「誕生日には、おたがいが極上に嫌がるプレゼントを贈りあおうじゃないか」。
そんな気の狂ったような提案をかましてきたのは、友人サカマチ君であった。
3月9日は私の誕生日である。誕生日といえばO・ヘンリーのおっちょこちょいの夫婦者がおたがいに間の抜けたプレゼントを贈り合うスットコ……もとい、愛情あふれたすれちがいのすばらしさを描いた『賢者の贈り物』が有名だが、我々にもその手の心温まるエピソードにはこと欠かないものなのである。
学生時代友人サカマチと私は、おたがいの誕生日にはプレゼントを交換しあうという決まりがあった。
と書くと、なんだかゲイの恋人同士のようだがそうではなくて、我々のプレゼント交換にはひとつの不文律があった。
それは「相手のめっちゃ嫌がる物をプレゼントする」というものである。
これは桜玉吉さんのマンガ『しあわせのかたち』に影響を受けたもので、悪友サイバー佐藤さんが「誕生日になんかくれ」というのに対し、玉吉さんは「阿呆か!」と答えながらも、そこで名案とばかりに、
「ようし、じゃあおたがいに相手が嫌がるものを贈り合おうじゃないか」
そう提案するというエピソードがあるのだ。
「おたがい。絶対にいらない物をプレゼントしあおう」
「ふ、負けないぜ」
などと、いい大人が中学生みたいなノリで張り合って、それぞれ
玉吉→佐藤「趣味の悪いキラキラ光りながら回転する蝶の置物」
佐藤→玉吉「バンドもやっていないのに、ドラムのシンバル」
を贈りあっていた。
その後ふたりはひとしきり、ひきつった笑顔で
「マジ? これほしかったんだ」
「うおー、この贈り物サイコー」
はしゃぎあってから、そこでいわゆる「ゲッペルドンガー先生」(絶望先生より)に襲われて、
「こういうことは、二度としないでおこうな」「うん……」
と、うなだれるというオチがつくのだ。
もう、何度読んでも腹をかかえて爆笑で、私も大好きなネタだが、これに感動したサカマチ君は「ぜひ、オレたちもあれにならおう」と、玉吉リスペクトで、言い出したわけだ。
なにを阿呆なことを言っておるのか。なんでわざわざ、めでたき日にそんなくだらないことをしなければならないのか、かような幼稚なイベントにはぜひ参加したいということで、嫌がるプレゼント選びに血道を上げることになった。
ここに「メイガス作戦」と命名されたそれによって、我々は運命の3月9日をむかえるのだが、それが冥府魔道への第一歩であることを我々は知らなかったのであった。
(続く→こちら)