「夢の対決いうたら、やっぱ『ゴジラ対ガメラ』やろ」。
近所の居酒屋でそんなことを言いだしたのは、特撮マニアのナカツ君である。
「夢の対決」といえば、男子の酔っ払いトークで鉄板のテーマ。
水島新司先生『大甲子園』の「明訓対青田」や、『プラモ狂四郎』の「ガンダム対ドイツ軍」などいろいろあるが、特撮の世界ではこれであろう。
日本が誇る二大怪獣。ゴジラとガメラのどちらが強いか、男の子なら一度は考えたことがあるはず。ナカツ君と同様、大の特撮ファンの私としては大いに気になるところだ。
ただ、この二匹のブッキングというのは大御所ゆえに、なにかとややこしいところもある。
かつて竹内義和さんが、その著作の中で二匹を戦わせた末ゴジラを勝たせたら、大映からクレームが来たというのは有名な話。
それくらいにスターのあつかいは難しいのだが、ゴジラ先生自体は意外と『流星人間ゾーン』などヨゴレ仕事も請け負っているので、条件次第では受けてくれるかも。あとはガメラ師匠の出方待ちだ。
怪獣の話となれば勢いがつくというもので、次に手を挙げたのは私。
「それやったら、プルガサリ対ヤンガリーもあるな」
『怪獣大決戦ヤンガリー』とは、韓国制作の怪獣映画。
怪獣といえば日本リスペクトということか、テーマソングを大槻ケンヂさんが歌っており、その歌詞が荒唐無稽な脚本や演出に対するつっこみになっているという、前代未聞の仕掛けが施されている。
「しいていえば、《怪獣類》ですか」
「私は命を二つ持ってきた」
「ギャオッと鳴くからギャオスだよ」
などなど特撮の世界には「名セリフ」と称されるものがあるが、私としてはそこに『ヤンガリー』の、
「私の妻のように恐ろしい」
を加えたいもの。涙ぐむ、既婚男子特撮ファンの顔が思い浮かぶようだ。
曲の方も、ピアニスト三柴理さんの轟音ピアノが炸裂している名曲で、一聴の価値あり。韓流ブームといえばヨン様より、これと『グエムル 漢江の怪物』であろう。
一方の『プルガサリ』は北朝鮮で作られた怪獣映画。制作、脚本、監督、なんとあの偉大なる将軍様金正日。
その内容というのが、民衆を苦しめる悪の独裁者を、正義の怪獣プルガサリがやっつけて、平和が戻っためでたしめでたし。
……のはずが、正義の怪獣のはずのプルガサリは鉄を食べてどんどん巨大化していき、いつの間にか手に負えないほどでかくなる。
このままでは、心優しきプルガサリは飢えた民たちの食料を奪わなければ、生きていけなくなる。
かといって、恩人であるプルガサリを殺すわけにはいかない。そしてついには……。
……という、まあ何がどうということはないが、お前が言うなというか、
「で、その独裁者って、だれのこと?」
とのツッコミが押さえきれない映画であったが、意外や出来は『ヤンガリー』よりいい。
おしむらくは将軍様制作、監督、だけで「主演」が抜けていたこと。
ぜひ続編ではフラッシュビームで巨大化し、改造プルガサリと戦ってほしいものである。
この話は非常に盛り上がり、
「そこにタイ代表としてハヌマーンを加えたらどうか」
「レイ・ハリーハウゼンに敬意を表してリドサウルスをぜひ」
「イギリスからはゴルゴで決まりでしょ」
と話はワールドワイドに。
ならば怪獣大国日本からはゴモラやレッドキングではインパクトがないので、ジェットジャガー、ギララ、カメーバといったマニアックな連中を。
さらにはリプロス、イヤミラー、シビラス星人といった、100人に聞いたら150人はわからない怪獣などを参戦させるのはどうか。
巨大フジ隊員は怪獣に入れてもいいのか。それなら『さくや妖怪伝』に出てきた巨大松坂慶子もセーフのはずだ。
また、「さっき《改造プルガサリ》という単語が出たが、オレは《再生プルガサリ》がいい」などとだれかが言い出し、そこからも、
《プルガサリ二代目》
《プルガサリjr》
《にせプルガサリ》
など、表記をどうするかでもめにもめ、さながら議論は実相寺昭雄監督、幻の脚本『怪獣35+宇宙人15』ならぬ『マイナー怪獣35』という話になり、トークはさらに白熱した。
そうして熱く《夢》について友たちと語りあいながら、今日のネタはただでさえ女子ウケの悪い当店なのに、さらにガン無視されるんだろうなあ、なんて思いもよぎるけど、私は楽しかったので、特に問題はないものと思われる。
☆おまけ『怪獣大決戦ヤンガリー』は→こちらから
★おまけ2『プルガサリ』は→こちらから