ノバク・ジョコビッチが、ついにフレンチ・オープンを制した。
今大会の注目は、日本人的には錦織圭がどこまでやれるかだったが、世界のテニスファンのほとんどにとっては、こっちであったろう。
ジョコビッチの生涯グランドスラムなるかと。
テニスの世界で全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会すべてに勝つことを「グランドスラム」というが、絶対王者ノバク・ジョコビッチはなぜか全仏だけ準優勝3回。いまだ優勝カップを掲げられずにいたのだ。
まあこれは彼がどうとかいうよりも、「クレーキング」ことラファエル・ナダルが鬼の門番として君臨していたせいであり、ロジャー・フェデラーもそうだが、もしラファが叔父のミゲル・アンヘルのようにサッカー選手になっていたら、とっくに2、3回は優勝していたろう。
実力的には、こんなもたついているほうが、そもそもおかしいのだ。そのことは、みながわかっている。だからこそ、「今年こそ」の期待度も高まる。
全世界が注目する中、ノバクは危なげなく勝ち上がっていく。
ナダルは3回戦で棄権、フェデラーは欠場、前回優勝のスタン・ワウリンカとは反対の山に入り、最大のライバルであるアンディー・マレーも序盤から苦戦の連続と、すべての風が彼に吹いているように見える。
テニスの方も昇り調子で、準々決勝ではチェコのエースであるトーマシュ・ベルディハを、準決勝では若手のホープで将来のチャンピオン候補ドミニク・ティームを一蹴し決勝進出。
そこで最後に待つのはアンディー・マレー。
同い年のライバル。世界ランキングもシード順も1位と2位。これ以上ない舞台が整ったファイナルとなった。
この決勝戦、私自身はどういう肩入れで見ていたのか。
単純に考えれば、ノバクを応援するところだろう。以前も彼のすばらしい人間性にふれ、「フレンチ優勝は間違いない」と断言したこともあるのだから(→その模様はこちらから)。
だが、一方のマレーも気になるところだ。
これまで何度もノバクに急所で痛い目にあわされてきた彼にとって、このフレンチ決勝進出は願ってもない復讐のチャンス。
なんといっても勝てば初優勝とともに、宿敵の悲願を打ち砕くことができる。まさに「2度おいしい」戦いなのだ。
さらにいえば、ここ数年のアンディーのクレーコートでのテニスもすばらしいものがある。
最近別れることになったが、女子の元世界ナンバーワン選手であるアメリー・モレスモーをコーチとして選んだときは、その意外性とまた偏見から、心無い批判を浴びたこともあった。
その間、目標だったグランドスラムの優勝を果たせなかったのだから、その点では仕方ないかもしれないが、それをおぎなってあまりある成果として、「クレーでの技術の向上」はあったと思う。
2015年ミュンヘンの大会でクレーコート初優勝を果たすと、マドリードではナダルを破ってクレーのマスターズも制覇。ローラン・ギャロスもベスト4に入る。
2016年度もいいテニスを展開し、マドリード準優勝、ローマではジョコビッチを破って優勝、そして全仏でもついに決勝までコマを進めたのだ。
これはちょっと予想外だった。見ている側からすると、アンディーの主戦場はウィンブルドンであって、フレンチはおまけといってはなんだが、負けても「本番前にゆっくり休めてよかったね」くらいの感覚だった。
それがこの充実の戦いぶり。うーむ、かつてはウィンブルドンでのマラト・サフィンやローラン・ギャロスでのパトリック・ラフターかティム・ヘンマンのような、
「サーフェスにあってない選手を偏愛的に応援する」
というひねくれた趣味の持ち主であった私にとって、これはもう、ぜひとも
「アンディー・マレー、なぜかローラン・ギャロス制覇」
というのは相当に魅力的な響きである(←「なぜか」は失礼だろ!)。
しかも、あらためて気づいたのだが、もしアンディーがここで勝てば、全仏、ウィンブルドン、全米のタイトルを持つことになり、なんと来年の全豪に「グランドスラム」がかかることになる。
いや、それどころかロンドンオリンピックで金メダルを取っているから、「ゴールデンスラム」だ。
ノバクは銅メダルが最高だから、一気の大逆転。おまけに全豪は全仏の前に開催されるから、先んじられる可能性は大だ。まさに逆王手。
ちなみにアンディーは全豪をなんと準優勝5回。ノバクの全仏準優勝3回といい、めぐりあわせってなにって感じだ。
もし準決勝でワウリンカがアンディーに勝っていたら、なにはばかることなくノバクを応援できたろう。
スタンにふくむところはないが、「キミは去年勝ってるやないか。今年はゆずってやってちょ」と言いやすいところはあるから。
逆にノバクがティームにやられていたら、そっちはそっちで、「ドミニク、キミはこれからいくらでもチャンスはあるやないか。でも、アンディーはこれが最初で最後やから」と言えるわけだ。
そこを1位と2位の「ドリームファイナル」。
嗚呼、結局私は最後までどっちも応援できなかったよ。
