「ちょっとおまえら、オレに特撮の話をさせてくれよ!」
先日、近所の焼き鳥屋で、竹原ピストルさんのような声をあげたのは、不肖この私でした。
ことの発端は、特撮映画『シン・ウルトラマン』についてのこと。
『シン・仮面ライダー』も公開されて、大いに盛り上がっている庵野秀明監督の『シン』シリーズですが、なにかと「うるさ型」な特ヲタな方はいろいろと言いたいことがあるよう。
ということで、今回は以前の『レディ・プレイヤー1』妄想編に続く、ゆかいなオタク話第2弾。
主に40代で、将棋界で言えば「安用寺孝功世代」が中心のメンツなので、いつものごとく、
「若者は置いてけぼり」
といったシロモノになっている、そっとじ物件。
まずは登場人物。
1.ベットウ君
後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。
2.ワカバヤシ君
元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
3.カネダ先輩
SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。
4.私
特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
それでは、張り切ってどうぞ。
「なにか今日はシャロン君が、特撮の話をしたいって?」
「はいはい、こないだようやっと『シン・ウルトラマン』観たそうで。それでしょ?」
「うん、評価が微妙やったから映画館はスルーしてたけど、アマゾンプライムに入ったから観たんよ」
「こん中で観た人、オレと他だれ?」
「(手を上げながら)はい、一応、映画館で」
「ボクは観てません。怪獣とか、そんなに興味ないし」
「で、どうやった?」
「これが、結構楽しめましたよ」
「そうなんや。オレも割と、な」
「へー意外。僕はもっと、ボロクソに言うかと思ってました」
「そりゃ、多少は言いたいことはあるよ。説明セリフ多すぎとか」
「あるのは、あるんスね」
「《あえてやってる》言うたら、なんでもゆるされるわけちゃうぞとか、ウルトラマンが人間を好きになる理由って別にないやんとか」
「わかるわかる。科特隊が何してるんかよくわからんとか、相変わらず庵野は女の趣味が悪いなとか」
「この手の作品で実相寺アングルはもう禁止にしろとか」
「思わせぶりやのに、中身ないのはいつものことやとか」
「基本、オタクへの目配せも多すぎてウンザリやねん」
「どんどん出てくるじゃん」
「ダイジェスト版を継ぎはぎしたみたいで、ホンマにシナリオちゃんと練ってるのとか」
「ラストがご都合主義すぎとか」
「バディとか強調してたけど、特に機能してないやんとか、言いたいことはあるけど、そこそこ楽しめたんよ」
「そこまでまくしたてて、よくポジティブな結論にいきつけたね」
「特撮ファンって、めんどくさい人種なんですよ」
「ツンデレやねん」
「いや、どっちかいうたら、1日に100回くらい電話かけてくるメンヘラ彼女ですわ」
「基本的に、上からなんだね」
「この世界、全員が海原雄山やから」
「これはまあ、《イマイチやで》って、最初にハードルをうんと下げられてたってのは大きい」
「あ、それ、いい観方っスね」
「これが、《なに? 令和に初代ウルトラマンが映画でよみがえる? しかも庵野秀明と樋口真嗣の『シン・ゴジラ』コンビ? 絶対に観に行かな!》」
「《今日この日から、あたらしい特撮の歴史がはじまる(ピシッ)》みたいなテンションで観てたら、全然ちがってたと思うぞ」
「てらさわホークさんとか、そんな感じやったらしいですけどね」
「それは災難や。あれはハズレって聞いといて、ヒマつぶしで気軽に観に行って、《言われてるほどはヒドくないやん》くらいがベストな鑑賞法」
「あとは、これ映画としての評価は60点くらいやねんけど、やっぱ怪獣がたくさん見れたのが、単純にうれしかったね」
「ゴメスとかも出てたしな」
「最初の3分は、ホンマにゴキゲンでしたよ」
「『パシフィック・リム』みたいな、冒頭から大サービス」
「あんな怪獣出てたら、もう日本なんか住まれへんけどな」
「だから、そこはええねんけど、ストーリーとか追うといろいろと言いたいことが出てきて……」
「でも、それ言うたら『パシフィック・リム』かてスカスカやないですか」
「まあ、あれも偏差値でいうたら35くらい」
「オレが小4の時に書いた怪獣ドラマのシナリオみたいな。でも、あれはええのよ」
「なんでですのん」
「うん、言いたいことはわかるよ」
「『パシフィック・リム』はアホでええのよ。ギレルモ、全然ゆるせる」
「でも、『シン・ウルトラマン』はダメなんだ」
「アカンねえ、なんでやろ。ギレルモはマジの【少年の心】で創ってるから、かわいいのかも」
「『シン・ウルトラマン』はオールドファン向けっぽいもんな。もう大人の俺らやから、そう思うだけかもわからんけど」
「その閉じた感じがイヤなんかなー。マンガ版の『20世紀少年』とかもそうやったけど」
「『20世紀少年』は好きだけど、言いたいことはわからなくも……」
「こっちはイマイチ共感しきれてないのに、なんかその人の思想とか美意識を語られてるときの気まずさというか……」
「あれ? コイツのいう「ロック」とか「ノスタルジー」があんまり入ってけーへんけど、メッチャうっとり語ってはる……」
「なんか、『そうでっか……』としか言いようない、みたいな」
「ちょっと帰りたいなーってなってる状態の、先輩の飲み会みたいな。でも、頭空っぽにして、怪獣だけ見たら楽しいですよ」
「【巨大長澤まさみ】も観れるしな」
「ねー、そういう個別のあれこれはいいんやけど……」
「そもそも、シャロン先輩は庵野演出が合ってないという問題が」
「エヴァもテレビシリーズしか見てないしねえ」
「『パシフィック・リム』の底抜けはいいけど、『シン・ウルトラマン』のそれはアカン」
「アカン! でも、理由はよくわからん」
「でも、悪口は言うと」
「悪口ちゃうねん。これは【愛】やから!」
「愛っていうたらなんでもゆるされると思うのは、『サイキック青年団』と桂南光のお家芸や」
「今なら、鬼越トマホーク」
「やっぱ、悪口ですやん!」
(続く)