「女性棋士」誕生の新しい風 里見香奈vs高崎一生 2019年 NHK杯戦

2022年09月21日 | 女流棋士

 「ホッとする瞬間」というのがステキだと思う。

 「女性のどんなところに、《いいな》となるか」

 というのは男同士での酔談に、よく出るテーマである。

 寝顔がカワイイという人もいれば、石鹸香水のにおいにポーっとなったり、眼鏡美人や、CAさんに看護師さんの制服など「装備」に惹かれるパターンもある。

 なんて、男子にはそれぞれこだわりがあるわけだが、これが私の場合はこないだも言った、

 「女の子が、安堵の表情を浮かべる瞬間」

 先日は、スランプを乗り越えた大坂なおみ選手が見せた

 

 「よかったぁ……」

 

 とホッとした姿にキュンときた話をしたが、他にも色々とあるもの。

 

 たとえば2019年NHK杯将棋トーナメント。高崎一生六段里見香奈女流五冠との一戦。

 相振り飛車から、むかえた中盤戦。

 

 

 

 

 高崎が、をからめて後手玉に殺到しようというところ。

 飛車に、まで目一杯使う、矢倉戦のような攻めだが、これがなかなかにウルサイ。

 単純な△83銀はいかにも薄くて、▲84銀で簡単にツブレ

 △83角のような受けでも、▲84銀(▲84飛もありそう)と出て、△65角▲同桂△53銀当たりで幸便と、端のアヤもあって、なんのかの手にされそう。

 こうなると、玉から離れた金銀が哀しいことになってしまうが、ここで里見は強手を見せて、見事にしのいでしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 △74角と打ち返すのが、里見の力を見せた強防。

 ▲同銀、△同歩に▲同角は、△83銀打とはじき返して崩れない。

 高崎は▲74同銀、△同歩に▲75歩と突くが、△95歩と取って、▲74歩△83香と空間を生めて、先手の攻めは切れてしまった。

 

 

 

 

 以下、リードを奪った里見が、丁寧な指しまわしでまとめて制勝

 スポーツの試合などと違って、将棋の世界ではこういうとき、歓声を上げたり、「よっしゃ!」とガッツポーズしたりする姿を見ることはない。

 激戦の熱も冷めやらないうえ、勝っても露骨には喜ばないのが、この業界の暗黙マナー

 だから、最初は緊張にこわばっていた里見だったが、少し感想戦のやり取りをしているうちに笑顔がこぼれてきた。

 これがまた、とってもステキだったものだ。

 男性棋士を、それも高崎六段のような実力者をNHK杯という大舞台で破るということは、やはり女流棋士にとって大きな仕事である。

 それゆえに闘志も並ではなかったろうが、そこを乗り越えたときに見せた、里見さんの安堵の表情にシビれた。

 なんか、いいなあ。ため息出ちゃうよ。

 現在、里見さんはプロ編入試験の真っ最中。

 彼女の実力実績をもってすれば、充分すぎるほど合格の可能性はあるが、相手もバリバリの新四段たちであるし、なによりプレッシャーはハンパないほど、かかっていることだろう。

 結果がどう出るかは神のみぞ知るで、私はただ彼女が力を出し切れること、そして、まだまだ閉鎖的な将棋界に新しい風を吹かせてくれるよう、静かに祈るのみである。

 

 


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