前回に続いて、「トーマス・ヨハンソン世代」が中心のオタク談義。
特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、
「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
すっかり疑心暗鬼に。
そりゃまあ、
「正義のヒーローの必殺技に《シルバーめくら手裏剣》というのがある」
なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。
では、まずは登場人物。
1.ベットウ君
後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。
好きなマヌケ怪獣はビーコン
2.ワカバヤシ君
元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
好きなマヌケ怪獣は特になし。
3.カネダ先輩
SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。
好きなマヌケ怪獣はキングカッパー
4.私
特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
好きなマヌケ怪獣はデットン
■前回は『ウルトラマンタロウ』のZATの楽しさについて語っていましたが、どうもそこにモノ申したいときもあるようで……。
ワカバヤシ「なんか、みんなで楽しくツッコミ入れたくなるほど変なんだ、タロウとZATって」
ベットウ「一言で言えば、呑気なんですよ」
私「有名なところでは、おにぎり食べながら会議してるとか」
カネダ「怪獣出現の連絡を受けて、出動する隊員の選ばれた理由が【昨日、カレーを食べたから】」
ベットウ「自衛隊が、災害派遣のメンバーをそれで選んでたら、間違いなく炎上ですよね」
ワカバヤシ「MATとかTACとは全然違うんだね」
私「でも、それはそれで問題でやな。オレ、こないだたまたまシェルターの回見たんやけど、アレはひどかったなあ」
ベットウ「はいはい。第13話《怪獣の虫歯が痛い!》」
ワカバヤシ「虫歯……。なんか、タイトルからしてアレだよね」
私「そもそも、シェルターって虫歯やないねん。ZATが訓練で打った水中ロケットが、歯にはさまってるだけっていう」
ワカバヤシ「ゲ、それ、すごい痛そう」
ベットウ「痛いですよ。マブチモーターが歯にはさまるようなもんですもん」
ワカバヤシ「いや、その例えはよくわかんないけど」
私「で、痛くて暴れるから、ZATがその歯を抜こうとして、スカイホエールっていう変な戦闘機に糸付けて……」
ワカバヤシ「あー、子供が乳歯抜くときの感じね」
私「東光太郎(ウルトラマンタロウ)が行くんやけど、なんとそこで、関係ない健康な歯を抜いてまう!」
ワカバヤシ「えー! それはダメだよ!」
私「そう。麻酔もなしで、いきなり歯を引っこ抜かれるんやから、ひどすぎるねん」
カネダ「『マラソンマン』や」
ベットウ「あの映画史に残る、残酷なナチの拷問をZATが(笑)」
私「で、激痛に耐えかねて、シェルターが火を吐いて大暴れするもんやから、宮崎県が壊滅状態に」
ワカバヤシ「蛙亭のイワクラさんが泣くなあ」
ZATの大型戦闘機スカイホエールを使って、シェルターの歯から強引に水中ロケットを抜こうとするところ。
ここで東光太郎隊員(シェルターにロケットを打ちこんだ張本人)が間違えて(!)健康な歯を抜いてしまう。
ZAT隊員たちのアホ面(としか言いようがない)があるせいでコメディーチックになっているが、ちょっとヒドイ話である。
私「もうこれだけで、ZATの責任問題は尋常じゃないけどさ」
ベットウ「とりあえず、光太郎はクビですよね」
私「結局ZATがやっつけるねんけど、シェルターなんも悪いことしてへんやん!」
カネダ「ちなみにシェルターは、タロウのストリウム光線が効かない強敵」
ワカバヤシ「平和に暮らしてたら、いきなり歯にロケット打ちこまれて、泣きながら(本当に涙を流している)痛い痛いって暴れたら、健康な歯を麻酔なしで抜かれて、あげくに殺されて、宮崎県民にはきっと恨まれて」
ベットウ「光太郎も最後、一応あやまってましたけどね」
カネダ「ごめんですんだら警察いらんって、こういうときのための言葉なんやなあ」
カネダ「ぺスターに発砲して工業地帯を壊滅させたイデ隊員以上かもしれん」
私「あれもすごい。全身に原油をためこんでる【油獣】相手に《絶対に発砲するなよ》いう命令のはずが……」
ベットウ「あせって、思わず撃ってまうんですよね。ほんでドッカン」
ワカバヤシ「なんだか、《押すなよ、絶対押すなよ》みたいなノリだねえ」
カネダ「笑いごとやない。それで京浜工業地帯の石油コンビナートが全滅するんやから」
ワカバヤシ「え! 大事じゃないですか!」
ベットウ「大事も大事。職員さんに、《こんな状況で撃ったら、素人でもどうなるかわかるやん!》てマジギレされて」
カネダ「ほんで、イデ隊員が《ボク、科特隊辞めます》いうのをムラマツキャップが止めて、なんか感動のシーンぽいけど」
私「絶対、そんなもんでゆるされる被害やなかったよ」
ワカバヤシ「どの組織も、身内には甘いんだよ」
カネダ「でも、あの被害状況は見てて結構、陰惨な気分になるねん」
ベットウ「今やったら暴露系ユーチューバーに《犯人コイツ》って、顔さらされますね、きっと」
私「まあ、特撮がすごかったから、オレはゆるすけど」
ワカバヤシ「そういう問題なの?」
ベットウ「この人は、そういう人なんです。たぶん、シリアルキラーがおっても特撮が上手かったら裁判で無罪に投票するんんです」
ワカバヤシ「そのエピソードは問題だけど、聞いてたら、タロウってちょっとおもしろそうなんだけど」
ベットウ「そう、今見るとおもしろいんですよ」
私「子供は逆に背伸びしてハードなもんが見たいわけ。だから、子供とか出して媚びられると、冷めるねん」
カネダ「変っていうのも、良い言い方すれば【新しいことに挑戦してる】ってことやしな」
ベットウ「そうそう。酔っぱらい怪獣に水ぶっかけたりとか、そう見せかけて、変にダークなエピソードとか、シュールな回とかあったり」
私「家族がキノコ人間になってるラストはおぼえてるなあ」
カネダ「映画『悪い種子』みたいな話もあったりとか」
ベットウ「かと思えば、食いしん坊怪獣モットクレロンなんて、センス爆発な怪獣もいるし」
私「仲間同士で、一杯やりながらワイワイ見るのが最高。特撮もいいし」
ベットウ「良くも悪くも、平和ですよね、タロウは」
(『ウルトラマンレオ』MAC編に続く)