タイトル戦にはスーツか和服か 永瀬拓矢vs藤井聡太 2023年 第71期王座戦

2023年09月21日 | 将棋・雑談

 「あれ? 永瀬王座、いつもと違いますやん」


 
 なんてモニターの前で、すっとんきょうな声をあげたのは、王座戦を観戦しているときであった。
 
 今期の王座戦では挑戦者である藤井聡太七冠が、空前絶後の大記録「八冠王」をかけて戦っているのは、各所でニュースになっている。
 
 その一方で、迎え撃つ永瀬拓矢王座もまた、王座獲得連続5期の「名誉王座」をねらっており、その話題性からして「藤井ブーム」の、いやさもっといえば、令和初期の将棋史的にも、ひとつの大きな山場を迎えているのであった。
 
 その期待通り、第1局、第2局とも熱戦ですばらしく、できたらフルセットまで行ってほしいなあと、今からワクワクしている次第。
 
 そんな中、どちらかが長考中、対局場の風景をボーっと見ているときに、フト違和感を感じたわけなのだ。
 
 なんだか、「間違い探し」の問題を見せられているような、不思議な感じだったが、しばらくして「あー」となった。
 
 そう、永瀬王座がこのシリーズは、和服で対局しているのである。
 
 永瀬と言えば、個性派の多い棋士の中でも、また飛びぬけてキャラの立った人。
 
 「受けつぶし」を得意としたSっ気丸出しの棋風に、同業者が腰を抜かすストイックな勉強量など、その例は枚挙にいとまがないが、中でも、
 
 
 「タイトル戦でも和服でなくスーツ姿で通す」
 
 
 というのが話題を呼んでいたのだ。
 
 というと将棋を知らない人からは、
 
 
 「え? 将棋って和服着用が普通じゃないの?」
 
 
 という声もあるかもしれないが、棋士は普段の対局はほぼスーツである。
 
 デビュー当時の藤井七冠や中村太地八段学生服や、阿部隆九段が一時期好んでいた作務衣、また気合いの入った順位戦などでは和服を着るベテランもいるが、これは例外中の例外
 
 タイトル戦でも基本的には服装は自由であり、かつては「ひふみん」こと加藤一二三九段も和服を好まず、スーツで対局していた。
 
 42歳で悲願の名人を獲得したときも、和服の中原誠名人とちがい、やはりスーツで通していたから、その徹底ぶりはいかにも加藤一二三っぽいではないか。

 

 

 「加藤名人」誕生のときもスーツ姿。


 
 永瀬王座もまたその系譜にあり、たぶん最初の方は和服を着てたと思うんだけど(途中で着替えたりとかした時期もあったかな)、最近ではすっかり洋装がトレードマークになっていたものだった。
 
 ただ、やはり将棋のタイトル戦では、ほとんどの人が和服を着るために、そこに違和感を感じる人はいるよう。
 
 これに関しては、私はどっちでもいいというか、別に和服だろうが、スーツだろうがドラッケンフュアー・シュヴァルベンストライクだろうが、なんでもいい派である。
 
 もともと「○○は△△でなければならない」みたいな決めつけは好きでないし、そもそも、そういったものの起源をたどると、案外その根拠もいい加減だったりする。
 
 なんで「別にいいじゃん」って感じで、囲碁なんかもみんなスーツだし、そんなに気にならないのだ。
 
 ルールで決まってるならまだしも(今回の王座戦はそうしたみたいですね)、「同調圧力」でってのは、なんかヤだしなあ。
 
 こんなもん、なんでもOK。ポロシャツ短パンジーンズサイケコスプレ全身タトゥーでも好きにやればいい。

 そういえば昔、竜王戦挑戦者決定戦で盤外戦術(?)なのかどうなのか、若き日の先崎学六段がチノパンや、Tシャツにジーパンという姿で対局に挑んだことがあった。

 対して佐藤康光七段が1勝1敗の第3局では堂々の和服で受けて立つとか、バチバチにやり合っていたこともあったっけ。

 私は結構歴の長い「ガチ勢」にもかかわらず、
 
 
 「2日制とか、もう時代に合ってないし、やめてもいいんでね?」

 
 
 とか、かなりテキトーなタイプなので、この手のテーマでは「リアルガチ勢」の人には怒られがちですが、ハイ。
 
 ただ、ネット中継の充実した今、海外へのアピールという意味では、和服はかなりの武器にはなりそう。
 
 なのでまあ、原則としては自由を選んでいいとして、本人が「どうしてもイヤ」という以外は、基本的には和服でいいとも思う。

 このあたり、永瀬王座の「イヤ度」はどれくらいだったんだろう。
 
 気にしてないならいいけど、「ホントはスゴイ嫌」なのに着さされているんだったら、大きな記録もかかってるのに、ちょっと気の毒かもなーとか思ったり。
 

 

 (島朗の「アルマーニで竜王戦」編に続く)

 

 


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2 コメント

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和服着用について (Shin)
2023-09-22 12:44:12
いつも大変楽しく拝読しております。
和服の着用は対局規定の変更によるもののようですが(以下ご参考)、
https://news.yahoo.co.jp/articles/aa4723fc6c5704beaa3f5a9f3eb6987e0503e1e2
単に羽生会長が古典志向なだけなのか、藤井八冠誕生への多少なりともの「援護射撃」なのかはわからないですね。
返信する
Unknown (シャロン)
2023-09-22 23:22:37
Shinさんコメントありがとうございます。

なんで急に規定ができたのかもわからないですけど、連盟やスポンサーとしては将棋の「伝統性」を普及の看板にしていることが多いので、注目が集まっている今、できればそっちに寄せたいんでしょうね。

永瀬王座からすると、ちょっと不運だったかもしれません。
返信する

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