前回の続き。
私がフィンランド語という言語に、ある種のあこがれを感じているのは一冊の本のせい。
それが『フィンランド語は猫の言葉』。
著者の稲垣美晴さんは本の中にもあるが、東京藝大在学中にフィンランドの画家であるアクセリ・ガッレン=カッレラの研究のためヘルシンキ大学に留学。
その後は東海大学で北欧文学を教えたり、フィンランドの絵本などを翻訳など精力的に活動された人で、この『猫の言葉』はヘルシンキ大学時代の留学記にあたる。
これがねえ、たぶん大学生くらいのときに読んだんだけど、ハマったのなんの。
具体的な内容は以前に紹介したけど、もうこれはですねえ、やはりこの書を愛読していたという、ロシア語の黒田龍之助先生による一言に尽きます。
『世界の言語入門』という本の一節。
高校を卒業して進路を決める頃、できることならフィンランド語の専門家になりたいと夢想していた。
そうなのよ、この本を読むとみんなそう思うんだ。
黒田先生はこうも書かれている。
多くの人が目指さない国に留学して、一生懸命に言語を勉強する。その姿に強い憧れを持った。
私が今でも自分のことを「チーム第二外国語」の一員だと自認しているのは、どうもこの『猫』のせいらしい。
「激芬家」(「激しくフィンランドのことをする人」という意味)というパワーワードが心にヒットしたんですよ。
もっとも、当時はフィンランド語などやろうにも、参考書もなければ辞書もなかった。
大学書林の『フィンランド語四週間』くらいで、しかも値段が4500円(!)。
辞書なんてなくて、そういうときは「英・フィン辞典」を使うとかが定跡なんだけど、自分の英語力で使えるとは思えないし、そもそもどこで売ってるの?
京都の丸善とかにあったのかもしれないけど、探す気も起きないし、絶対にバカ高いに決まってるんや!
ちなみに、今調べてみると白水社の『パスポート初級フィンランド語辞典』が定価4,950円(税込)。
日本フィンランド協会の『日本語・フィンランド語辞典』が27,500円(税込)
大学書林の『日本語フィンランド語辞典』が定価34,000円(+税)。
どれも高くて、おやつに食べていた、かっぱえびせん噴くわ!
日本フィンランド協会のは1800ページもあるから、かなりオトク感はありそうだけど……。
昔は第二外国語と言えば「経済的に無理」なケースも多かったなあ。
今はネットで調べればあれこれ出てくるし、各種アプリも充実。
まさに「時は来た」という感じだが、あいさつに簡単な単語など学んだあと、どーんと現れたのがコイツだった。
「talo(家)」という単純な単語が、こんなにも変化する。
それどころか、こんなのもあったり。
ちなみにこれ、「ライコネン」さんという人名の活用表。
よく、ロシア語が人の名前が変化すると言って恐れられているが(「ラスコーリニコフ」「ラスコーリニコワ」みたいな)、どんだけ変化すんねん!
てことは、どーせ他にも名詞も動詞も形容詞も数詞も、なんでもかんでも変化するに決まってるんや!
トランスフォーマーか! フィンランド語の活用表。えげつなすぎる。致死量や。
はあ(ため息)。なるほど、みはるちゃんも本の中で「フィンランド語むっず!」ってボヤくはずや。
まあ、こういうのは千里の道も一歩から。
ここに発動された「ウコンネミ作戦」により今日も今日とて、
「ミナ・オレン、シナ・オレット、ハン・オン……」
嗚呼、「激芬家」への道、果てしなく遠し。