NGT48北原里英の新規ファンに『映画秘宝』のことをたずねられる その2

2017年01月04日 | オタク・サブカル
 前回(→こちら)の続き。

 昨年末、NGT48にハマって、彼女らの映像とともに充実した時をすごした後輩クニジマ君だが、推しであるリーダー北原里英さんの、

 「きたりえの部屋で『映画秘宝』映りこみ事件」
 
 を知って大ショック。新年会で映画好きの私をつかまえて、

 「『映画秘宝』ってどんな雑誌なのか、教えてください!」。

 もう、胸倉をつかまんばかりの勢いで質問してきたのだ。

 いやまあ、『映画秘宝』は知ってるし、創刊者であり「炎上」の首謀者でもある町山智浩さんのファンでもあるから、教えてあげなくもないどころか、著書を貸してもいい。

 けどまあ、たかがアイドルくらいでそんなムキにならんでも……。

 というのは、「アイドルに彼氏が?」疑惑にとりつかれた男子に言っても意味がないのは、その世界にさほどくわしくはない私でも理解はできる。

 そりゃあ、気にするなというほうが無理だ。まだファンになって一月程度となれば、なおさらショックだろう。

 「知らんがな」といいたいのはやまやまだが、『ノブナガ』に出ていた北原さんもかわいかったから、多少はこの話につきあってもよかろう。

 ということで、『映画秘宝』とはどんな雑誌なのかといえば、まあ一言で言えば、

 「クンフーとゾンビとフリークスでできてる映画雑誌」

 クンフーとブルース・リーといえばボンクラ少年のアイコン、ゾンビといえばサブカルの象徴、そしてフリークスはカルトへの迷い道。

 だいたい、この3つを基礎としています。映画版『桐島、部活やめるってよ』で、神木隆之介君が、

 「股間にドリルをつけた男が、愛する女をそれで引き裂いて犯す」

 という映画を観ているシーンがありますけど、(塚本晋也監督『鉄男』という作品)、まさに「ああいう映画」を取り上げる雑誌。

 というか、『桐島』の中で神木君が愛読しているのが、まさに『秘宝』というシーンがありましたね。

 ボンクラ男子のバイブルだけど、運動部のイケてる男子に踏みつけられるという。

 まあ、映画といえば、ひまつぶしか彼女とのデートアイテムと認識している層には、まったく必要とされない雑誌です。

 『ROOKIES -卒業-』や『ALWAYS 三丁目の夕日』で感動するよりも、大槻ケンヂさんのように『電送人間』を見て、

 「ああやって醜いまま死んでいく主人公のように、オレも一生誰からも愛されずに朽ち果てていくのだ」

 薄汚い名画座の暗闇でオイオイ泣くような人専用。

 自主映画を制作していることでも知られる乙一さんなんか、「せつなさの達人」なんていわれて、なんだかさわやかなイメージもあるけど、本読んだかぎりでは明らかに「秘宝寄り」の人。

 たしかに、モテるタイプの北原さんからはイメージしにくい。

 町山さんいわく、

 「僕が編集してた時代、読者の99、9%は男だったよ!」

 とのことだし、そりゃ、「男の影響やろ」といいたくなる気持ちもわかりますわな。

 ただ、ここで問題なのは、「そういう雑誌や」といっても、なかなか素人さんにはイメージが伝わりにくいこと。

 そらそうであろう。映画といえば、デートで見る邦画か、テレビでジブリアニメくらいしか馴染みのない人に、ヤコペッティや『マタンゴ』を例にあげて説明しても、なんのこっちゃであろう。

 そこで、『映画秘宝』の本質を一発で理解できるフレーズかたとえ話でもないかとバックナンバーをひもといてみると、ありました。ボンクラ映画雑誌のキモとも言える記事が。

 それは読者投稿欄。

 雑誌の読者層をさぐるには、ここが一番わかりやすいわけで、そこにこんな投稿が掲載されていた。

 「今度、日本で『セックス・アンド・ザ・シティ』が公開されますが、あんな洗練された女子をあつかったオサレ映画など、きっと『秘宝』読者は観ないのでしょうね」

 それに対する編集部の回答というのが、

 「何を言ってるんですか! 観るに決まってるじゃないですか。だって、タイトルに『セックス』ってついてるんですよ。そんな映画を、『秘宝』を読んでる連中は、とりあえずは観ますよ!」

 これを読んだとき、私は爆笑しながらシミジミと、

 「嗚呼、世界にこんなにも、ボンクラ男子の本質を一言で突いた言葉があったろうか」。

 中身がどうとか言う前に、タイトルに『セックス』がついているから観る。

 なにかこう、正しい男子の生き様という気がするではないか。

 感動した! なににかは、よくわからんけど。

 ということで、クニジマ君には「そういう雑誌や」と教えてあげると、

 「わかりました。ありがとうございます。これ読んで、気ちがいの作った映画たくさん観たら、オレもきたりえとつきあえるんすね!」

 と、なにか全体的に間違った方向にわかったくさいが、ともかく後輩の悩みの解決に貢献できてなによりである。

 それにしても、いつものことながら、新しい年なのに、しょっぱながこんな因果な話題で、さすがは私、今年も最初から絶好調のロケットスタートといえよう。

 2017年度も、よろしくお願いします。




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