Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§2「それから」 夏目漱石, 1909.

2013-02-11 | Book Reviews
 「三四郎」の続編として位置付けられる前期三部作のひとつ。

 何も働くことなく、高い学歴と裕福な生活を過ごす 「高等遊民」としての生き方を選択していた代助。仮説としての、かくあるべしという生き方といかに生きるかのいづれかの選択を迫った作品だと思います。

 愛すべき人と一緒に生きることを選択したとはいえ、選択とは新たな可能性に加え、責任とリスクを伴うもの。ひょっとしたら、彼が選択したものは、必ずしも、真実・真理・正義・愛・運命といった確固としたものではなく、あくまでも仮説に過ぎなかったのかもしれません。

 でも、その仮説は、彼が人生の長い時をかけて、「それから」証明するか、棄却する他ないような気がします。

初稿 2013/02/11
校正 2020/04/04
写真 東京大学 法文二号館
撮影 2013/02/09(東京・本郷)