「そうか! タランティーノと友近は、どっちも『赤黒』やったからか!」
そう大いに納得したのは、あるラジオ番組を聴いていたときだった。
などとはじめても、読者諸兄には「いきなり、なんの話やねん」と意味不明だろうが、ここに説明すると、昔からクエンティン・タランティーノの映画と友近さんのコントがピンとこなかった。
といっても別にふたりをつまらないと思っているわけではない。
『フォー・ルームス』のロアルド・ダールを下敷きにした短編は好きだし、友近さんも『オールザッツ漫才』で披露していた「やたらとボケたがる地方局の女子アナ」には爆笑したものだ。
クリエイターとしては「才能あるなあ」と一目も二目もおいているともいえる。
ではなぜにて、そんな「すごい」と思いながらも、「なんか心にヒットせえへん」と首をかしげてしまうのか。不思議だったのだが、その謎が解けたのが、映画監督である中野貴雄さんの一言。
『ザッツ変態テインメント』
『サワリーマン金太郎VS痴女軍団』
『花弁の忍者 桃影 忍法花ビラ大回転』
などなど、タイトルを聞いただけでリスペクトせざるを得ない映画を撮り、奥様はキャットファイターという
「男の中の男」
としか表現しようのない中野監督が、深夜ラジオで映画論を語っていたのだが、その中でこういうのがあったのだ。
「日本映画はね、赤黒い映画と青白い映画に分けられるんです」。
赤黒と青白。一聴意味が分かりかねるが監督によると、
「パッケージの裏の色のことです」
続けて解説することには、
「そこを見ればわかるんですが、赤黒い映画というのは《昇り龍の入れ墨を入れた姐さんが最強の女殺し屋になって日本刀とか鎖鎌を振る》映画で、青白い映画とは《白痴の妹がブランコをこぎながら、ほうけたように空を見上げて童謡を歌う》映画なんですよ」。
ここで監督はきっぱりと、
「日本映画はすべて、このどちらかに分けられます」
イヤホンからこれを聴いたときは、「どんな偏った定義や」と真夜中なのに爆笑してしまった。
「すべて、このどちらかに分けられます」という断言がナイスである。ホンマかいな。『キネマ旬報』とかには、絶対に載らないきわめて『映画秘宝』的なカテゴライズであるといえよう。
もう一度おさらいしよう。
赤黒は『昇り龍の入れ墨を入れた姐さんが最強の女殺し屋になって日本刀とか鎖鎌を振る映画』
青白は『白痴の妹がブランコをこぎながら、ほうけたように空を見上げて童謡を歌う映画』
この中野流の映画分類がおもしろすぎて、それ以降TSUTAYAに行くと
「この映画は赤黒か、青白か」
パッケージの裏をチェックするようになってしまったのだが、まさかここに私の中にあった様々な謎を瞬時に解き明かす大きな発見があったとは、このときは知るよしもなかったのである。
(続く→こちら)