いしころとまとの花野果村(はなやかむら)

野菜ソムリエ全国大会金賞受賞料理教室『花野果村キッチンガーデン』主宰 
いしころとまとのベジフルこぼれ話

終末医療と食について

2013-10-30 05:51:32 | 野菜ソムリエ

先日のこと、大変嬉しい事がありました。

我が家のお料理教室に熱心に通ってくださっていたAさん。
4月を最後にぱったりとこなくなってしまい・・・
仕事の大変さとか、健康的な問題等も聞いていたため
お顔が見えないことに寂しい思いを感じながらも
気持ちの余裕ができるまでは静かに見守っていようと、
時々メールを差し上げる位にしていたわけです。
そうしましたら、先日のこと久しぶりに電話を寄越し
「先生今お家にいらっしゃいますか?」という元気なお声。
「はいはい、いますからぜひともどうぞ」とお答えすると
すぐに彼女はすっ飛んできてくれました。
ニコニコと玄関先で挨拶する彼女は
「やっと仕事の余裕ができて、京都に2年ぶりに帰省できたので、
おみやげを買ってきてくれた、」という訳です。
久しぶりにお母さんの美味しいごはんも食べてきて
いっぱいおしゃべりもしてきたおかげでしょう。
大変表情も明るく、私の心配も杞憂だった事がわかり、
まずは一安心したわけです。

彼女はまだ30歳前の方なんですが、
京都弁をお話するおっとりとした見かけとは対照的に
とっても芯が通っている方で、震災後に単身京都からこちらに来て
震災の為仕事を失った方たちが働ける場を提供したいと.、
仙台で介護施設を設立した女性起業家です。
そして、彼女がお話するには
今までは介護のことしか頭になかったんですが、
このお教室に通ってから食の大切さに目覚めて、
これからは「食と介護を融合した」事業を
展開していきたいと言うわけです。

彼女が経営している介護施設は、ご老人の方だけでなく
終末医療(ホスピス)の患者さんもいらっしゃるそうです。
身体的な苦痛や、死への怖れなどの精神的な苦痛の軽減だけでなく
いざというときにご家族がすぐに駆けつけて
患者さんが、最期の時をご家族と一緒に過ごせるようにと
患者さんの小さな変化も見過ごさないように
細心の注意を払って介護をすすめているということでした。

そして、先日の事、
人生最後の時をここで過ごしたいと言う方が入所なさったそうです。
その方がおっしゃるには
「実は、息子とは不仲の状態が続いたため長年会うことはなかったけど、
今最後の願いは、息子と一緒に御飯をたべることだけだ。」と
おっしゃったそうです。
そこで願いを叶えてあげるべく、息子さんと連絡をとり、
息子さんもお父さんの状況が信じられないながらも
来ることになったそうです。

その次に彼女は、
「何をお二人にたべさせようか」と随分と悩んだそうです。
で、、、
彼女が出した結果は、
秋田名物の「きりたんぽ鍋」だったそうです。
「根っこがついたセリ」のしゃりしゃりとしたおいしさが
自分でも忘れられなくって、
それにきりたんぽを入れて、柔らかくなったきりたんぽなら
きっと食べやすいだろうということで、選んだそうです、、、

実際お二人が何十年かぶりに再会し、
その時の様子はというと、、、
実は、、、
余り会話はなかったそうです。

しかしながら、きりたんぽを食べながら
次第にぼそぼそと息子が話し始め
父が静かに答えて・・・

「セリの根っこって、初めて食べたけど、こんなに美味しかったんだ」
「だな、、うまいもんだな。こんなの食べられてよがったな、、、」
「きりたんぽも食べるの初めてだね。汁吸っておいしいものだね。
知っていたら、もっと早くにたべてたらよかったね」
と、湯気のたつ鍋を挟んで、
親子の静かな会話が進んでいったそうです。

たった一回の、、、鍋を囲んでの食事だったそうですが
二人のわだかまりはいつしか消え
息子さん、最後には
「このような機会を作って下さり、有難うございました。
まだ、父の今の状況を受け入れるまで気持ちの整理はついてませんが
父と一緒に御飯が食べられたことで、
少しづつ父の現実を受け入れていけそうです」
とおっしゃって、お帰りになったそうです。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

