前回(→こちら)に続いて、『秘伝 将棋無双 詰将棋の聖典「詰むや詰まざるや」に挑戦!』(湯川博士著 門脇芳雄監修)について。
江戸時代の名人である三代・伊藤宗看の創った百題の図式集『将棋無双』。
詰将棋ファンなら、だれしもが知っているが、一般には、いやさ市井の将棋ファンにも、その実態は知られていない。
だが、この『秘伝 将棋無双』を読めば、その奥深さ、そして何百年も前に作られたとは思えないほどの、おそろしいほどのレベルの高さを、まざまざと見せつけられることとなる。
以下ネタバレになるんで、『将棋無双』を自力で解いてみたい人(いるのかな?)は飛ばしてほしいが、各作品の手順がきれいなだけでなく、
「打ち歩詰め回避」
「中合い」
「ならずもの」
「馬鋸・竜鋸」
なんていう、ハイレベルな詰将棋に出てくるトリッキーな筋が出てくるところからが、この作品集の本領。
たとえば、こんな問題で、これは「将棋無双 第21番」
初手から、▲72銀、△同玉、▲52竜、△62歩、▲73歩成と自然に追うと、△81玉、▲91角成、△同玉、▲82銀、△92玉、▲93歩で打ち歩詰。
これでダメなんだけど、ここで詰将棋独特のトリックが出る。
打ち歩詰め回避には、「あえて玉の逃げ道を作る不成」が手筋。
▲52竜、△62歩合に、▲73歩不成がある!
実戦では、まず間違いなく出てこない形だが、なんとこれで詰みなのだ。
以下、△81玉、▲91角成、△同玉、▲82銀、△92玉、▲93歩。
▲73にいるのが、と金でないため、ここで△82玉とできるのが、歩不成の効果。
△82玉、▲62竜、△93玉、▲94歩、△同玉、▲64竜、△93玉、▲94竜、△同玉、▲84金まで。
これを見たとき、まさにのけぞりましたよ。
「歩不成」なんて、どう見たってただの誤植にしか見えない。
それが唯一無二の正解なんだから、ちょっと常軌を逸している。
なんというか、あきれてものが言えません。すごい作品だ。
(「歩不成2連発」編に続く→こちら)