前回(→こちら)の続き。
「もし錦織圭がグランドスラムで優勝するんやったら、どの大会がええと思う?」。
という忘年会におけるテニスファンの友人エサカ君の問いに、
「全仏で決まりやね!」
とぶちあげた私。
クレーは日本人選手にとって鬼門だし、ジョコビッチやナダルだけでなく、「クレーのスペシャリスト」という曲者をも相手にしないといけないこの大会は相当タフであり、さらにはぶっちゃけ日本でマイナー、世界でもやや不人気なところ。
そこをわざわざ選ぶには根拠があって、ひとつめにはまず私が変にマイナー嗜好だからというのもあるが、それよりもなによりも、
「錦織圭がローラン・ギャロスを制すれば、日本テニス界の歴史が変わる」
そう願っているから。
では具体的になにがどう変わるのかといえば、ずばり
「日本でクレーコートのテニスがもっとメジャーになってくれるはず!」
この思いである。
今の錦織圭の影響力はすごい。
昨年のUSオープン準優勝からはじまって、世界ランキング最高4位、2015年の安定した活躍と、今ではすっかり日本スポーツ界のスーパーヒーローである。
彼の影響で子供がテニスを習いたがり、親もそれを応援する。スポーツニュースやCMにもたびたび出演し、彼の使用しているラケットやウェアはあっというまに売り切れ、果ては「もっともあこがれるアスリート」みたいなアンケートでもナンバーワンに輝いた。
これには「しょせんはバブル」「テニスブームではなく錦織ブームなだけ」という意見もあるが、それに乗っかってラケットを取る子供たちが増えるのは間違いなくうれしいことであり、また彼ら彼女らにはバブルとかブームなんて言葉も、あまり関係あるまい。
きっかけや大人の邪念はどうあれ、子供たちはテニスがしたいから、したいのだ。
そんな子供たちはきっと今、目をキラキラさせながらグランドスラムやマスターズ1000、ジャパン・オープンといった大会を観戦しているにちがいない。
となると、そこで「錦織圭、フレンチ・オープン優勝」の瞬間とめぐりあえばどうなるのか。
ほぼ確実に、日本にクレーコートブームがおとずれるにちがいない。
錦織圭の影響力と子供の伝染力はすさまじいものがある。きっと子供たちはその瞬間から、
「ボクも土のコートでプレーしたい!」
そう言い出すことであろう。そこから、日本に本格的なレッドクレーのスペシャリスト的選手が登場する。
それこそが、私の大いなる野望なのである。
そもそも、日本にはクレーコートの数が少ない。
私の住む大阪でも靭公園テニスセンター(デビスカップや世界スーパージュニアなどが行われるところ)くらいにしかないし、そもそも日本はハードコートかオムニコート(砂入り人工芝)が全盛なのだ。
その理由としては、「維持の手間がラク」だからなどがあるが、そのせいで日本人は赤土のコートが苦手という選手が実に多い。
そらまあ、プレーする機会が圧倒的に少ないのだからしょうがないわけだが、これが近年の日本人選手(特に男子)の大きな課題ともいえた。
たしかに、現在のテニス界はハードコートが主流である。このコートで賞金やポイントを稼ぐことこそが、トップに立つための必須条件ともいえる。
だが、それだけでいいのだろうか。ヨーロッパや南米などではクレーコートが主流のところが多く、ツアーの中でも春から全仏までの期間に「クレーコートシーズン」があり、ここをどう乗り切るかがシーズン序中盤の山場である。
また、ツアーや大会のことだけでなく、育成の面からもクレーコートの重要性を語る専門家も多い。
スピードとパワーがものをいうハードコートではジュニア時代からそれに頼ってしまう選手もいて、プロになって力押しが通じないとなると伸び悩むこともあるという。
その点、球足の遅いクレーでは一発で決めることが難しいため、精密なコントロールや長いラリーを耐え抜く体力、さらには重いトップスピンやドロップショットといった多彩なショットも身につけられる(身につけないと勝てない)。
