Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#22「待ちわびる初秋と花薄」

2012-12-26 | Liner Notes
 「花すすき 我こそしたに 思ひしか ほに出でて人に むすばれにけり」(古今和歌集 七四八)

 言葉とは、自らの意志を相手に伝えること。それは口に出すと実現してしまうのではと信じてしまうことなのかもしれません。

 和歌とは、自らの想いを五・七・五・七・七というフレームと季語の組み合わせによって織り成す暗喩としてのモノローグのような気がします。

 必ずしも実現することを期待しないものの、自らの想いだけは伝えたい。祈りや願いとはちょっとだけ違う人間の感情の機微だとと思います。

 平安期に枇杷左大臣が吟じた歌が、千二百年の時を経て語り継がれるのは、ひとえに生きた時代や環境を越えて誰もが抱き共感しうるUser Experienceなのかも知れません。

初稿 2012/12/26
校正 2021/04/07
写真 旧芝離宮恩賜公園, 1924.
撮影 2012/10/09(東京・芝)