終末医療となると、どうしても食べやすさが先にたってしまいますが
食をお出しする形態も随分とかわったそうです。
流動食も、見てきれいなとろ~りスープをお出しするようなったそうです。
「カロテン色がきれいなニンジンのスープは、先生いま定番で
お出ししているんですよ。」
「サラダもなるべく見た目綺麗にして、フランス料理とは言わないまでも
見て楽しんで頂けるようにしてるんですね」
「野菜って歯ごたえを残すとほんと美味しいんですね。
今までは柔らかく煮ればいいとおもってたのですが、
そのものの味を大切にすれば、硬くても美味しい、って
みなさんちゃんとしっかりと噛んで食べてくれるんですよ」
「先生、1ヶ月に1回ほどみんなでピザづくりするんです。
目の不自由な方、手の不自由な方もいらっしゃるので、
作られたピザは厚さもあつかったり、薄かったりと不格好だけど、、、
ピザづくりをすることは勿論のこと、皆さんピザを食べることさえ初めてで
『世の中にこんな美味しいものがあったんだ』と言って、
おいしそうにたべてくれるんです」
と、、、彼女はいろいろな発見をお話してくれます。


彼女の夢については、、、
具体的にはここでは語ることはできませんが

食の大切さを、常々お話をしている私にとって
実際に終末医療の現場ではたらく彼女の口から
このようなお話を聞くことができ、
改めて食の大切さを伝えていくことの意義を感じることが出来ました。

そうそう、
彼女が持っているささやかな夢ですが
野菜の栽培をもっと上手にしたいんですって。
虫に食われたり、小さな実が数個しかできなかったりと、、、
「おいおい、もう少しまともな野菜を作ってくれよ」と
入所しているおじさんたちに笑われるそうです。
これからは入所者のみんなと野菜栽培の勉強をして
庭でいろいろな野菜を栽培して
収穫をした野菜でお料理をしたいんだそうです。


なんだか、やっぱり嬉しいですよね。
書いているうちに、、、
段々私も嬉しくなってきましたよ。


ね、、、シジミチョウさん。。。



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12 コメント

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Unknown (michikoRin)
2013-10-30 10:37:16
志保子さん、こんにちは。
素敵なお話ですね。
私も、食は生きる力だな~、幸せを生むものだな~とつくづく感じる今日このごろです。
先日、志保子さんにアドバイス頂いたリンゴの丸かじり、歯ぐきには自信あるけど(笑)一応カットして皮ごと毎日食べています。
咳はだいぶんおさまって、声も出るようになってきました。
ありがとうございます。
そう言えば、私も野菜の勉強を始めたのは、医療に頼るだけではなく、なにか自分にできることがないか模索したことがきっかけだったな~と思い出しました。
今回久しぶりに体調を壊して、改めて初心に戻ろうと思っています。
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りんちゃん (いしころとまと)
2013-10-30 22:35:01
りんちゃん、こんばんは
我が家でも私がお料理教室を始めてから
色々なレシピが出るので
家族みんなでお料理を楽しんでいる
感じで、よかったな、と思いますよ。

咳収まって良かったですね。あともうすこし、気を引き締めて、うがい励行してください。
お食事と充分な睡眠、そして適度な運動、、、健康の元ですね。
返信する
Unknown (abu71_nomin)
2013-10-31 00:18:03
生きることは、食べること。
自分の食べたものからでしか、自分の体はつくられないという現実に、多くの方が気付いて欲しいですね。
しかも、栄養素を取りこむことだけが目的ではなく、見た目や味わいを楽しんで、誰と食べたのか?どんな会話をしたのか?食べるという行為自体を楽しむことが、人生の豊かさや健康にも繋がることを知って欲しいですね。
返信する
素晴らしいお話ですね! (エリオ)
2013-10-31 00:54:37
感動しました!
一度は職人として調理人をしていたオイラにとっても料理の持っている見えない力ってすごいな~~と思います!
人間美味しい物を食べながら怒ってる人っていませんよね!
本当に怒ってる時はどんな美味しいものでも喉を通りませんしね!
料理で記憶に残ってたりもしますし モノを食べられてるうちは何となくまだ大丈夫!と思いますよね。

昨日は息子主催の娘の誕生会で彼氏も呼んで 和気藹々と楽しみましたけど やっぱり旨い料理と酒で盛り上がりましたしね!話が脱線しちゃったかな?