これがプロになって太い「幹」となる。
ジュニア時代にそういった基礎をしっかりと身につけた選手と、日本の特殊な「高校テニス」とでは18歳になったときの完成度がちがうという声も聞いたことがある。
フランスのテニスが層も厚く、またオールラウンドでありながら多様な個性を身につけているのは、ジュニアのころからローラン・ギャロスの質の高いクレーコートでみっちり鍛えられるからだという記事を読んだこともある。
また、クレーコートになれていると、サーキットでポイントを稼ぎやすいという面もある。
日本男子テニスがなかなか世界レベルになれない理由の一つに、「島国なので、海外の大会に参加しにくい」というのがあげられる。
若手の選手が世界をねらうには、チャレンジャーやフューチャーズ(野球でいう2軍戦、サッカーでいうセリエCとかDくらいの大会)で勝ち上がりポイントを重ねていかなければならないが、日本人は距離的な意味で、特に学生プレーヤーはどうしてもエントリーできる数がかぎられてくる。
なので、海外でやっていきたい選手は遠征に出かけることを余儀なくされるのだが、ヨーロッパや南米はクレーコートの大会がそこかしこで開催されており、クレーで戦えるなら、エントリーする大会に困ることもないのだ。
特にヨーロッパは地続きで交通網も発達してるから、移動も楽。この経験の差は大きい。
そういった事情は昔から語られているが、日本ではなかなか「じゃあ、クレーコートを強化しようか」といった話にはならない。
クレーコートが増えることもないし、そもそも日本ではフューチャーズレベルですら、クレーの大会がほとんどないのではないだろうか。
いろいろ事情はあるのだろうが、なんとかしてほしい問題である。
さらには、これは古参テニスファンには大いにうなずいてもらえると思うが、あの大会のためにもクレーコートを強化してほしいという思惑もある。
(続く→こちら)
「もし錦織圭がグランドスラムで優勝するんやったら、どの大会がええと思う?」。
という忘年会におけるテニスファンの友人エサカ君の問いに、
「全仏で決まりやね!」
とぶちあげた私。
クレーは日本人選手にとって鬼門だし、ジョコビッチやナダルだけでなく、「クレーのスペシャリスト」という曲者をも相手にしないといけないこの大会は相当タフであり、さらにはぶっちゃけ日本でマイナー、世界でもやや不人気なところ。
そこをわざわざ選ぶには根拠があって、ひとつめにはまず私が変にマイナー嗜好だからというのもあるが、それよりもなによりも、
「錦織圭がローラン・ギャロスを制すれば、日本テニス界の歴史が変わる」
そう願っているから。
では具体的になにがどう変わるのかといえば、ずばり
「日本でクレーコートのテニスがもっとメジャーになってくれるはず!」
この思いである。
今の錦織圭の影響力はすごい。
昨年のUSオープン準優勝からはじまって、世界ランキング最高4位、2015年の安定した活躍と、今ではすっかり日本スポーツ界のスーパーヒーローである。
彼の影響で子供がテニスを習いたがり、親もそれを応援する。スポーツニュースやCMにもたびたび出演し、彼の使用しているラケットやウェアはあっというまに売り切れ、果ては「もっともあこがれるアスリート」みたいなアンケートでもナンバーワンに輝いた。
これには「しょせんはバブル」「テニスブームではなく錦織ブームなだけ」という意見もあるが、それに乗っかってラケットを取る子供たちが増えるのは間違いなくうれしいことであり、また彼ら彼女らにはバブルとかブームなんて言葉も、あまり関係あるまい。
きっかけや大人の邪念はどうあれ、子供たちはテニスがしたいから、したいのだ。
そんな子供たちはきっと今、目をキラキラさせながらグランドスラムやマスターズ1000、ジャパン・オープンといった大会を観戦しているにちがいない。
