『カンフーハッスル』で、燃えよ、心だけドラゴン!

2015年12月09日 | 映画
 『カンフーハッスル』を久しぶりに見直した。

 ご存じ『少林サッカー』のチャウ・シンチーの撮ったアクションコメディ。

 私はこの映画がけっこう好きで、テレビでやるとたいてい見てしまう。そうして恥ずかしながら、見終わった後、ちょっと元気が出たりする。

 内容はというとこれが直球ど真ん中のカンフーバトル。ついでにいえば、バカ映画である。

 バカ映画には2種類あり、わざとバカをやる「確信犯」と、マジメに作ったのにあららお馬鹿になっちゃったという「天然」。

 『マーズ・アタック!』や『地獄甲子園』などは「確信犯」。『インデペンデンス・デイ』や『シベリア超特急』は典型的な「天然」だ。

 で、『カンフーハッスル』は前者。

 この映画、とにかく「熱い」。より正確にいえば「無駄に熱い」。

 この「無駄に」というのがポイントで、単に熱いだけだと一歩間違うと「名作」になってしまったりするが、「無駄に」がつくことによってB級たり得るのである。

 「無駄に熱い」。これがいい。ちなみに、無駄ではなく熱すぎて大気圏で燃え尽きてしまったのが、これまた先日関西で深夜放映していた『キャシャーン』である。

 そしてこの映画、「熱い」だけでなく「カッコイイ」。より正確にいえば「バカカッコイイ」。

 単にカッコイイだけだと一歩間違うと「名作」になってしまったりするが「バカ」がつくことによってB級たり得るのである。

 バカカッコイイとはどういうことなのかと問うならば、具体的にいえば「○○ならお前は2番だ」と決める宮内洋演ずるところの『怪傑ズバット』や、テンガロンハットかぶって海を見つめながら「嵐が来るぜ」とギターを鳴らす「渡り鳥」こと小林旭。

 中村俊介がやった『ツーハンマン』とか『アストロ球団』のジャコビニ流星打法とか、要するに『空手バカ一代』みたいな作品。

 『少林サッカー』がヒットしたとき、「あえてバカ映画を観て楽しむのが、ちょっと通でオシャレ」といった生ぬるいプチサブカル的風潮を作ろうというような空気があったが、そんな「オサレ」な視点でバカカッコイイ映画を観ても、おもしろくなどない。

 もっと作り手の熱き魂を感じんかい、なのである。そこはジャンプ黄金時代世代の血が騒ぐのである。

 敵を倒しながらも住処を追われる羽目になった3人の達人が別れる前に「最後にお手合わせを」というところとか、彼らを襲う刺客の衣装が裾の広いカンフー着、ロン毛にサングラスといったチョイスなど思わず

 「チャウ、オマエわかってる!」

 といいたくなる(世界の悪者はすべからくオールバックでなければならない)。

 中盤でチャウがアイスクリームの屋台を襲って小銭を盗むというショッカー並みにセコイことをやろうとすると、その屋台の女の子が、子供のころ悪ガキにからまれているところを助けようとした(そしてボコられた)女の子であったという『赤い』シリーズか韓国ドラマというような超ベタベタご都合主義シーンがまたよい。

 ここでよくシェイクしたあとフタを開けたコーラみたいに、涙がブワッとあふれ出た。

 なんでこんな偏差値35くらいのドラマツルギーで泣かなあかんのやと自分であきれるが、

 「そうなんや、たしかにワシもただのボンクラやけど、心の中では愛するものを守るため戦いたいとかこっ恥ずかしいこと考えてるんや。たとえかなわないとしても、前のめりに倒れなアカンのやあ!」

 などと胸が熱くなる。まあ日本はこの勢いでアメリカに戦争ふっかけてボコボコにされたわけですが。

 いんや、しかしよいのである。

 内容がない? ストーリーが破綻してる? そんなもんどうでもいいんです。

 もちろん不満なところはたくさんある。ロマンスは中途半端だし、斧頭会のボスアッサリ死にすぎだし、もうちょっと伏線等は練ってほしいし、相棒のデブちゃんに見せ場ないし。

 しかし、それを補ってあまりある「愛と情熱」がこの作品にはある。「子供の戯言」を真剣にやる。あらゆる創作物の原点である。

 「無駄に熱い」「バカカッコイイ」この二つが琴線に触れる、オーケンいうところの


 「燃えよ! 心だけドラゴン


 なボンクラ男子諸君、『カンフーハッスル』を観よ!



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