前回に続いて、「矢倉規広世代」が中心のオタク談義。
特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、
「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
すっかり疑心暗鬼に。
『ウルトラマンA』の防衛組織TACのブラックな労働環境について話していたところから、今回は『A』の魅力(?)について語っているようですが……。
「というわけで、TACはあんまり働きたくない防衛チームやねん」
「全体的に、イヤな気分になるんすよネ」
「ネガティブだなあ。じゃあ、Aのいいところはどこなのよ」
「あ、切断はいいっスよ」
「切断はいいね」
「Aといえば切断やなあ」
「文字通り、話の脈絡をぶった切られた気がするけど」
「(気にせず)みんなは、どの切断が好きっスか?」
「まあ、基本はメトロンに、ドラゴリー」
「バキシムの首が、ウルトラスラッシュが通過する前に、ゴロンと落ちるところところがええな」
「バキシムとガランは、デザインも空割って出るところも、最高ッスね!」
空をパリンと割って(!)登場するバキシム。このインパクトだけでも『A』は見る価値あり!
「あと、バッドバアロンとか」
「マイナーやけど、バッドバアロンもいい! バーチカルギロチン!」
「うん。あれは良い切断だ」
「人生で、まず使うことないボキャブラリーだろうね。【良い切断】」
「あと、Q歯科な」
「あれは最高。世界で一番行きたくない歯医者」
こういう歯医者です。
「これはもう、ぜひリンク先から動画を見てほしいけど、ここに虫歯の治療をゆだねる北斗のソリッドなセンスに脱帽や」
「たぶん、北斗の特殊な性癖やな」
「いいッスよねえ。ゾクゾクします。あんな店あったら、僕通いますわー」
「あんな店って、どんな店を想像してるのやら」
「あと、久里虫太郎もナイス」
「あー、アイツはええねー。インパクトあるわー」
売れっ子怪奇作家の久里虫太郎先生。
ヤプールにあたえられた能力により、マンガで描く通りに超獣ガランをあやつることができるようになる。
「中学生のころ、TACの美川隊員にラブレター送ったら封も開けずに突き返されて、そのことがトラウマになってるマンガ家」
「あれま、かわいそう」
「で、そのときのことが忘れられずに、美川隊員を呼び出して、軟禁して、ムリヤリ結婚を迫ると」
「しかも、逃げたらアーチェリーで攻撃してくる」
「超アブナイやつじゃん!」
「そのラブレターを大人になっても保管してるというのが、またな」
「こじらせてるなあ」
「で、そのラブレターには恋する気持ちと一緒に、自分が考えたオリジナルの超獣ガランの絵が描いてあるという」
学校一の秀才でもある美少女に、ラブレターとともにこれを渡そうとしたコミュ障劣等生の久里少年。
そら、美川隊員の態度にも責められんところはあります。
「3日、学校を休んで描いたというね」
「なんか、すごいツライ気分になってきたよ……」
「この人、絶対にマンガの中で美川隊員そっくりの女の人出して、殺すか、エロいことさせてたでしょうね」
「創作って、そういうドロドロしたものを【作品】に昇華するもんやからな。それは健全な行為よ」
「そらフラれるわいう話やけど、ここまでせんにしても、まあ男ってこういうヘマやるよな」
「好きな子の誕生日に、ハインライン『夏への扉』とフレドリック・ブラウン『火星人ゴーホーム』をプレゼント包装してもらって渡しました」
「はじめて女の子に告白するとき、『カサブランカ』のハンフリー・ボガートのセリフをマネしたら、アッサリ無視されました」
「オレも、好きになった子に彼氏がおっただけでもショックやのに、そいつがまたスーパーさわやかイケメン君で、なんか『ゲーメスト』読んでゲーセンばっか通ってた自分が、恥ずかしくて死にそうになったで」
「そういやボクも……て、なんでこんな流れになってるんですか。元気出しましょうよ」
「おいおい、なにげにスルーしようとすなよ。ワカバヤシはどんな思い出があったんや?」
「クラスのイケイケの女子から陰で《第三身分》って呼ばれてた、とか……」
「みんな、いろいろあるなあ」
「思春期はみんな心の中に、小さい久里虫太郎を飼ってるんですよ」
「ただ、ひとつ言いたいのは、アイツ、初犯やないところな」
「あー、あれはあきませんよね」
「たしか、美川隊員が別の女のミイラを見せられて、《意地はりすぎて、この人みたいにならないでね》とか言うんやっけ」
「そうです、そうです。あれでガッカリでしょ。オマエ、美川隊員に一途やなかったんか、と」
「結構、いろんな女に行っとるやんけ、と」
「仁義にもとるな」
「アカンよ、あれは。オレらみたいなモテへん男は、せめて一途であれと」
「なんか、それも哀しいねえ」
久里虫太郎先生の次回作に期待だ!
(楽しいZAT編に続く)