(続く→こちら)
今大会の注目は、日本人的には錦織圭がどこまでやれるかだったが、世界のテニスファンのほとんどにとっては、こっちであったろう。
ジョコビッチの生涯グランドスラムなるかと。
テニスの世界で全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会すべてに勝つことを「グランドスラム」というが、絶対王者ノバク・ジョコビッチはなぜか全仏だけ準優勝3回。いまだ優勝カップを掲げられずにいたのだ。
まあこれは彼がどうとかいうよりも、「クレーキング」ことラファエル・ナダルが鬼の門番として君臨していたせいであり、ロジャー・フェデラーもそうだが、もしラファが叔父のミゲル・アンヘルのようにサッカー選手になっていたら、とっくに2、3回は優勝していたろう。
実力的には、こんなもたついているほうが、そもそもおかしいのだ。そのことは、みながわかっている。だからこそ、「今年こそ」の期待度も高まる。
全世界が注目する中、ノバクは危なげなく勝ち上がっていく。
ナダルは3回戦で棄権、フェデラーは欠場、前回優勝のスタン・ワウリンカとは反対の山に入り、最大のライバルであるアンディー・マレーも序盤から苦戦の連続と、すべての風が彼に吹いているように見える。
テニスの方も昇り調子で、準々決勝ではチェコのエースであるトーマシュ・ベルディハを、準決勝では若手のホープで将来のチャンピオン候補ドミニク・ティームを一蹴し決勝進出。
そこで最後に待つのはアンディー・マレー。
同い年のライバル。世界ランキングもシード順も1位と2位。これ以上ない舞台が整ったファイナルとなった。
この決勝戦、私自身はどういう肩入れで見ていたのか。
単純に考えれば、ノバクを応援するところだろう。以前も彼のすばらしい人間性にふれ、「フレンチ優勝は間違いない」と断言したこともあるのだから(→その模様はこちらから)。
だが、一方のマレーも気になるところだ。
これまで何度もノバクに急所で痛い目にあわされてきた彼にとって、このフレンチ決勝進出は願ってもない復讐のチャンス。
なんといっても勝てば初優勝とともに、宿敵の悲願を打ち砕くことができる。まさに「2度おいしい」戦いなのだ。
さらにいえば、ここ数年のアンディーのクレーコートでのテニスもすばらしいものがある。
最近別れることになったが、女子の元世界ナンバーワン選手であるアメリー・モレスモーをコーチとして選んだときは、その意外性とまた偏見から、心無い批判を浴びたこともあった。
その間、目標だったグランドスラムの優勝を果たせなかったのだから、その点では仕方ないかもしれないが、それをおぎなってあまりある成果として、「クレーでの技術の向上」はあったと思う。
2015年ミュンヘンの大会でクレーコート初優勝を果たすと、マドリードではナダルを破ってクレーのマスターズも制覇。ローラン・ギャロスもベスト4に入る。
2016年度もいいテニスを展開し、マドリード準優勝、ローマではジョコビッチを破って優勝、そして全仏でもついに決勝までコマを進めたのだ。
これはちょっと予想外だった。見ている側からすると、アンディーの主戦場はウィンブルドンであって、フレンチはおまけといってはなんだが、負けても「本番前にゆっくり休めてよかったね」くらいの感覚だった。
それがこの充実の戦いぶり。うーむ、かつてはウィンブルドンでのマラト・サフィンやローラン・ギャロスでのパトリック・ラフターかティム・ヘンマンのような、
「サーフェスにあってない選手を偏愛的に応援する」
というひねくれた趣味の持ち主であった私にとって、これはもう、ぜひとも
「アンディー・マレー、なぜかローラン・ギャロス制覇」
というのは相当に魅力的な響きである(←「なぜか」は失礼だろ!)。
しかも、あらためて気づいたのだが、もしアンディーがここで勝てば、全仏、ウィンブルドン、全米のタイトルを持つことになり、なんと来年の全豪に「グランドスラム」がかかることになる。
いや、それどころかロンドンオリンピックで金メダルを取っているから、「ゴールデンスラム」だ。
ノバクは銅メダルが最高だから、一気の大逆転。おまけに全豪は全仏の前に開催されるから、先んじられる可能性は大だ。まさに逆王手。
ちなみにアンディーは全豪をなんと準優勝5回。ノバクの全仏準優勝3回といい、めぐりあわせってなにって感じだ。
もし準決勝でワウリンカがアンディーに勝っていたら、なにはばかることなくノバクを応援できたろう。
スタンにふくむところはないが、「キミは去年勝ってるやないか。今年はゆずってやってちょ」と言いやすいところはあるから。
逆にノバクがティームにやられていたら、そっちはそっちで、「ドミニク、キミはこれからいくらでもチャンスはあるやないか。でも、アンディーはこれが最初で最後やから」と言えるわけだ。
そこを1位と2位の「ドリームファイナル」。
嗚呼、結局私は最後までどっちも応援できなかったよ。
(続く→こちら)