Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§45「竜馬がゆく」(桂小五郎) 司馬遼太郎, 1962.

2016-02-25 | Book Reviews
 長州・萩城下の藩医の息子、上級武士の養子となるも、神道無念流の免許皆伝を持ち、幕末三大道場として知られる練兵館の塾頭を務めた桂小五郎。

 松下村塾門下の頭目として、吉田松陰の思想を受け継ぎつつも、時局や情勢に鋭敏に反応した思考や信念、憂いや畏れを人一倍もつ人だったかもしれません。

 いわゆる、七卿落ちと称される八月十八日政変以降、禁門の変を経て、苦渋を嘗め、身を潜めざるを得なかった彼を命懸けで匿ったのは幾松という女性。彼女の支え無くしては、維新三傑のひとりとしての木戸孝允は存在しなかったかもしれません。

 一方で、彼が直面した困難な状態や重要な局面に出逢ったときの彼の精神状態に引きよらせられるが如く出会い導いた大村益次郎や江藤新平らが、悉く維新における歴史的役割を担い、維新十傑のひとりとして数えられることは、いわば必然的に特定の位置関係を持つ星達が、偶然にも星座として名付けられた途端もたらさられる意味やイメージを想起させるが如く、因果性とは独立しているものの、彼らや彼女の精神内部の事象等が互いに時を同じくして何らかの相関性を持っているような気がしてなりません。

初稿 2016/02/25
校正 2020/12/21
写真 桂小五郎・幾松寓居跡
撮影 2015/10/11(京都・高瀬川)