「人生とはなんだ!」
筋肉少女帯の大槻ケンヂさんは『これでいいのだ』という曲の中で、こうシャウトした。
人生とはなんぞや。
「人生とは愛です」
「人生とは戦いだ」
「さよならだけが人生さ」
などなど答えは様々だが、不肖この私は、この問いに対して明確な解答を持っている。
それを伝授してくれたのは、曲の中でそれを問うたオーケンに他ならないのだが、それは一体なんなのかと問うならば、答えは彼のライブにかくされていた。
オーケンは筋肉少女帯を脱退後、特撮というバンドで活動していた。
何度かライブに足を運んだが、さすが銀杏BOYZの峯田君や、作家の辻村深月さんから、エヴァンゲリオンの綾波レイなどなど。
あなどれない数のクリエイターに大きな影響を与えているオーケンのこと、ファンの熱狂度はそこいらのバンドの比ではない。
その日も『文豪ボースカ』や『テレパシー』などの名曲を堪能したところ、曲間にオーケンがマイクパフォーマンスをはじめた。
議題に上がったのは、マネージャーのことであった。
なんでも、新しくついてくれたマネージャーさんは怪獣番組の、中でも『ウルトラセブン』の大ファンなのだそうである。
その熱中ぶりは、酔っぱらうと仕事のことそっちのけで、ひたすら「エレキングが」「クール星人が」「おもちゃじいさんが」とセブンの話をするという入れこみよう。
その日も楽屋で語っていたそうだ。
「ボクはね、ワイアール星人が一番好きなんですよ、知ってますかワイアール星人!」
ワイアール星人とは、第2話『緑の恐怖』に登場する宇宙人である。
ちなみに、こういうの。
その熱いオタクっぷりに、若干もてあまし気味だったオーケンだが、そこで客席に叫んだ。
「でもな、それでいいんじゃねえか。人がなんていおうと、ここまで熱くなれるくらい好きになれることがあるって、幸せなことじゃねえのか?」
客席から「いいぞ!」「その通りだオーケン!」の声。
「人生ってそういうもんだよ、好きなこと見つけて、それまっとうできたら幸せなんだよ。マネージャーはそれがウルトラセブンで、オマエらはロックだ!」
客席大拍手。これに興奮したオーケンは、締めの言葉を言おうと、
「人生はな、人生ってのはなあ……」
グングンとボルテージを上げていく。
ステージ上で飲んだビールの酔いと、会場の雰囲気がないまぜになったオーケン。
急にわけがわからなくなったのだろう、肩で息をしながら、人生とは、人生とはな、と数度繰り返し、こう叫んだのだ。
「人生とは、ワイアール星人なんだよ!!!」
人生はワイアール星人!
なにをいっとるのか、オーケンは。意味不明だ。
だが、言葉の意味はよくわからんなりに、なんだか妙なインパクトはあった。
たぶんオーケン的には、「人生とは」とぶち上げてみたものの、そこで頭がわちゃくちゃになってしまったよう。
そこで、とにかく思いついた単語をシャウトしたら、「ワイアール星人」になってしまったのだろう。
なんで、こんなことになってしまったのかだが、それも勢いであろう。
胸を打たれた。よくはわからんけど。
この言葉に感銘を受けた私は、これ以降
「人生とは何か」
「生きる意味とはなんなのか」
などと、悩める友人や後輩たちに問われるたびに、それを答えにしてきた。
「人生とは、ワイアール星人である」と。
みなさまも、人生が迷子になりそうなときは、この言葉を思い出して、明日への一歩を踏み出していただきたいものである。