚し、家具会社を倒産させてホームレスになった。
そしてオンボロトラックを住まいと仕事場とし、家具修理をして生計を立てていた。
居住地はスクラップ置き場の片隅。
そのスクラップ置き場の持ち主は橋本と言う初老の男でアパートの大家もしていた。
東口は仲間と共に、その1室を借りていた。
それは、風呂やトイレを使用したり住民票を取る為で、誰も住んではいない。
仲間は、ジジタキさん、チュウさん、トキコさん、モクさん。
ある時、トラックに弟子にして欲しいと、謎の若い女性、西木奈々恵が乗り込んで来る。







東口にはいつも側に疫病神がいた。
その疫病神との会話が、現実と東口の心の中の違いや本音を見せつける。
エピソードがいくつかある。
それを通して、東口と疫病神のやり取りが物語の中心になっている感じもする。
タイトルにあるハーレキンは道化師。
ピエロと道化師の違いは、涙を描くかどうかとか。
しかし、どちらも顔を隠して本当の表情は見えない。
それは東口そのものだと。
少しずつ分かる東口のそれまでの生活。
職人として優秀で、自分の下で働いた社員の為に犠牲になり、息子を心から愛していた良き父親。
そんな像が崩れて行き、それまで書かれていた心情と一致していく。
それは東口自身には分かっていたことなのだが。
だから全体に暗く重苦しい空気が漂う。
最後のエピソードで、前向きな様子が見える。
その最後の大きなエピソードは、ちょっと現実離れしているが。
これは東口と仲間と言うか、人が生きる為に大事な事を知らしめる為だったのだろう。
人生は色々なことがあり、挫折もたくさんある。
心が無くなりそうな辛いことも。
でも、誰でも立ち直ることは出来る。
そして、本当は誰もが立ち直りたいと思っている。
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