となると、そこで「錦織圭、フレンチ・オープン優勝」の瞬間とめぐりあえばどうなるのか。
ほぼ確実に、日本にクレーコートブームがおとずれるにちがいない。
錦織圭の影響力と子供の伝染力はすさまじいものがある。きっと子供たちはその瞬間から、
「ボクも土のコートでプレーしたい!」
そう言い出すことであろう。そこから、日本に本格的なレッドクレーのスペシャリスト的選手が登場する。
それこそが、私の大いなる野望なのである。
そもそも、日本にはクレーコートの数が少ない。
私の住む大阪でも靭公園テニスセンター(デビスカップや世界スーパージュニアなどが行われるところ)くらいにしかないし、そもそも日本はハードコートかオムニコート(砂入り人工芝)が全盛なのだ。
その理由としては、「維持の手間がラク」だからなどがあるが、そのせいで日本人は赤土のコートが苦手という選手が実に多い。
そらまあ、プレーする機会が圧倒的に少ないのだからしょうがないわけだが、これが近年の日本人選手(特に男子)の大きな課題ともいえた。
たしかに、現在のテニス界はハードコートが主流である。このコートで賞金やポイントを稼ぐことこそが、トップに立つための必須条件ともいえる。
だが、それだけでいいのだろうか。ヨーロッパや南米などではクレーコートが主流のところが多く、ツアーの中でも春から全仏までの期間に「クレーコートシーズン」があり、ここをどう乗り切るかがシーズン序中盤の山場である。
また、ツアーや大会のことだけでなく、育成の面からもクレーコートの重要性を語る専門家も多い。
スピードとパワーがものをいうハードコートではジュニア時代からそれに頼ってしまう選手もいて、プロになって力押しが通じないとなると伸び悩むこともあるという。
その点、球足の遅いクレーでは一発で決めることが難しいため、精密なコントロールや長いラリーを耐え抜く体力、さらには重いトップスピンやドロップショットといった多彩なショットも身につけられる(身につけないと勝てない)。
これがプロになって太い「幹」となる。
ジュニア時代にそういった基礎をしっかりと身につけた選手と、日本の特殊な「高校テニス」とでは18歳になったときの完成度がちがうという声も聞いたことがある。
フランスのテニスが層も厚く、またオールラウンドでありながら多様な個性を身につけているのは、ジュニアのころからローラン・ギャロスの質の高いクレーコートでみっちり鍛えられるからだという記事を読んだこともある。
また、クレーコートになれていると、サーキットでポイントを稼ぎやすいという面もある。
日本男子テニスがなかなか世界レベルになれない理由の一つに、「島国なので、海外の大会に参加しにくい」というのがあげられる。
若手の選手が世界をねらうには、チャレンジャーやフューチャーズ(野球でいう2軍戦、サッカーでいうセリエCとかDくらいの大会)で勝ち上がりポイントを重ねていかなければならないが、日本人は距離的な意味で、特に学生プレーヤーはどうしてもエントリーできる数がかぎられてくる。
なので、海外でやっていきたい選手は遠征に出かけることを余儀なくされるのだが、ヨーロッパや南米はクレーコートの大会がそこかしこで開催されており、クレーで戦えるなら、エントリーする大会に困ることもないのだ。
特にヨーロッパは地続きで交通網も発達してるから、移動も楽。この経験の差は大きい。
そういった事情は昔から語られているが、日本ではなかなか「じゃあ、クレーコートを強化しようか」といった話にはならない。
クレーコートが増えることもないし、そもそも日本ではフューチャーズレベルですら、クレーの大会がほとんどないのではないだろうか。
いろいろ事情はあるのだろうが、なんとかしてほしい問題である。
さらには、これは古参テニスファンには大いにうなずいてもらえると思うが、あの大会のためにもクレーコートを強化してほしいという思惑もある。
(続く→こちら)