佐藤康光はアイドルである。
ということで、前回(→こちら)はコンバットRECさんの提唱する「ほつれ」理論から、そんな意見を投じてみた。
佐藤康光九段といえば、永世棋聖の称号を持ち、名人獲得の経験もある大棋士だが、その独特ともいえる戦型選択や、そこをつっこまれると、
「自分は破天荒でなく、論理的である」
などと大反論するなど、大変ゆかい……信念の強い人なのである。
その部分が「ほつれ」として魅力を感じるわけだが、そこにもうひとつ、RECさんによると、アイドルには、
「やらされてる感」
これが大事だと。
その点でも、佐藤九段は本人的には不本意ながら、どこか
「イジられキャラ」
としても人気であり、そこが「やらされている」雰囲気が濃厚なのである。
そこを、裏で糸を引いているのが、先崎学九段。
先チャンと会長といえば、もともとプライベートでも仲がいいが(だからこそ負けられない熱戦は→こちら)、そもそも佐藤康光を、最初に雑にあつかったA級戦犯こそが、この人なのだ。
『将棋世界』や『週刊文春』のエッセイで、本当によく登場しては、その天然、かつムキになりやすいキャラで、楽しい話題を振りまく。
麻雀やチンチロリンをやれば、大負けして頭をかかえ、インタビューでモテていることを聞かれて、
「まあ、先崎よりは、という程度で、郷田さんとか森内さんにはとても及ばないです」
「先チャンも、このお腹を、もう少しお引っ込めになられると、おモテになると思いますよ」
逆襲すると、しっかりエッセイでネタにされたうえに(「書かないでください!」と懇願されたそう。かわいすぎる)、
「モテ光君」
なるニックネームをつけられ倍返し。
一番ゆかいなのは、名人戦でのエピソード。
谷川浩司九段が「十七世名人」になったシリーズの第1局で、ちょっとした事件が起こったのだが(その詳細は→こちら)、その帰り道。
釈然としないまま、先チャンを連れて車で帰宅途中、運の悪いことに交通違反でキップを切られてしまう。
そこでふるっているのが、パトカーに呼び止められたとき、免許の点数を心配するモテ……佐藤八段は、
「えっ免停って24点じゃないんですか」
それは持将棋や!
これにはさすがの先チャンも、
「なんで車乗らん俺が教えなければいけないのだろうか」
あきれまくりで、もう大爆笑。
さらに、みっくん……佐藤八段は書類にサインを書かされるも、それが色紙の字のような達筆ゆえ、警官に、
「お宅の字、康光ってどうしても読めないんだけど、もう一度書いてくれない」
当然、助手席で悪友は腹をかかえている。
果ては、
「だいたいだな、先崎が連盟に居るからいけないんだ。君の顔を見たのが敗着だ」
「いやもっといけないのは、名人戦だ。羽生君が金を取ってくれれば、俺は連盟になんてこないですんだんだ」
「谷川さんも谷川さんだ、なんで銀を打ったんだ。お陰でヒドイ目にあった」
捕まったことを、メチャクチャにボヤきまくりで、とどめには
「それに、酒も飲めない。これでまた捕まったら阿呆すぎます」
それだけキレまくりながらも、ちゃんと冷静な判断ができているところが、またおかしいのだ。マジメか!
やはりこれこそが、「萌え」なのである。SとMの関係だ。
会長が、イジられていることに、ずっと釈然としてないところが、たまらない。
やはりこういうのは、「取りに行く」と冷めるのだ。
この不本意なのに「やらされてる」感じ。
まさにRECさんの言う「アイドル」ではないか。
これは決しておチャラけているのではなく、RECさんはこの定義から、格闘家と戦う(戦わされる)人食い熊すら「アイドル」と位置付けている。
なら、プロ棋士がアイドルでもおかしくないわけで、私はここに堂々と、
「佐藤康光はアイドルである」
と宣言したい。
テレビやネットの解説で、
「あれ? おかしいなあ。私の予想手は、いつも全然当たらないんですよ」
首をかしげる会長は、ただの萌えキャラです。
★おまけ コンバットRECさんによる「アイドルとしての王貞治」は→こちら
☆若手時代の佐藤と羽生善治の熱戦は→こちら