「こいつはナーメテーターの仕業じゃないか……」。
そうテレビの前でつぶやいてしまったのは、『ガールズ&パンツァー 劇場版』を見終えたときのことであった。
「ナーメテーター」とは、人気ラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(略称「タマフル」)内の、リスナー参加型企画のこと。
たとえば『るろうに剣心』が映画化と聞けば、
「はあ? どうせ漫画原作やいうことで、作る方もハナから、やっつけ仕事のつもりやろ?」
『ドラゴンボール』だ『キン肉マン』だ『北斗の拳』だな《ジャンプ黄金期世代》としては、まずはそんな決めつけから入ることとなる。
「そもそも最近の邦画なんて、テレビドラマに毛ぇ生えたようなもんやし」
わかりやすい偏見に突入し、しまいには
「もしおもしろかったら、落語みたいに死人背負って、カンカン踊りでも踊ったるわ!」
なんてえらそうにタンカ切って、いざ観てみたら、
「アクションとか、悪くないやん……」
デスダンスに興じながら、そう己の不明を恥じたりするという、
「完全になめてたら実は……」
な告白するというものだ。
まあ、恥ずかしいといえば恥ずかしいが、偏見に邪魔されて、接することのなかったジャンルの楽しさを知れたという意味では、決して悪いことだけではないこのナーメテーター。
今回まさに「ヤツが帰ってきた……」と呆然となったのが、『ガルパン劇場版』だ。
私はもともとアニメにうとく、美少女文化や声優にも興味がない。
なもんで、この映画もサクッとスルーするはずだったが、アニメファンである友人シブタニ君から、
「そんなシャロン君でも、このガルパンはいけるはず。絶対ハマるから、だまされたと思って」
なんて激プッシュされたので、しぶしぶ観てみることに。
大丈夫やろうなあ。私は「萌え」には素人なのだ。
それに、ガルパンも特撮はええけどドラマ部分がスカタンって聞いたことあるし……。
そりゃ、二次元美少女がかわいいのはわかるけど、ああいうキャラが出ると照れくさくて、内容が頭に入ってけえへんねんなあ。
なんて、完全に決めつけて油断しまくっていたが、開始早々に飛び起きて、正座で鑑賞する羽目になった。
おおおおお! えー!? マジでか?
これってすごくない?
呆然としながら、さらに前半の市街戦を鑑賞していて、完全にシャッポを脱いだのである。
なんやこれー! すんげー! おんもしれー!
まさにこの瞬間、あのテーマソングが流れてきましたね。
ダダンダッダダン、ダダンダッダダン。ナーメテーター出現!
いやマジで、完全にナメてました。もう、そっからは釘付けです。
なにがすごいって、アクションだから言葉にするのは難しんだけど、とにかく戦車がド迫力。
戦車、戦車、また戦車。
それがもうお腹いっぱい堪能できる。ものすごい質と量。
これだけで、もう楽しいんだなあ。
私はミリタリーマニアではないけど、世界史は好きである。
映画ファンだから戦争映画の影響で、一応各国の戦車は一通り、見れば名前くらいも、なんとなくわかる。
それが、実際の戦争ドキュメンタリーさながらに、動きまくる華やかさよ。
戦車の「重さ」と「意外な速さ」の表現なんかも、ちゃんとできてて、
「そうそう、『戦争のはらわた』のT―34って、そんな感じで障害物を乗り越えてた!」
なんて、もうホクホク顔で見られる。『パンツァーリート』とか、かかる曲もいちいち良い。
もう大迫力の戦車戦は、観ていて全然飽きない。
最初はノイズになるかもと懸念した女の子たちも、まあやはり、ちょっとこっぱずかしいけど、中身がそれを超えてくるから良し。
人気の軽駆逐戦車ヘッツァーは大活躍だし、カール自走臼砲は出て来るしと、もうサービス満点。
あと、「グスタフ」でも「ドーラ」でもなく「カール」というチョイスは、やっぱり『プラモ狂四郎』を意識しているのだろうか。
そんな、いい意味で裏切られたガルパン劇場版。
ミリタリーマニアも、私のようなライトな戦車映画ファンも、カーアクションとして見れば、たぶん普通に映画としても楽しめる、なかなかに完成度の高い作品でした。
いやあ、堪能しました。友人とワイワイ言いながら観ると、もっと楽しいかもしれない。
応援上映とかやってたら、ぜひ行きたいよ、マジで。
ブラピの『フューリー』で、
「本物のティーガーかよ、おお!」
とか興奮したり、宮崎駿は、
「千尋とかポニョとかどうでもいいから、『泥まみれの虎』を映画化してよ」
とか思ってたけど、ガルパン観て、
「もうこれでいいじゃん」
って気がしたなあ。すごいナーメテーターの出現でした。ありがとうございます。