いしころさんと知り合えてレシピを参考にさせてもらって
料理の幅が広がって野菜作りにも趣味が広がり
良い事尽くめですし 料理って良いですね!
食に対する欲が深いのかな?(笑)
返信する
Unknown (あけみ蝶)
2013-10-31 22:25:38
こんばんは。
仙台で介護施設を設立した女性起業家
30歳前の方で京都からすごい方ですね。
終末医療(ホスピス)
彼女が秋田名物の「きりたんぽ鍋」
「根っこがついたセリ」て仙台しか食べられません。
>たった一回の、、、鍋を囲んでの食事
お父さんと息子さん二人のわだかまりはいつしか消てよかった。

先日NHKクローズアップ現代で
末期がんの患者に週に1度、希望する食事を叶える「リクエスト食」という取り組みを始めた。
多くの患者が要望する食は「若い頃食べたバッテラ」や
「お母さんに作ってもらった卵焼き」など一人ひとりの人生と深く結びついたもの。
こうした食が死と立ち向かう人に大きな力を与えている。
放送みて・・・すごいと感動したもんです。
それと同じ内容ですね。

楽天勝ちましたね。
仙台で優勝みられそうですね~~。
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abuさん (いしころとまと)
2013-10-31 22:51:39
abuさんほんとそうですね。
abuさんのお食事はいつもとっても楽しそうです。美味しいものを自分で栽培から生み出して、お料理して、美味しい日本酒を飲んで、、、毎日が食とつながっている人生ですね。鉄腕ダッシュ村みたいに、創りだすから始まる人生はほんとココロの底から楽しめる人生だと思います。
私も最近食という世界に入って、ほんとよかったと思ってますよ。もともと食べることが何より好きですから!
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エリオさん (いしころとまと)
2013-10-31 22:56:33
エリオさん、昨日は素晴らしい誕生会を過ごしたようですね。ご家族が仲がよろしくて
ほのぼのとしてきます。
何より、エリオさんが栽培を楽しんでいるのがブログから伝わってきて、ニコニコしております。エリオさんのほうがお料理はプロですし、お互いに刺激しあうということがいいのではないかな、と思っております。
私も毎日レシピを考えていて、頭がくしゃくしゃすることがあるので、そういう時には外にでて、畑で汗を流して
気持ちを一新にしてキッチンに向かいます。いろいろと気分転換できるものを持っているのが人生をより楽しく過ごす秘訣なのかな、と思ってますよ。
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あけみ蝶さん (いしころとまと)
2013-10-31 23:02:17
食は本来人生と深く結びついているもんだと思います。
母が作ってくれたお漬物・煮物などは母の愛情の味。あの時家族と食べたすき焼き・お金がない時代に食べたいっぱいのそばなど、人生の要に登場するのも、食だと思います。
死と立ち向かう食の強さ、、それは人と人が心でつながっている強さだと思います。
NHKのお話すごく良かったです。

それにしても楽天強いですネ。今日も家族で大盛り上がりでした。
楽天、天まで行くぞ~~
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Unknown (チョロピコ)
2013-11-01 14:19:06
しみじみ。。。改めていしころちゃんの心の広さ、優しさを感じています。一昔前はちゃぶ台を囲んでそれぞれの家庭の味がありましたね。みんな違ってみんな良い・・・。姑の作ってくれたスルメの塩辛の何とも言えない旨さ!母の十八番、茶碗蒸しのあの味!前夜の総菜のつけ汁で作ってくれました。愛情の入ったお料理ってホント、おいしいは人と人をつなげますね。いしころちゃん、幸せのお仕事がんばって!!
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チョロピコさん (いしころとまと)
2013-11-03 20:58:17
チョロピコさんこんばんは。先日古道具屋でちゃぶ台を見つけて、ついつい買ってきました。あの円形がいいですよね。
塩辛のコメント見て、今日は生烏賊買ってきました。いまから塩辛作りたいと思います。
茶碗蒸しは、年越しに母が作ってくれました。おせち作りで忙しいのによく作ってくれたなと思い明日よ。
食の大切さを伝えていくこのお仕事を大切にして、今後も活動していきますね
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