「勝負の世界は、いい人だと思われたら終わり」 グザビエ・マリスvsロジャー・フェデラー 2012年 ウィンブルドン4回戦

2021年11月06日 | テニス

 前回(→こちら)に続いて、ベルギーのレジェンド選手である、グザビエマリスについて。

 今年のアントワープ大会で、教え子であるロイド・ハリスと組んでダブルスに出場しているのだが、現役時代のマリスでおぼえているのが、2012年ウィンブルドン4回戦。

 対戦するのは、なにを隠そうロジャーフェデラー

 言わずと知れた、テニス界の王者であり、世界ナンバーワンの座に長く君臨。

 グランドスラムのタイトルも、数えきれないほど獲得するのみならず、このウィンブルドンでも、ほとんど負けたところを見たことがないという、まさに

 「ウィンブルドンの主」

 ともいえる存在でもあるのだ。

 トップシードと、力のあるベテランという、4回戦くらいらしい、実に通好みなカードであった。

 とはいえ、勝敗予想はと言えば、これはもう圧倒的にフェデラー有利

 このころのフェデラーは全盛期こそ、いったん過ぎた印象こそあるが(まあ、その後何度もよみがえるんですけど)、それでもことには変わりない。

 ましてやのコートとなれば、これはもうフェデラーの庭のようなもので、その意味でも格が違うわけだ。

 ところがこの試合、マリスが実にいいテニスを見せる。

 この一番に照準を合わせてきたのであろう、体がよく動き、またチャレンジャーという気楽な立場もあったせいか、のびのびとしたプレーを披露。

 これにはフェデラーも予想外だったのか、ファーストセットは明らかに、マリスのペースで進む。

 試合自体は競っているものの、勢い流れは、マリスにある感じなのだ。

 これにはちょっと、こちらもすわり直すことになる。

 おいおい、マリス、やるやん

 このテニスが最後まで続けば、これはかなり、いいゲームになりそうな。

 フェデラー順当勝ちと思いきや、こいつはおもしろくなってきたぞ、とこちらもエリを正すと、ここで予想外のアクシデントが起きて、さらに風はマリスに吹きはじめることとなる。

 フェデラーのフォアハンドが、いきなり、おかしくなったのだ。

 あらゆるショットを完璧にこなし、史上最強のオールラウンドプレーヤーと呼ばれるロジャー・フェデラー。

 中でも、その強力な武器は、フォアハンドの強打である。

 特に、甘いボールを回りこんでねらいを定めたときには、逆クロスにもダウンラインにも、またアングルにも打てる自在さ。

 この年の決勝で敗れた、アンディーマレーも、これに大きなプレッシャーをかけられたものだ。

 それが突然に、まったく機能しなくなったのである。

 具体的にいえば、振り切れなくなった。

 どこか故障があったのであろう、大きなバックスイングが取れなくなった彼のフォアは、腕を固定して、来た球にその面を当てて軽く返すだけしかできない。

 よく初心者の方がやる、「羽子板打ち」になっていたのだ。

 のちに、それがの違和感であったことをフェデラーは記者会見で明かしたが、最大の武器が、まったく封じられてしまうことになった。

 これで状況は、ますますマリスに有利になった。

 ただでさえ、あつらえたように絶好調なのに、相手が故障ときたもので、それもフォアハンドという、テニスでサービスの次に重要なショットが打てないのだ。

 こりゃ、大番狂わせあるぞ。

 ますます、目がはなせなくなったが、どっこい、この試合はここから、実に意外な展開を見せはじめることになるのだった。

 

 (続く→こちら

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ベルギーのX‐Man グザビ... | トップ | 王者の死んだふり グザビエ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。