前回(→こちら)に続いて、電子書籍セール獲物自慢。
河出書房の次は、中央公論社。
ざっと見てたら、なぜか小島剛一先生の『トルコのもう一つの顔』が爆売れ中。
なんじゃらほいと調べてみたら、なんか、今すっかり売れっ子な、ひろゆきさんと論争してたらしい。
私はケンカが苦手なので、この手のやりとりはスルーすることが多いが、これによって知る人ぞ知る名著が、たくさんの人に読まれるのは、うれしいかぎり。
『トルコの』はトルコ語や、トルコにおける、少数民族の言語学的フィールドワークを題材にしたノンフィクション。
瀬野反人『ヘテロゲニア リンギスティコ』とか、あのノリのオモシロ本なので、買って損なし。
あと、『旅行人』から出ている続編もそうだけど、「冒険小説」としても傑作なので、ぜひ一読を(内容については→こちら)。
では、今回の自慢リストに行きましょう。
☆池内紀『出ふるさと記』
ドイツ文学者である池内先生と言えば、
フリードリヒ・フーケー『水妖記』
ショーペンハウエル『読書について』
E・T・ホフマン『黄金の壺』
ハインリヒ・ハイネ『精霊物語』
らとともに、私をドイツ文学科に進学させた戦犯……精神的恩人。
出ている本はマストバイなので、『ドイツ街から街へ』『ひとり旅は楽し』『悪魔の話』『日本風景論』など、全部買う。
『モーツァルトの息子』『遊園地の木馬』『ぼくのドイツ文学講義』あたりも電書にならんかな。
☆ 野崎昭弘『詭弁論理学』
「世界は詭弁で動いている」
と言いたくなるくらい、世の中にはアヤシゲな理屈がまかり通っている。
王貞治さんの、
「努力はかならず報われる。報われない努力は、それはまだ努力と呼べないのではないか」
なんか、その典型。
悪気はないんだろうけど、メチャクチャずるい理屈だよね、これって。
将棋の順位戦が、あまりに風通しが悪いという話になると、
「結局は、自分が勝てばいい」
とか言う人とか。
いや、それどっちも、論点ずらしてるだけだから。
専門誌である『将棋世界』に、堂々とこの意見が載っていたときには、心底ガッカリきたもの。てか、マジで頭きたなあ。
こういう、「欺瞞」「詭弁」を、いかにも「ドーダ」「オレ、今いいこと言った!」なノリでカマすのって、どうなのよ?
こういうのに「ん?」と思えるよう、この本を読んでおくのが、よいでしょう。
でも、世の中には「詭弁」を「論理的」と思っている人も多く、そういう人が上に立っていたりするから(「結果を出してから言え」とかいう人ですね)、ホント問題だ。
☆本村凌二『馬の世界史』
ローマ帝国関係の本が、おもしろかったので購入。
馬をフックに世界史を語る、という切り口が、すこぶる興味深い。
☆ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』
コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません』の影響で。
ちなみにコニー・ウィリスも、こないだのハヤカワセールで一通りそろえた。
分厚い本は、電子書籍が圧倒的に便利だけど、果たして読むんだろうか。
ハンヌ・ライアニエミのフィンランドSF『量子怪盗』とか、買ってるけど、全然手が出る様子がないぞ。大丈夫か、自分?
☆宇月原晴明『安徳天皇漂海記 』
日本の歴史ものは、戦国とか幕末とか苦手だけど、中世ものは好きかも。
文体が格調高く、とにかく雰囲気が出ている。
あまり歴史的に、描かれることのない、「文化系」将軍の源実朝をフィーチャーしてくれてるのも良い。
☆藤沢道郎『物語 イタリアの歴史』『物語 イタリアの歴史Ⅱ』
中公新書「物語」シリーズ随一の名著。絶対、手元に置いておきたい2冊。
あとは塩野七生『海の都の物語』と、モンタネッリ『ローマの歴史』『ルネッサンスの歴史』が、私のイタリア知識のベース。
☆鹿島茂『パリの日本人』『パリの異邦人』
読みやすく、エスプリな気分も味わえて、フランス文化の勉強にもなる鹿島先生の本は、だれにでもすすめられる高品質。
どれもおもしろいけど、最高なのは『パリ・世紀末パノラマ館―エッフェル塔からチョコレートまで』で紹介された、シャルル・フーリエ先生の思想。
「男女32人でリズムを合わせて、オーケストラのようなセックスをしよう!」
とか、超知的なエロ妄想が、ぶっ飛んでます(その詳細は→こちら)。
元気だなあ、あやかりたいもんだ。
あと、先月は月替わりセールも充実していて、
イブン・ジュバイル『イブン・ジュバイルの旅行記』
プラノ・カルピニ&ルブルック『中央アジア・蒙古旅行記』
とかも買っちゃったよ。旅行記だと、なんでも買っちゃうなあ。
充実した買い物だったけど、財布はすっからかん。
しばらくは、塩をなめて暮らすことになるが、いっぱい本が買えたから、私は幸せなのだ。